お城に戻ると、こじゅさんが仁王立ちで出迎えてくれました。
真樹緒です。


怖いです。
政宗様の馬の上に乗ったカラスのお母さんを見て顔が仁王どころじゃなくなりました。
怖いです。


「政宗様…」
…、だから言ったろ。


助けて、って政宗様の着物握ったら頭を撫でられた。
怖くねぇ怖くねぇって撫でられた。
でもやっぱり怖いもんは怖いん。


「真樹緒、」
「…はい。」
「これはどういう事だ。」
「…ぬー…」


やってやぁ。
ものすごい血ぃやったんやもん。
放っといたらあかんと思ったんやもん。


やからね、政宗様に頼んでお城に運んでもらおうと思ってやあ。
お城に戻ったらお医者のじっちゃんがおるやろう?
じっちゃんやったら絶対に治してくれるもん怪我。
そんでお馬に乗せてぽっくりぽっくり帰ってきたんやけど。


「…こじゅさん怖い…」
「…怒ってるからな。」
「ぬん…」


何で…!
怪我してるお母さん運んできただけやで俺…!
いっこも悪い事してないもん。
そりゃあ俺、勝手にお山に行ってしまったんはほんまにごめんなさいって思ってるよ。
政宗様にお城の皆が心配して俺を探してくれたって聞いたもん。
黙って勝手な事してごめんなさいって思ってる。

でもねでもね。
カラスのお母さんの事とそれは別やん?
俺、助けてあげたい。
こじゅさんなんでそんな冷たい事いうん。
俺が怪我してたら真っ先に飛んできてやりすぎるぐらい手当てしてくれるのに。
何でお母さんやったらあかんの…!


「真樹緒、」
「政宗様?」
「そう睨んでやるな。」


やって!
って頬っぺた膨らませたら政宗様が困ったように笑った。
それ見たら何かあかん事したみたいな気ぃしてちょっとしょんぼり。
自分が我儘っ子みたいな気ぃしてちょっとしょんぼり。
ぽんぽん頭撫でられるんもふくざつ。


「…やって…」
「真樹緒、」
「なん…」


聞け、ってゆうた政宗様はいつも通り優しい。
でもこじゅさんを見たらまだ怒ったまんまで、何か悲しくなって政宗様にぎゅうって抱きついた。


「俺達はお前に出会った時、北条と戦をしていた。」
「…、いくさ…」


俺をぎゅってしたままな、政宗様は話してくれたん。
俺がこじゅさんや政宗様と初めて出会った時の戦の事。
北条さんとことの戦は政宗様の勝ちで、北条の大将さんは今ご隠居してるんやって。
そんでな、北条さんとこには風魔小太郎ってゆうすんごいお忍びさんがおって、こじゅさんがその戦で風魔小太郎さんと戦ったらしいん。


そんでお互い一撃を入れて…
入れてって…
もしかして…


風魔小太郎さんってゆうは伝説のお忍びさんらしくって。
カラスのお母さんは政宗様がゆうには伝説のお忍びさんです。
という事はカラスのお母さんは風魔小太郎さんで。


「あの時のこじゅさんの怪我ってまさか…」
「right.」


お母さん!!
お母さんがやったん!!
こじゅさん結構大変やってんで!!


ぬ?
という事はやん。


…お母さんのあれもこじゅさんが…


ちらって政宗様見上げたら無言で頷かれました!


やー…
母さんの怪我けっこうひどいよ。
お腹ばっさり斬られてるよ。
しかもこじゅさんと会った日から結構たってるし、その間全然全く手当てとかしてへんねんやったら色々あぶないよ。
そろそろ血が足りへんようになるよ。
死ぬよ。


「やあでも、それで何があかんの。」
「真樹緒?」
「やって、」


政宗様から離れてこじゅさんにぎゅう。
ちょっとびっくりしたこじゅさんはそのまんまにもっと強くぎゅう。
俺のお話も聞いてってぎゅう。


「なぁ、なぁ、こじゅさん。」


きいて。
俺のお話きいて。
俺、戦の事はよう分からんし戦える武将さんでもないけど考えた事があるん。
やから聞いて。


もう戦は終わったんやろう?
それで、北条さんはそれを認めてもうその場所は政宗様のもんなんやろう?
今はもう誰も戦ってへんのやろう?
やったらもういいと思うん。
お忍びさんとこじゅさんが前戦ったかもしれやんけど、戦が終わった今はもう関係無いと思うん。
おあいこやと思うん。


あのカラスのお母さん死んでしまいそうなん。。
一人ぼっちで倒れてたん。
俺、こじゅさんが怪我するんも嫌やけどお母さんが怪我してるのも嫌やなん。
今回はばんそうこうで血も止まらんし。


やから、なぁ。


「助けたって。」


お願い。
お願いこじゅさん。
俺のわがまま聞いたって。


「こじゅさん…」


泣いたらあかん、泣いたらあかん、って言い聞かせながらこじゅさんを見上げた。
これであかんかったら俺一人でどうにかするしかないん。
こっそりじっちゃんから薬もろて手当てしよう。
二人に内緒でお母さんを運んでやあ。


「ぬん、」


眉間に皺寄って難しい顔のこじゅさんをじっと見上げてしばらく、後ろで政宗様がくくって笑った。


うん?
何、政宗様。
俺真剣やのにやぁ。



「…、政宗様。」
「小十郎、てめぇの負けだな。」



Give up
そのちっせぇ手を振りほどけるのか、って政宗様がゆうて。
頭の上でおっきいため息。
ぬ?って見てみたらこじゅさんがはぁーって。
はぁーってため息つきながら頭を抱えてたん。


ぬん?
これは?
このため息は!!


もしかして…!


「こじゅさん…!!」
「…、運んでやれ。」
「!!!」


おゆるし出た…!


やった!
やった…!
こじゅさんありがとう!
ありがとう…!


「政宗様!」


ええって!
こじゅさんのお許し出たー!


「、よかったな。」
「ん!」


はよう!
手当てしてあげよう、カラスのお母さん!
俺身長的に無理やから運ぶんは政宗様お願いね!


ぴょんぴょん飛びながら政宗様とこじゅさんの周りをぐるぐる回る。
カー君も(じつはずっとおったんやで!)一緒にぐるぐる回る。
やったね!
お母さんちゃんと助かるよ!!




…最近甘過ぎやしませんか。
Ah?人の事言えんのか?
「こーじゅさーん!政宗様ー!はーやーくー!」

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お願いされると断れない主従でひとつ。
多分キネマ主のお願いを断れる(理不尽なお願いに限り)のはおシゲちゃんだけかと思います理由はおはなしが進むにつれあきらかに(笑)

  

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