左の床についた真樹緒が、自分が横になった途端ぎゅうと腰のあたりにくっついてきた。
元々小十郎に声をかけた時には眠気が限界だったはずだ。
すぐに寝息が聞こえ、腹に感じる暖かさにこちらの体の力が抜ける。


愛しい。
ああ、この上なく愛しい。
噛み締めるように口の中で呟いて真樹緒の額に口付けた。


「本当に不思議な子供ですな。」
「ああ、」


まさか身を案じられるとは思ってもなく。
大事な人だと言われるほど真樹緒の中に己がいる事に手が震えた。
予想を裏切られ込み上げてきたのはやはり愛しさで。
どうあっても自分の心の底を捉えて離さない真樹緒に思わずため息が漏れる。


厄介だ。
けれど自分はどうにかなりそうな程満たされている。


「小十郎。」
「は、」
「……俺は真樹緒を守る。」


何があっても。
何が起ころうとも。
迷子だろうが何だろうが、それこそ例えこの世のものでなかろうが。
この腕の中の小さな子供だけは必ず。
決して傷つけさせはしない。


「…政宗様の御心のままに。」


政宗様の大事は小十郎の大事。
異論は露程も。


聞こえた返事に満足して目を瞑る。
己と他人を隔てる眼帯は取った。
ありのままを見せたいと思った。
俺は恐れていたのだろうか。
真樹緒の前で、そんなものは無意味だというのに。


朝、真樹緒が目を覚ませばどんな顔をするのだろう。
少し楽しみに思う。


もぞりと動いた真樹緒にもう一度口付けを。
唇は起きている時にと二度目は頬に。
腕の中と腹の奥に広がる暖かいものが心地よく、眠りは穏やかにやってきた。








「くぁ…」
「Good morning真樹緒」
「もーにん、政宗様。」
「相変わらずすげぇ寝癖だな。」
「ぬー……う…、?…あれ?政宗様。」
「Ah?」
「眼帯どうしたん。」


とれてるよ?


「寝る時につける奴なんかいねぇだろ。」
「あー…、そっか。」


型とかついたら面白い事になるもんねえ。
せっかくのイケメンがだいなしやもんねえ。


「くく…」
「?」
「真樹緒。」
「んん?」
「俺の目を見て何も思わねぇのか?」
「ぬ?」


目?
政宗様の目?


「…痛そう?痛ないん?」
「ああ、今は全くな。」
「そっかー。」


痛いんやったら大変やけどねえ。
痛くないんやったら俺、ひとあんしん。
でもばい菌入ったらあかんから、ちゃんと眼帯しとかなあかんよ。


「ああ、そうだな。」
「……何さっきからわろてるん…」
「真樹緒に惚れ直してんだよ。」
「……こじゅさん政宗様が恥ずかしい事いうー!!」


寝起きに恥ずかしい事いうー!!


「こら、逃げんな。」
「ぬー!!」


--------------

キネマ主は別におびえたりしないよ。
まぁそりゃあ眼帯してるんやし怪我してるんやろーなーぐらいに思っていましたが、筆頭が痛くないなら気にしません。

キネマ主にとって、別に外見は関係なく政宗様そのものが大事だったみたいですよ。
次回は小太郎さんを拾います。

  

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