素晴らしく広い大広間には素晴らしくいかついお兄さん達がいっぱいいました。
リーゼントなんて初めて見ます真樹緒です。
お兄さんらの勢いにのまれそうです真樹緒です。
やっとこ政宗様のだっこから解放されましたこんばんは!


ぬん…
ヤンキー?
ちょっと前のヤンキー?
それとも輩やろうか?



そうやなぁ…岸和田の方にようさんいそうな感じ?
こう山車とか引いてそうな感じ?
や、偏見ちゃうよ。
岸和田の兄やんら顔怖いけど実は優しいもん。
俺がお財布落としてへっこんでたら一緒に探してくれたもん。


その後疲れたやろうっておいしいご飯も食べさせてくれたんやで。
いつでも遊びに来いよ、ってゆうて送ってくれた車は真っ黒やったんやけどやっぱりあの兄やんらは輩さんやったんかなぁ。
ぬーん。


「真樹緒?」
「ぬ?」
「転ぶぞ。」


ああ、かんにん。
ちょっと考え事してたん。


政宗様に手ぇとられて、さっきの大歓声はどこいったんってゆうぐらいしぃんとなってる広間を歩く。
やあ大広間に入ったんはええねんけど。
出迎えてもらったのはええねんけど。
静かに、っていうおシゲちゃんの一言で信じられへんくらいお部屋が静かになったのですよおシゲちゃんすごい…!
それで俺は政宗様と一緒に大広間の真ん中を歩いてる訳やねんけど。
リーゼントさん達の目線が痛いです。
「何だぁあの餓鬼」とか「筆頭の知り合いかぁ」とか、「何モンだぁ、」とか聞こえてます。
ちょっと肩身が狭いです。

お耳はええんねんで俺。
ちっちゃい声も聞き逃せへん感じやねんで俺。

ぬん…
ごめんなさい。
妙なちんちくりんが筆頭の後ろにくっついててごめんなさい。
穴があったら入りたい気持ちで一杯の中、政宗様に連れてきてもらったのは上座。


え上座?
何で上座?
あれちょっと待ってこれ違うくない?


上座はえらい人が座るとこやん?
政宗様の座るとこやん?
俺みたいなちんちくりんが座るとこ違うと思うんやけど更にみんなからの視線が痛い…!


「え、と…」
「真樹緒、いい。」


座れ、って政宗様に手を引っ張られた。
うわ!って前のめりになりながらぺたんと膝がつく。


おおおお。
リーゼントさん達が俺の事見てる。
ちょう見てる。
俺ものすごい注目の的やで穴開きそう助けて片倉さん!
ぐるんて片倉さんを探したらまるで孫を見守るおじいちゃんのような目とばっちり目が合いました!
えええ片倉さんこの状況をどうにかしてくれへんの俺ちょっとせちがらい!


「皆、此の度の戦ご苦労だった。」


俺が一人で何とも言えやんせちがらさに打ちひしがれてたら政宗様が話し出した。
これ以上どうにもできやん感じで俺も大人しくその隣に座ったまんま政宗様を見上げる。
目の前ではリーゼントさんたちが右手を振り上げて「Yeah―――!!!」なんて叫んでます怖いです。


ええええちょうインターナショナル…!!


「今夜の宴は大いに楽しめ。」
Yeah――!!
「…やー…」


ちょっと俺も乗ってみた。
右手もかーるくあげてな、うん。
やって仲間に入りたいやん。
皆と一つになりたいやん。
一人おいてけぼりって辛いやん…!
そしたら政宗様に「紹介する」って腕を引っ張られたん。


「こいつの名は真樹緒。」


腕引っ張られたら俺、体勢崩れるやん?
そのままぐらって倒れるやん?
でも政宗様がお隣にいるから危ない事は無いやん?
気、抜いてしまうやん?
気を抜いてたら俺はいつの間にかすっぽり政宗様のお膝の上。
それが普通な感じでお膝の上。

えー。
ええの。
ええの俺。
こんな時に政宗様のお膝の上に乗っててええの。

そういう場合とちがうと思うんやけど!
俺ちょっと恥ずかしいんやけど!
でもけっこうがっちりぎゅーってされてて、皆にばれやんようにじたばたしても全く逃げ出せません。
政宗様は素敵握力です。


「先の戦で小十郎の怪我を癒し、命を助けた子供だ。」
「マジっすか!?」
「小十郎様が怪我を!?」
「この餓鬼がですかい!?」


「ぬ?」


やあそんなん大げさなー。
俺ばんそうこう貼っただけやで?
しかもそれお徳用の今ちょうどおかいどくやったばんそうこうやで?

正直片倉さんの筋肉で暖取ってたで?
ほらちょう寒かったからあの日あったかぬくぬく素敵筋肉で朝まで快眠…!


「訳あってこの奥州に留まる事になった。」


訪れた事も過ごした事も無いこの奥州、真樹緒には多々不自由があるだろう。


「新しい俺達の家族だ。」


歓迎してやれGuys!!


「「「Yeah―――!!!」」」
「わぁ!」


政宗様がニヤって笑ってリーゼントさん達が叫んだ。
ものすごい声で俺の肩がびくっと跳ねる。


あちこちでお酒のコップ?おちょこ?みたいなんがカチンカチン鳴ってな、それからはもうあっというまに宴会に!!
さっきのしぃーんてしてたんは何やったんかって言うぐらいに騒がしいですすごい宴会!


俺も出て来たお料理食べてええんやって。
目の前の御膳に乗ってるお料理。
お魚とかごはんとかお漬物とか。
お汁とかお酒もあるよ。
豪華!
お米がおいしい!
もちもちふっくら素敵米!!


「真樹緒、これうまいぜ!」
「ありがとー兄やん。」


魚の煮たのを貰ってもぐもぐ。
ぴかぴかの素敵米をもぐもぐ。


「ほら、口開けてみ。」
「あー…」


すんばらしく美味しいお漬物をもぐもぐ。
また素敵米をもぐもぐ。


……
………


幸せ…!!!
おいしいご飯とおいしいおかず。
幸せ…!!
ほっぺた落ちそう!!


「こーんな小せぇのにあの小十郎様をなぁ…」
「む?」


すげぇなぁって俺の頭を撫でてお漬物を持ってきてくれたリーゼントさんが宴会の渦の中に戻っていった。
楽しめよ!って手を振って戻って行きました。
ちっさいは余計やもんって、お返事して俺も手を振り返したんやけど。
…うん?


小十郎様?
って片倉さんの事?


「…小十郎様?」


もぐ、ってご飯を飲み込んで片倉さんを見たらお酒を飲んでいるところで。

ぬん…
男前はお酒飲むだけでも絵になるんやねえ。
とっても素敵ですねー。
かっこいいですねー。
しぶいですねー。


「突然どうした真樹緒、」


やー、そう言えばリーゼントの兄やんら全員片倉さんの事小十郎様って呼んでるなぁって思って。
首を傾げた片倉さんにへらって笑う。
それからうーんと考えて。
あんなコワモテの兄やんらが様づけしとるぐらいやから、片倉さんは俺が思ってるよりもずっとずっと偉い人なんやろうなって思ったん。

これは俺もさん付けしとる場合ちがう違う?
もっとちゃんとしとかなあかんのちがう?


「…俺も小十郎様て呼んだ方がいい?」


政宗様と片倉さんを交互に見た。


どう?
俺って明らかに普通の子供やん?
なんてゆうかほんまやったらお城にきたりとかもできへんような子供やん?
さんづけとかしてる場合ちがうと思うんよ。
おんぶとかして貰ってる場合ちがうと思うんよ。


じいって見てたら片倉さんがく、って困ったように笑った。
政宗様もちっちゃく笑った。
え?何で?


「片倉さん?」
「真樹緒。」
「うぃ?」


「…俺は恩人に様づけなんてされる程、偉い男じゃねぇな。」
「ぬっ!」


それからぽんって!
片倉さんのおっきな手が頭をまぜる。
ぐりぐりぐりぐりまぜる。
今までで一番つよい力でまぜる。

ぬーん!
痛い!
ちょっと痛い!!


「お前の好きな様に呼べばいい。」
「…片倉さん…」


ええの?
首を曲げてみたら片倉さんに「ああ」って!

やあやあまじで!
ぬんぬんまじで!
ええの?
ほんまにええの?

やあ俺片倉さんは片倉さんやけど、せっかくなんやから名前でこうもっとフレンドリーになりたいと思ってたのよね!
俺も真樹緒って名前で呼んでもらってるし!


政宗様?
政宗様はお殿様やねんからちゃんと様づけしとかな。


「ほんならねぇ、名前でやぁ、」


こじゅうろさん。
こじゅーろさん。
こじゅさん。


「…こじゅさんで!!」


かわいない?
こじゅさん。
たまにこじゅうろさんになったりしてな!
そこら辺はフリーダム!!


「真樹緒がそう呼びたいのなら。」


俺が言ってみたらとっても優しくお許しをいただきました!!
上の方で政宗様が「俺も名前で呼べ」とかゆうてるけど華麗にスルー!!
さっきもゆうたけど政宗様はお殿様やねんからね。
てゆうか初めっから政宗様やったから多分もう直らんとおもう…!


「Shit!!」


ほんならやぁ、政宗様拗ねてもうて。
ちょっとご機嫌悪くなっちゃって。
怒らんといてぇな。
もー。
しかたないんやからー。


「政宗様、政宗様。」
「Ah?」


ちょいちょいって政宗様を呼んで内緒話。
近づいてきた顔にひそひそ。
あんな、やっぱり皆の前で呼び捨てはあかんと思うんよ。


やからな。


「もし呼ぶんやったらな、二人の時にしよう?」


それやったら誰も聞いてへんやろう?
こじゅさんもおシゲちゃんも。
俺も頑張って名前だけで呼んでみるからやぁ。
ぬう、頑張っても呼べそうにない気もするけど頑張るから。


な?
笑ったら政宗様に「この野郎」って。
やっぱりお前にはかなわねぇよって。
思い切りぎゅうさられました!!
政宗様のゆうてる事はあんまり分らんかったけど、ご機嫌ちゃんと直ったみたいよかった!


へへへ。
加藤真樹緒これからよろしくお願いします!




「で?」
「ぬ?」
「梵の事本当に名前だけで呼ぶの?」
「んー……」


やぁやぁ、呼ぼうと思ったけどー。
でもなんてゆうかすでに「政宗様」に慣れてもた感じやしー。
「政宗様」が俺にジャストフィットな感じやしー。

ぬーん。


「多分もうずっと政宗様やと思う!!」
「Ah!?どういう事だ真樹緒!!!」
「あっはっはっ!!」


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一章が終わりました!
ここまでお付き合いくださりありがとうございます。
次回からは閑話を少し。
七つの子を歌って伝説の忍を拾いたいと思っています。

政宗様の呼び方はキネマ主あんな事言っていますが、ずっと「政宗様」呼びですよ。
政宗様も慣れてしまうので、もう煩く名前で呼べと言わなくなりまする。

二章からは甲斐、武田へと赴きます。
どうかこれからもよしなに。

  

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