「真樹緒!どこいってたの!」
「あー!おシゲちゃーん!」


政宗様にだっこされたままちゅうしてちゅうされて。
二人で笑って何だかとっても幸せ気分。
政宗様が歩きながら宴があるお部屋はどこか説明してくれてやってきた大広間。
大広間のおっきな扉の前ではおシゲちゃんがちょっぴりまゆげを吊り上げておでむかえしてくれました真樹緒ですこんばんは!
ぬん。
こんばんは。
いつの間にか日も暮れてたからこんばんは!


「遅くなってごめんなさいー。」
「もう、心配するでしょ。」


どこかで迷ってるのかと思ったじゃない。


「ぬん…」


迷ってたんやけど!
お風呂から出てすぐ迷ってたんやけど!
途方に暮れてたら政宗様がやってきてくれてここまで連れて来てもらったんやけど!
もしかしてみんなお待たせしてもうた?
やあやあごめんなさいー。
まゆげを釣り上げたまんまもう!ってため息吐いたおシゲちゃんにごめんなさい。


え、本当に迷ってたの?
「うい。」


ちょっとね。
一人で政宗様のお部屋へ向かおうと思ってたんやけどね。
ちょっと無理でね。
やあちゃんと女中さんは道順教えてくれてたんやけど俺どこかでうっかり間違っちゃって。


「あらまあ。」


それは心細かったねえ。
政宗様にだっこされた俺の頭をよしよしって撫でてくれるおシゲちゃんはもう全然いっこも怒ってへんくって、大丈夫だったって心配そうに顔をのぞきこんでくれる。
つり上がってたまゆげが今度はへの字に曲がってしまったん。
あれやあおシゲちゃんそんな顔しないで。
俺全然へいきやから。
初めはとっても不安やったけど政宗様がすぐに見つけてくれたし。
それにほら。
政宗様にちゅうもしてもらったし。
あのちゅうもね、俺はとっても安心したんよ?


「へ?」
「ぬ?」


何?
梵が何て?


「う?ちゅう。」


ほっぺたとおでこにちゅう。
政宗様がね、俺をだっこしてちゅうしてくれたん。
やあその後俺もちゅうしたんやけど!
政宗様にいろんな気持ちを込めてちゅうしたんやけど!


……
………


ちゅう?
ちゅう。
梵?


真樹緒が言うちゅうってあれでしょ。
もしかしなくても口付けの事でしょ。
なに、真樹緒に口付けしたの。
これから宴だって言ってんでしょ何してるの。


「cuteだったんだ。」
そんなしょうがねえだろみたいな顔で言わないでくれる。


真樹緒はまだ子供なんだよ。
小さい子供なんだよ。
大事な大事なお客様に何してくれてるの。
ていうか俺の癒しに変な事擦りこまないでくれない何なの真樹緒からもちゅうしたって言ってるけどそこんとこどういうつもり。


「客じゃねえ。」
「、え?」
「真樹緒は客じゃねぇよ。」
「ぬ?」
「なァ、真樹緒。」


お前はこれから俺と共にここに住み俺の隣で笑い、俺の傍で暮らすんだ。
お前がどこから来たのかなど知りはしない。
いつの日か帰らねばならい時が来るかもしれない。


それでもいい。


「俺達はfamilyだ。」
「ふぁみりー?」


ぬん?
家族?


「ああ、家族だ。」
「かぞく!」


政宗様がまた俺のおでこにちゅうをする。
可愛い音をたててちゅうをする。
びっくりしたおシゲちゃんが目をおっきくしたけど、しばらくしてからちょっと困った様に笑った。

ああ、そう。
そう、家族なの。
それはまた、可愛い末っ子が増えたねえ。
俺の頭をぽん、それから政宗様の頭もぽん。
今度見たおシゲちゃんはとっても楽しそうで。


「真樹緒。」
「?はい?」
「よろしくね。」


これから、よろしくね。
おシゲちゃんが優しく頭を撫でてくれた。

梵をよろしくね。
小十郎もよろしくね。
俺も、よろしくね。
あともう一人紹介したい方がいるけれどその方もよろしくね。
撫でながらおシゲちゃんはやっぱり楽しそうで嬉しそう。


「おシゲちゃん、俺が家族になったら嬉しい?」
「とっても嬉しいよ。」
「ぬん!」


俺もね、政宗様や片倉さん、おシゲちゃんと家族になれたらうれしいよ。
こんなよう分からん俺やけどね、家族ってゆうてくれてすごいうれしいん。


「政宗様も?」
「ああ。」


もちろんんだ。


「なァ、小十郎。」


お前もそう思うだろう?


「は。」
「え?片倉さん?」


ぬん?
おったん?

政宗様がくくくって笑いながら振り返った。
だっこされてる俺もくるんって振り返る。
ほんならそこにはちょっぴりぼろぼろやった着物から綺麗な着物に着替えた片倉さんが!
ぬん!
片倉さんさっきぶり!


「真樹緒。」
「ぬ?はい?」
「よく、来てくれた。」


心からお前を歓迎する。
ここ奥州でお前が安寧に過ごせる様、助力は惜しまねぇ。
健やかであれ。

おシゲちゃんがやってくれたのと同じように片倉さんが俺の頭を撫でてくれた。
おおきい手でとっても優しく撫でてくれた。
俺はびっくりして肩を竦めてしまったんやけど片倉さんはずーっとわらってて。
なんだかちょっぴり恥ずかしくなる。
そろっと片倉さんから目線をそらしてきょろきょろ。
おシゲちゃんを見て、政宗様を見て、それからもう一回片倉さん見たらやっぱりあの素敵な笑顔。
ぬん、そんな顔で見つめられてたら俺ちょう恥ずかしい…!


「ぬん…、よろしく、お願いします。」


やあほら、家族になったから。
俺と政宗様とおシゲちゃんと片倉さん、家族になったから。
ちゃんとご挨拶しないとね。
やっぱり何でも初めがかんじんやし。
やからご挨拶。
でも何だか恥ずかしいからうつむいて。

ふふ、って笑うおシゲちゃんの声と。
くくくって笑う政宗様の声と。
笑いをこらえてる片倉さんの声が聞こえる。
皆の声を聞いてたら俺も何だか嬉しくなって、恥ずかしい事なんかないような気がして来て。


「俺しあわせ。」


ありがとう政宗様。
ありがとう片倉さん。
ありがとうおシゲちゃん。
俺を奥州に呼んでくれてありがとう。
家族にしてくれてありがとう。


「しあわせ!」


ぬん!


「そうと決まれば早速お前のお披露目だ。」
「ぬ?」
「小十郎、」
「は、準備は整っております。」
「成実。」
「皆も揃ってるよ。」
「Good!」


政宗様が大広間の扉を開く。
その途端聞こえて来たのは歓声。
政宗様を呼ぶ声と、片倉さんを呼ぶ声と。
俺は耳をふさぐ間もなくその大歓声に飲み込まれた。


  

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