「お話って何やったんやろうね。」
「うん?」
「ひでよしと半兵衛君の。」


大坂城にお別れをして、けーちゃんはお馬で俺はこーちゃんの背中におぶさられながら森の中を走る。
そんなに急いで帰らんでもええのにってゆうたんやけど、伊達さんが越後で待ちくたびれてるよってけーちゃんが困った様に笑うから俺はほっぺった膨らませながらもこーちゃんの背中にだきついた。
行きしなはけーちゃんのお馬にお邪魔したから帰りはこーちゃんの背中でお久しぶりのお嫁さんを満喫してます真樹緒ですこんにちは…!
こーちゃんが早すぎてたまにけーちゃんの姿が見えやんようになるけど、そこは伝説のお嫁さんなこーちゃんに走る速さを緩めて貰ってことなきをえてます真樹緒ですこんにちは!


「そりゃあ俺達に話せない話しなんだから政治的な何かだよ。」
「せーじてき。」
「秀吉はきっと天下を狙ってる。」


半兵衛は軍師だ。
頭が良い。
そのうち思いもよらない方法で天下を取りに来るんだろう。
もしかしたらもうその最中かもしれない。
あいつの力と半兵衛の頭、それが揃ってるなんてぞっとしないね。


「しんぱい?」
「なぁーんで俺が!」
「嘘ばっかりー。」


おどけて肩をすくめるけーちゃんやけどお顔がちょっとこわばってるん。
ばればれやでけーちゃん。
心配ですってお顔がしゃべってるもんやでけーちゃん。
実は気になって気になってしょうがないんやろうけーちゃん。


「けーちゃん。」
「、もしあいつが馬鹿やるってなら俺が止めてやるさ。」


あいつが決めた事を止めるつもりは無いけど。
天下なんて俺には全く興味の無い話しだけど。
あいつが天下を狙ってて、その方法が間違ってるってんならあの石頭殴って目を覚まさせてやるさ。


「!けーちゃん!」
腐れ縁の誼みだよ!深い意味は無いよ!別に心配とかそんな事じゃないからね!
「大事なお友達やからやんね俺わかってるから!」
「だからそうじゃないって!」


ぬんぬん。
だめだめ。
そんな事ゆうても俺分かってるん。
けーちゃんひでよしと半兵衛君が心配なんやろう?
もし戦、ってなった時の事もちゃんと考えてるんやろう?
ひでよしが半兵衛君が誰かに悪く言われるんが嫌なんやろう?


「もー、けーちゃんは恥ずかしがり屋さんなんやからー。」


こーちゃんの背中からけーちゃんを見下ろすとおっきなため息を吐いたけーちゃんが見えた。
ちいちゃい声で違うったら…なんて聞こえて来たけどけーちゃんのほっぺたがほんのり赤いから全然説得力無いん。
本当はとっても心配なくせに!
けーちゃんが意地になってまうから声に出しては言わんけど!


「ねー、こーちゃん。」
「(?)」
「お友達っていいねっておはなし。」
「(?)」
「真樹緒!」
「はぁーい!もー言わんー!」


目の前のこーちゃんの首にぐりぐりおでこを擦りつけてお友達っていいなぁ、って笑う。
照れてるけーちゃん可愛いなあって笑う。
行きしなとは全然違うけーちゃんの様子に嬉しいなあって笑う。
まだまだきっともやもやしてるところはあるんやろうけど、ひでよしと喧嘩できたけーちゃんはやっぱり行きしなのけーちゃんとは別人やと思うん。
大坂きてよかったなあ。
半兵衛君やひでよしと会えてよかったなあって気持ちをこーちゃんの首と肩にこれでもかとぶつけて笑う。
やってね、俺が大きい声でそれを言うとけーちゃんが唇とんがらせて拗ねてしまうから。
おちおち感動もできへんの。


「(、)」
「こーちゃん?」
「(…)」


あんまりぐりぐりしすぎてくすぐったかったんやろうか、こーちゃんが急に立ち止まった。
背の高い木の上からじっと地面を見てる。
どうしたんこーちゃん、って覗きこもうとしたんやけどこーちゃんが「だめ」って掌で俺の目を目隠しするん。
そのまんま首をかしげたら下からけーちゃんの声も聞こえて。


「真樹緒、どうしたんだい。」
「あ、けーちゃん。」


ぬん。
俺も何が何やらようわからんの。
急にこーちゃんが立ち止まっちゃって、首くすぐったいんかなって思ったんやけどどうやら違うみたいで。
俺目隠しされてもうたからはっきり分からんけどこーちゃん何か見つけたみたい。
隠されたって事は見たらびっくりするもんかなあ?
俺、結構びっくりに耐性ついたからちょっとやそっとやったらびっくりもせえへんと思うんやけど!


「けーちゃん何か見える?」
「いや、俺には何も…」
「(しゅっ!)」
「えっ、こーちゃんしゅって!?」


その音なに。
なんか結構聞き覚えのある音したけどなに。
金属の何かを投げる音したけどなに。
もしかしやんでもこれクナイを投げる音ちがうんこーちゃん何で今クナイ…!



「(しゃきん!)」
「しゃきん!?」


えっクナイどうしたん。
こーちゃんクナイどうしたん。
もしかして跳ね返ってきたんちがうんこーちゃん今なに起こってるん目隠しはずして…!
跳ね返ってきたクナイを叩き落した音ちがうんこーちゃんお願い教えて…!

俺ちょう気になる。
目の前で起こってる事ちょう気になる。
こーちゃんの背中でじたばた。
でもこーちゃんがうんともすんともせんからじゃあこーちゃんの手だけでも離して貰おうと目を覆ってる大きな手をひっぺがそうとした。

でも!
こーちゃん力強くて!
俺のお嫁さん見かけよりもすごく力が強くて!


「こーちゃん!」


ドサッ!


「えっ、ドサッ!?何かおっこちたよこーちゃん!」


すごい嫌な予感しかせえへんよ!
なんなん。
さっきからどうしたん。
何が起こってるん。


「真樹緒。」
「けーちゃん!」


なあ、けーちゃん今何がどうなってるん。
クナイの音とそれを弾く音を何かが落ちる音がしたん。
動物?
鳥?
でもこーちゃんは動物に優しいからクナイ投げる訳ないし。
ほんなら一体なんなんやろう俺ほんまに嫌な予感しかせえへん。


「真樹緒、駄目だ離れて。」
「え?」
「あれは忍びだよ。」
「しのび…?」
「どこの忍びかは分からないけど、手負いだ。」
「…こーちゃん。」
「(ふるふる)」


こーちゃんの手をぽんぽんたたく。
それでも俺の目から離してくれやんから「こーちゃん」ってもう一回名前を呼んだ。
俺大丈夫やで。
こーちゃんもおるし、けーちゃんもおるから大丈夫やで。
だからちょっとだけこの手離して。


「(…)」
「こーちゃん。」


おねがい。
俺にも見せて。
やってほおっておけやんやろう?
こーちゃんやけーちゃんはお忍びさんとお侍さんで、こういうん警戒せなあかんのは分かってるよ。
でも、怪我してるんやったら俺ね、一番初めにしやなあかんのは心配やと思うん。
俺、相手が犬でも猫でも森のくまさんでもお馬でも人間でも怪我って聞いたら心配やで。
やから俺にもちゃんと見せて。


お願いしたら、こーちゃんがゆっくり手を離してくれた。
そおっと俺を守る様に。
離れてしまった手をそのまま握って「お忍びさん」を探す。
俺とこーちゃんは木の上、けーちゃんはお馬の上、じゃあその「お忍びさん」は。


「ぬん…」


目の前の木には破れた布切れ。
ところどころ不自然に枝も折れてて危ない感じ。
その真下に目を動かしたら黒いかたまりが。


………くろいかたまり…


じんわり地面に血がにじんでて、ぴくりとも動かんくって、ようく辺りを見たらここらへん一帯が何か黒こげに焼けてたり煤けてたり埃っぽい臭いしたりで尋常や無い雰囲気で。
あれちょっと待って。
俺こんな雰囲気前にも感じた事ある。

一回目は何か周りに矢が一杯ささってたりしてて、二回目は同じように地面が血の色で染まってて。
誰とは言わんけどその真ん中にはちっとも動く様子がない人がうずくまってたんよね俺この光景見た事ある…!



……
………



「ぬーんデジャヴ…!」



デジャヴ!
三回目!
通算三回目のデジャヴ…!
二度ある事は三度ある…!
そんな三回目いらんかったな…!


なんなん。
ほんまなんなん。
でも俺何かちょっとこのハプニング慣れて来たであんまり嬉しくない…!



「あれ…?」



ぬん?
でもあれ?
ちょっと待って。
デジャヴもデジャヴやけどちょっと待って。


「俺…あのお忍びさん知ってる…?」


もしかして会った事ある…?
やって何となく見覚えが。

やあやあ。
ほら、真っ黒ポンチョで。
全体的に真っ黒なお忍びさん。
お話しようと思ったけどすごい無口やったお忍びさん。
あんまり無口やからこーちゃんとの間にびみょうな空気がただよっちゃったお忍びさん。

ぬん、そうあれは。



「…俺にお手紙届けてくれた甲斐のお忍びさん…!」


---------------

という事で才蔵君で三回目のデジャヴでしたまったくお話が進んでなくてすみません…!
あれえ?
実は佐助さんの所に才蔵君を運んで甲斐のお母さんと再会して松永のおっさまの事聞くはずだったんだけどな…!
でもこれ以上のところで切ると他に切りどころが永遠となくなると申しますが区切りが無いともうしますか。

あうう。
申し訳無いです。
この先は半分ほど書けているので近々アプできると思うのですが予定は未定ですすみませ…!

次回は甲斐のお母さんと再会しておやかた様とも再会して幸村さんともお久しぶりの再会をします。
慶次君が「あれ何で風来坊なんかといるの?」って言われますがそこはいつもの慶次君という事で。


ではでは本日はこのあたりで。
最後までご覧下さってありがとうございました!


  

book top
キネマ目次
top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -