「ああ―――、ん!」


もぐもぐ。
もっしゃもっしゃ。
もぐもぐ。
もっしゃもっしゃ。


「ごくん!」


お馬に揺られてぱっかぱっか。
たまにスピードを上げたりしてぱっかぱっか。
雨降りの日は木陰で休んであったかい甘酒をのんで、ゆめきちと一緒にけーちゃんにくっついて一日を過ごして。
お尻が痛くなってきた日はお馬から下りて砂利道をてくてく歩いて。
こーちゃんが手を繋いでくれるのにテンション上がってこーちゃんに抱きついたら、けーちゃんが「じゃあ俺はこっちね」って何でかほっぺた膨らまして反対側の手を繋いでくれたのはつい昨日の事。
そのまま俺らは大阪に入って人であふれる大阪の町を満喫してます。


真樹緒ですこんにちは!
まずは酒まんじゅう食べながらこんにちは!


もっとこう、お酒お酒してるんかと思ってた酒まんじゅうはほんのり甘くてもっちもちで中のあんことの相性がばつぐんでほっぺたがおっこちそうなん。
俺これやったらいくらでも食べられるー。
おいしー。


……本当に真樹緒は美味しそうに食べるねぇ。
「んー、よくいわれるー。」


めちゃくちゃ言われるー。
でもおいしいんやから仕方ないと思わない!

お隣であったかいお茶を飲んでるけーちゃんに力説してみたら、確かにおいしいけどさってけーちゃんも頷いてくれる。
もぐって俺より大きな一口で酒まんじゅうを食べるけーちゃんは、大阪の町に入った時とっても懐かしそうな顔をして笑った。
変わらないねぇって深呼吸して笑って、心配そうに見上げる俺の頭を撫でて行こうかって手を引いてくれた。
それから酒まんじゅうのお店に連れてってくれて、ここが一番景色がいいんだよっていう小さなお山のてっぺんに連れて行ってくれた。


ふわふわの芝生に座ったら大きなお城が見える。
あそこにひでよしがおるんやって。
あそこのてっぺんでふんぞり返ってるんだよってけーちゃんが笑う。
俺はそれに頷いておんなじように笑ってひでよしってどんな人かなって考える。


「けーちゃん、けーちゃん。」
「うん?」
「おみやは何にする?」
……うん?
「おみや。」


おみやげ。
ほら、ひでよしのとこ行くから。
持って行くおみや。
俺は今食べた酒まんじゅうがいいかなって思ってるんやけど。
おいしいし。
このもちもち感、やみつきになるし。
俺ももう一個ぐらいぺろりと食べれる感じやし。

やあでも、この後かるめらも食べるからそれ食べてみてからの方がいいかなあ。
ひでよしかるめら食べた事あるかな。
ここひでよしの国やからやっぱりあるんかな。

それやったら越後で買って何か来た方がよかったかもねえ。
奥州やったらずんだ餅なんやけど。
ごとうちおみや。

越後って何やろう。
俺、いまいち地理ってよく知らなくってー。
ぬん…おこめやろうか。
めいさん。
ほら、気候の寒いところっておいしいおこめがとれるイメージ。
あっ!奥州もお米おいしいよ!



……
………



………うん?


膝に肘をついたまんま。
お顔は笑ったまんま。
ちょっと固まってけーちゃんが俺を見る。


「お土産?」
「ぬん。」
「持って行くの?」
「持って行かんの?」


やあやって。
第一印象って大事ちがう?
何事にも一番初めが肝心ちがう?
けーちゃんのお話聞いてたら、何かひでよしも気まずい?感じやし、ここは素敵なお土産持って行ってしょっぱなに相手の心をぐぐっと掴んでおきたいやん?
ご挨拶がてら。


ごあいさつがてら。
いやいやいやいや。
「ぬ?」
「俺これから喧嘩しに行くんだよ?」


そんな相手に土産なんておかしくないかい?


「えーでもー。」


喧嘩するにしたって。
喧嘩は喧嘩でおいといて。
ほら、喧嘩した後に一緒に食べてもいいし。
おいしいし。
もし仲直りできたら酒まんじゅう食べながらお話弾むかもしれやんし。
やあ別に仲直りしなあよってゆうてるん違うで?
でももしそうなったら一緒においしいもの食べたいなって。
それにお土産あった方がひでよしにも会いやすいかなって。


「思ったんやけど…どお?」


俺が首をかしげたらけーちゃんはぱちぱちまばたきして頬杖ついてる腕をもちかえた。
その後目をつむってぎゅうって眉間に皺を寄せて。

うーん?でも、
いやいやだからって…
ああああ俺はそんなの!

なんてうんうん唸ってからばちん!って膝を叩いて、何かを決心したような顔で立ち上がった。


「けーちゃん?」
「真樹緒。」
「はい?」
「かるめいら食べに行こう。」
「………ぬ?」


かるめら?
あれ?
おみやは?
おみやのお話どこに行ってもうたん?
あれ?


「かるめいら食べて、酒饅頭と食べ比べて、気に入った方を買って行こう。」
「!!」
「真樹緒が決めてよ。」


俺あいつらの好みなんて分かんないからさ。
そう言って俺の頭を撫でてけーちゃんが立ち上がる。
かるめいらの屋台はあっちの神社の境内に出てるらしいよ。
通り道だから寄って行こうって俺の手をやっぱり引いて。
俺はそんなけーちゃんの顔に苦しいや悲しいが無いかこっそり探す。


大丈夫かな。
無理してないかな。
でも屋台について俺にかるめいらを買ってくれたけーちゃんは楽しそうに笑ってて俺はほっと息をはいた。


「甘いねえ、けーちゃん。」
「柔らかいと思ったらそれなりに固いんだね。」
「わかるー見た目を素敵に裏切ってくれるよねー。」


でもさくさくしてて甘くておいしいね!
ちょっとこげたお味がキャラメルみたいでくせになるー。
大きなかるめらを二つ買って、けーちゃんは夢吉と俺はこーちゃんとはんぶんこ。
お行儀よく四人で並んで神社の階段にすわって味わった。
さくさくほろほろあまあま。
たまにお砂糖の焦げた味が大人の味でおいしいん。


「でも手土産にはちょっと難しいね。」
「ねー、おっきいしね。」


もぐもぐ食べても一向に減るようすが無いかるめらを見ながら頷いた。
ちょっとかるめらは持って行くにも難しいかもね。
やっぱりお土産なんやからちゃんと包みたいけど、かるめらってこう手づかみで食べるのが醍醐味みたいなところあるし。
屋台で買って、今みたいにの階段とかで食べるのがおいしいんやもんね。
やあ家で食べるかるめらもおいしいんやけど!


「じゃあお土産は酒饅頭にしようか。」
「ぬん!」


絶対ひでよしも気に入ると思う!
笑って残りのかるめらを食べた。


階段からも見えるお城はとっても大きい。
町はすごく賑やかやのに、何でかお城はひっそりとそこにあって俺はなんだか胸がぎゅうってなる。
お空は晴れて眩しいくらいの明るさやのにお城だけもやがかかったように暗い。
こんなにいいお国やのに、お城がぽつんと一人ぼっちに見えて。


「けーちゃん。」
「ん?」
「お土産、喜んでくれるといいね。」


ひでよし。
けーちゃんの着物のもこもこを引っ張った。
酒まんじゅう買って、早くひでよしのところへいこう。
一人ぼっちはすごくさみしいと思うん。
ひでよしはそんなん違うとおもうけど、でも、俺なんだかお腹がそわそわする。


「そうだね。」


甘いものは多分好きだったはずだよあいつも。
味にはうるさかったけど。
俺の手を引いてけーちゃんが立たせてくれた。
ふんわり香ったのは桜の匂い。
大丈夫だよ、ってけーちゃんが笑う。
何へのお返事か分からへんかったけど俺はその言葉に安心してお腹を撫でる。
お腹を撫でてぽんぽん叩いて、さっきのもやもやがちょっぴり無くなったのに気がついた。

けーちゃんが言うんやから大丈夫。
絶対に大丈夫。
目の前に飛ぶ桜の花びらをつかまえてけーちゃんを見上げた。


「行こう、けーちゃん。」
「土産を買ってね。」
「ぬん。」


大阪について最初に寄ったお店にもう一回こんにちは。
酒まんじゅうをたくさん買ってとっても高級そうな木の箱に入れてもらって準備は万端。
それを春の雰囲気ただよう風呂敷で包めばもう完璧。
素敵なおみやが完成していざ大阪城へ!


張り切る俺をおかしそうに見てたけーちゃんは一回だけかんがいぶかげに大阪城を見上げて笑う。
大阪に来て、けーちゃんがたくさん笑えてて俺は嬉しくて。
にっ!って俺も笑い返してやってきた大阪城。
原っぱみたいなところをずんずん進んで大きな扉の前。




「何をしに来たんだい慶次君。」
「……半兵衛。」




さっきの素敵なテンションがお空のかなたに吹き飛ぶぐらいの、もうこれでもかと飛んで行くぐらいの、そういえばまだ春が来たばっかりやったねって実感させてくれるぐらいの冷たい空気がけーちゃんと俺と、目の前に立つ男の人の間を吹き抜けました。



ぬーん…



えええ何これ。
何なんこの空気さっきまでおみやで物凄い俺テンション上がってたのにまっしょうめんからそのテンション叩き折られてしまったでこのお兄さんの空気が怖い…!
第一印象が大事やと思うけれども、それ以前の問題ってゆうか俺が口をはさめやん雰囲気ってゆうか、誰なんこのお兄さん顔が半分ぐらいマスクっぽいので隠れてしまってるから余計になんか怖い…!


マスクをつけたお兄さんは口をきゅっと結んで腕を組んで、自分よりも背が高いけーちゃんをじっと見る。
それがまるで通せんぼしてるみたいに見えて俺はけーちゃんを見上げるけど、けーちゃんは真剣な顔でお兄さんを見た後すぐにふって笑って。


「…よう、半兵衛。」


元気そうだな。


「秀吉はいるかい?」
「…君は」
「俺ちょっとあいつに用があってさ。」


お前に断りを入れる義理なんて無いけど、止めないでくれると嬉しいね。


けーちゃんがお兄さんに負けず劣らずの真剣な顔をして言った。
いつもの優しい雰囲気はそのままそこにあるけど、でも、言い返せやん様な力強さで言った。


「…君は一体何を企んでいるんだ。」
「別に何も企んじゃいないさ。」
「今更秀吉に何の用がある。」


今、秀吉は大事な時なんだ。
天下という目途に向けて。
やらなければいけないことは沢山ある。
君にかまけている暇なんて無いんだよ。


「そんな事俺には知ったこっちゃ無いね。」
「君って奴は…」


お兄さんが腰の刀に手をかける。
じっと目はけーちゃんからそらさずに。
あぶない、ってけーちゃんの手をひっぱった時。
その瞬間俺の周りに風が吹いた。
あたたかい春の匂いのする風が吹いた。
ひらひら舞う花びらは俺とけーちゃん、それから目の前のお兄さんをすっぽり包む。


「何のつもりだい…」
「半兵衛、俺秀吉と喧嘩しに来たんだ。」


あの馬鹿と。
一対一で。
喧嘩しに来たんだよ。


真っ直ぐに地面に突き刺さったけーちゃんの刀がお兄さんとけーちゃんの間にそびえたつ。
にやっと笑ったけーちゃんがおかしそうに俺を見下ろして。


「真樹緒。」
「はあい?」
「これ、預かっててよ。」
「かたな?」
「刀。」


必要無いからさ。


そう言ってけーちゃんはお兄さんの肩をぽんとたたいて扉をくぐってしまう。
俺にひらひら手を振って。
ご機嫌でお城の中に入ってしまう。
その背中がそれ以上声をかけれる雰囲気じゃなかったものやから俺はばいばいけーちゃん行ってらっしゃいふぁいと!って手を振り返して。
そうなったら俺はこの目の前のお兄さんと二人きり。


二人きり。


「ききぃ」
「あれゆめきち?」
「きい!」


ぬん、いつの間にか頭の上に乗っかってたゆめきちと三人きりで(こーちゃんはお城が近くなってからばびゅんと姿を消してしまったから目で見えるとこにはおらんの。でも多分近くにおるから呼んだら出てきてくれるとおもうけど!)遠ざかるけーちゃんの背中を見つめながら、俺はちょっと俺とお兄さんとの間に流れる微妙な空気が手に負えやんくって胸のどきどきが止まりません真樹緒です誰か助けて俺お兄さんとしょたいめん…!


--------------


とう事で肝心な所が一つも進んでおりませんすみませ…!
二つも食べなきゃよかったです酒饅頭とかるめら。
前半食べてばっかりいたせいで区切りも見つからずだらだらしてすみませんー!
でもこの後半兵衛君におみや渡して半兵衛君と酒まんじゅう食べると思います食べ過ぎ…!


小太郎さんは自分が半兵衛君に面が割れてる事を知っているので、自主的に姿を消しておりまする。
多分キネマ主が呼んだら来てくれるかと思いますが、よっぽどの事が無い限り出てきませんごめんね小太郎さん!
ほら…
キネマ主が奥州出身だとばれるとちょっとまずいから…

本当は最後、お土産を渡して終わろうと思ったのですが、そうなるとキネマ主が大概空気読めてない子になるのでお土産は次回渡します。
八月は、もうちょっと、更新したいよ…!


ではでは全然全く進んでおりませんが今回はこのあたりで。
最後までご覧下さってありがとうございました!

  

book top
キネマ目次
top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -