政宗様のお風呂はとっても広くて気持ちよかったん。
つるつるすべすべ湯上りタマゴ肌の真樹緒ですこんにちは!
「ほー…」
何やろう。
一皮むけた感じ?
ほら、つるってむけた感じ?
ヒノキのお風呂はちょっと熱めのお湯でなー。
足伸ばせるぐらい大きくてなー。
思わずちょびっと泳いでしまったんは内緒です!
とにかく最高でした!
ほてった顔にお外の風が気持ちいいん。
「えーと、政宗様の部屋はー…」
ほんで今はね、てくてく政宗様の部屋をさがしてるん。
俺のお部屋片倉さんが用意してくれるっていうお話やったけど、俺くわしく聞いてないから場所も分からんし。
もちろん片倉さんの居場所も分からんし。
ほんならやっぱりここは政宗様かな、って思ってやあ。
着物着せてくれた女中さんが行き方教えてくれたんやけどなー。
「うーん…」
孤独。
やあ、ちゃんと聞いたんやで?
あの角を右に曲がってー、突き当たりを今度は左にまっすぐでー、左手に階段が見えるはずやけど見えたのは長い廊下でした!
あれ、階段は?
……
………
「まじで…!」
きょろきょろ見渡してもどこにも階段は無い。
天井見上げてみてもやっぱり階段は無い。
ええー…
まじでー…
どこで間違ったんやろう。
どこからの間違いやろう。
そこから分からへんどないしよう。
「政宗様―…」
やー、返事は無いよ?
もちろん無いよ?
多分政宗様はお部屋にいるよ?
ぬん。
ちょっと呼んでみたら何とかならんかなぁって思ってやぁ。
「おシゲちゃーん…」
宴の準備してるおシゲちゃんもこんなとこにおるはず無いしなー。
やあ、ここがどこかも分からんのやけど!
…。
やっぱり孤独!
「片倉さーん…」
はようお部屋に着かんとせっかくほっかほかやのに湯冷めしてしまうやん。
ヒノキのフローラルな香りが飛んでしまうやん。
「…、」
え?
何か違う?
そこはほら、あれやん。
えーと…
えーと…
…………あれやん。
「政宗様―…」
ちょびっとやるせなくなって、もっかい政宗様を呼んでみた。
政宗様どこーってさっきよりは大きめな声で呼んでみた。
もうこれであかんかったら動かんとじっとしてよう。
正座してじっと助けをまってよう。
暗くなる前に見つけてくれたらええなぁとか素敵に広がる空を眺めとったらな。
「見つけたぜ真樹緒!!」
「!!」
あれは!
あれはぁぁぁ!
「政宗様ぁぁぁぁ!!」
通じた!
俺の思いが通じた!!
ちょびっと涙目で振り返ったら政宗様に思いっきりぎゅうってされました!
政宗様何でここにおるん俺の事探してくれてたんぬーん!
政宗様のお腹にくっついて俺もぎゅう。
本物の政宗様やってしっかりぎゅう。
まさか本当に会えるとは思ってへんかったから嬉しいんとびっくりが一気にきてちょっと強めにぎゅう。
「心配しただろうが。」
「ぬー…ごめんなさいー。」
「こんな西の外れまでどうやって来たんだ。」
「やって…」
あっちらこっちら曲がったりしてたら何や分からんようになってもうたんやもん。
俺はちゃんと進んでるつもりやったんやもん。
でも曲がった所に階段なかったんやもん。
政宗様にしがみついてふーってため息つきながら、小さく呟いてみた。
やあでもほんまに良かった。
このままここで一夜を過ごさなあかんかと思った。
いやいや、ほんましゃれにならんで。
お城の中で遭難て。
笑えやん…!
「体が冷えてるじゃねぇか。」
「けっこう迷ってたからー。」
最終的にあきらめたけど、けっこう頑張って歩いてたんやで俺。
歩いてた時にはそんな寒いとかは思ってへんかったんやけど今は俺もちょっと寒いなぁって思ってたん。
けど政宗様ぬくいよ?
こうくっついてたらとってもぬくいよ?
ぎゅーってされたらあったかぬくぬくで体もぽかぽかなん。
「このままくっついててもいい?」
「of course、」
そうらこい。
俺を抱き上げて政宗様が歩き出す。
このまま宴をやるお部屋まで運んでくれるんやって優しい!
俺はぬくぬくぽかぽかご機嫌で、政宗様と会えたもんやからとってもご機嫌で、お風呂に入る前に思ってた事を政宗様に聞いてみる。
「なあなあ政宗様。」
「どうした。」
「俺、聞きたい事あるんやけど。」
「Ah?」
「なんでな、政宗様さっき俺にちゅうしたん?」
ほら、お風呂に入る前。
ちゅうしたやん?
俺のおでことほっぺたに。
俺ちょうびっくりしたんやで!
あのちゅうは何のちゅうやったん?
聞いたら俺がびっくりしたってゆうてるのに政宗様がびっくりした顔してるん。
「ぬ?」
政宗様?
どうしたん?
やぁ俺、別にちゅうが嫌やった訳ちがうよ?
かん違いせんとってね?
政宗様にちゅってされて俺全然嫌やなくって、むしろほら嬉しかったってゆうか。
ほって安心したってゆうか。
びっくりしたんはほんまやけど、その後ちょっぴり照れ臭かったってゆうか。
やからね。
政宗様が何で俺にちゅうしてくれたんかなーって思って。
スキンシップやとは思ってるんやけどほら、そこは本人に聞かな分からん事やんか?
スキンシップにも色々あるしー。
ちゅうにも色々あるしー。
ありがとうのちゅうとか。
好きよーのちゅうとか。
なぐさめる時のちゅうとか。
ほらちゅうにもいっぱい…!
さっきの政宗様のちゅうってどのちゅうかなとか思ったりしてね。
ありがとうのちゅうやったら俺もしやなあかんなーと思ったりしてね。
……
………
「Ah?」
「ちゅう。」
なあなあ政宗様。
教えて欲しいん。
じって政宗様を見上げたら口を開けたまんま俺を見てた。
口を開けて俺を見て、息をのんでゆっくり口を閉じて。
はーって長いため息。
ぬん。
何でためいき!
「真樹緒。」
「はい?」
「お前には敵わねえ。」
「ぬ?」
何が?
ってゆうか何のお話?
今はちゅうのお話してるんやで政宗様!
「くくく…」
「政宗様?」
「さっきのはな、」
「うい、」
「お前が余りにもcuteだったからだ。」
余りにも俺にcuteな事を囁くからだ。
まっすぐだったからだ。
なぁ真樹緒。
お前にそんなつもりは無いのかもしれないが、俺はお前の言葉に、そしてそこにある温もりに救われている。
「ぬん、やから俺、きゅーとちがうってゆうてるのに。」
きゅーとなんは政宗様とか片倉さんとかおシゲちゃんやってゆうてるのに。
もー。
「あ。」
「Ah?」
やあほんなら。
「俺は政宗様がきゅーとやと思うからちゅうしてもいい?」
……
………
「Ah?」
俺がゆうたら政宗様は目をこれでもかってほどおっきくして驚いてくれた。
やあやあでもね。
そういう事やとおもわん?
俺がきゅーとでちゅうされたんやったら、政宗様がきゅーとやったら俺がちゅうしていいって事やとおもわん?
俺ちゅうしてもいいとおもわん?
さあさあ政宗様どうするのん!
ずずずいっと顔を近づけたら政宗様のおでことごっつんこ。
もう一回ちゅうしてもいい?って聞いたら今度は政宗様が困った様に笑った。
「やっぱりお前には敵わねえよ」って笑ってまたほっぺたにちゅうをされる。
ぬんぬん。
ぬんぬん。
これはきっとおっけーって事よね。
ちゅうしてもいいって事よね。
りょうかいりょうかい、まかせて。
すり、って政宗様のほっぺたに自分のをすりよせた。
それからじ、って目を見て。
「ちゅー。」
これはね、政宗様がキュートやでっていうちゅうやけど。
ありがとうのちゅうも交じってるん。
これからよろしくねのちゅうも交じってて。
いろんな意味を込めて政宗様のおでこにちゅう。
くすぐってえよって笑う政宗様がとってもキュートなので何も問題ありません!
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