「ききっ!」
「ぬ?」
両手で湯のみを持ってあったか緑茶をまんきつしてたらなんだかお膝にもさっとした手が。
もさっとした手と「ききっ!」ってゆうなき声?が。
町を見てた目を下に下ろしてみたら、そこには何とちっちゃいお猿さんが。
ちいさい手を俺のお膝に乗せて首をかしげるちっちゃいお猿さんが。
……
………
「ふあああああああ!お、おさる!ちっちゃいおさる…!」
俺の右手にすっぽりおさまるサイズのちっちゃいおさるが飛び跳ねてました真樹緒ですおさる可愛いこんにちは…!
うわあああああ。
俺のお膝でとびはねてるおさるかわいい…!
もこもこのおさるかわいい。
俺おさるこんな近くで初めて見たかわいい…!
「ぬん…」
やあでも何でおさるがこんなところにおるんやろうこの甘味屋さんのおさるかな何か首に巻いてるし。
はちまきみたいなん巻いてるし。
お山におるおさるやったらこんなん巻いてるはずないしねえ。
それに人にとっても慣れてるしやあ。
「おや、その子慶ちゃんの夢吉じゃないか。」
「ききっ!」
「…ゆめきち?けーちゃん?」
とっても人懐っこいおさるを撫でてたら、お盆をもったおばさんがひょっこり顔を出した。
お待ちどう、なんて俺のお焼きとこーちゃんの葛湯を載せたお盆をいすにのせてくれる。
笑いながら俺のお膝に乗ってるおさるのおでこをゆるゆるなでて、この子の名前は夢吉ってんだよって教えてくれた。
「ゆめきち?」
「きぃ、」
「ゆめきち!」
「きききっ!」
「いつもは慶ちゃんと一緒に居るのにねえ、」
はぐれちまったのかい?
「きーぃ?」
おばさんが首をかしげると同じ様にゆめきちが首をかしげる。
やあやあゆめきちもまいご?
そのけーちゃんとはぐれてしまったん?
俺もおシゲちゃんとはぐれてしまってちょっとしょんもりしてたところやったん。
そこでね、ちょうど甘味屋さんに出会ってね、素敵なグットタイミングでね、しょんもりしてたこころがこう、甘味で復活してきたところなん。
「ゆめきちも食べる?」
「きぃぃ?」
「甘いもの食べると幸せな気持ちになるんやで。」
俺と一緒に甘味食べてちょっと気分をおちつけてみましょー。
そんでもってその後俺とけーちゃんを探してみましょー。
あ、その時うちのおシゲちゃん探しも手伝ってくれると嬉しいわ!
「きき!」
「ぬん!」
ぴょん!ってゆめきちが俺のお膝で飛びはねる。
手をぱちぱち叩いた後、くるんって一回転。
ゆめきちすごい!って俺とこーちゃんもぱちぱち。
よかったねえ、ってお店のおばさんが笑って俺にけーちゃんの事を教えてくれた。
「慶ちゃんは前田慶次っていって、うちの謙信様のご友人でね。」
「ぬんぬん。」
「(こくこく)」
「身分を鼻にかけたりしないし、気立ては良くて、私達にだって気軽に話しかけてくれる、そりゃぁいい男だよ。」
「ぬんぬん。」
「(こくこく)」
「なんてったって男前だしね!」
ちょっと派手ななりで傾奇者なんて言われてるけど、ここのもん等は皆慶ちゃんの事が大好きさ。
「へー。」
男前でかぶき者なけーちゃんかー。
皆からとっても好かれるけーちゃんかー。
どんな人なんやろうね!
お焼きをもぐもぐしながらおばさんのお話にうなづく。
小さく割ったお焼きをゆめきちに渡して一緒にもぐもぐ。
こーちゃんにも半分渡して三人でもぐもぐ。
喉がつまりそうになったところをこーちゃんの葛湯で助けてもらってお腹もいっぱい。
元気も戻って来たよ。
「そっかあ。けーちゃんは皆が大好きな男前!」
ゆめきちを肩に乗せて、お代をいすの上に置いて立ち上がる。
ごちそうさまでした!
とってもおいしかったよ
元気も出たん。
ありがとう!
「いえいえこちらこそ、」
何か困った事があったら戻っておいでよ。
「はーい!」
ゆめきち、こーちゃん、行こう!
おばさんに手を振ってばいばいする。
ほんまにどうにもならんぐらい迷ったらまたお世話になるかも!
甘味をおよばれに戻って来るかも!そんな事言ったら「あっはっは!待ってるよ!」って笑ってくれて。
俺はそのままの勢いで大通りへ飛びだした。
やあでも、人通りが多い通りはまた流される恐れがあるから避けた方がいいよね。
それか端っこを歩く方がいいよね。
「おシゲちゃんは見たらわかるけどけーちゃんはゆめきちが頼りやからよろしくね。」
「ききっ!」
「ゆめきちたのもしい…!」
俺の肩と頭をいったりきたりするゆめきちが男前で俺は俄然やる気が出る。
さっきまではどこに歩いていったらいいかも分からんかったけど今やったらなんてゆうか勇気持って歩きだせるってゆうか!
ゆめきちもおるしね!
甘味屋さんの前の大通りを横切って小道に入って。
通り抜けたらお寺の前やったんやけどおシゲちゃんもけーちゃんもおらんくってゆめきちと二人首を傾げた。
「おらんねえ。」
「きーぃ、」
「やあほんならこっち!」
お寺の前をまっすぐ行って、ちょっと狭い路地っぽいところを通ったら今度はさっきとはまた違う大きな通りに出る。
こっちの方が人が多くって賑やかで、たぶん俺が初めに見た市が出てたとこやと思うんやけど。
右へ左へきょろきょろきょろきょろ。
忙しく首を動かす俺とゆめきちはたまに人波にのまれそうになるけど、こーちゃんが助けてくれるから一安心やで。
おっとっと、って体が揺れる俺らを素敵なタイミングでささえてくれるからゆめきちも俺もこーちゃんを感動のまなざしで見上げるん。
俺のこーちゃんちょうかっこいい!
「(…、)」
「照れてるこーちゃんはかわいいん。」
絶妙なバランスよね。
可愛いこーちゃんとかっこいいこーちゃん。
どっちも素敵な俺のこーちゃんやけど!
「きききっ!」
「ゆめきちもこーちゃんかっこいいと思う?」
「きーい!」
「ねー、俺もそうおもう!」
ごきげんで大通りを通り過ぎる。
その間もおシゲちゃんおらんかな、けーちゃんおらんかな、ってきょろきょろするんは忘れずに。
ほら、俺認めたくないけどちっちゃいから。
何て言うか平均身長よりもちっちゃいから。
気を抜くと人に埋もれちゃうから。
でも俺のお目当てのおシゲちゃんもゆめきちのお目当てのけーちゃんも見当たらんくって。
「なあ、あんた。」
うんともすんとも見当たらんくって。
やあ、だいたい俺けーちゃんってそもそもどんな人か知らんしね。
気立てがいいイケメンっていう事しかしらんからね。
そんなんゆうたらおシゲちゃんかって気立てのいいイケメンやからね。
政宗様もこじゅさんも鬼さんもこーちゃんもイケメンやけど、おシゲちゃんかって奥州ご自慢のイケメンやからね。
「なあ、ちょっとあんた、」
そうかんがえてみたらイケメンばっかりよね。
俺の周りイケメンばっかりよね。
四国のちかちゃんも明智の光秀さんもイケメンやしもちろん元就様もむさし君もかっこいいし。
それやったら最近ごぶさたのゆっきーやさっちゃん、おやかた様も男前やしー。
「なあってば!」
あんたを呼んでんだけど!
「ぬ?」
俺が俺の周りにおるたくさんのイケメンについて思いをはせてたら急に肩をぐいっと引っ張られた。
急に後ろにぐいっと引っ張られた。
びっくりして体が傾いてバランスを崩す。
どん、ってぶつかったのは知らん人の大きな胸の中。
「わぁ!」
「おっとごめんよ。」
頭の上から申し訳なさそうな声がふってくるんやけどいえいえこちらこそー。
こちらこそぶつかっちゃってごめんなさいー。
大丈夫でしたかー。
ひょいっと顔を上げたらそこには。
「あんたが連れてるその子猿さあ、」
「ぬん…」
そこには。
「ねえ、ちょっと聞いてるかい?その子猿俺の、」
「ぬん…」
俺のにばいはある感じの背の高さで。
俺のにばいはある感じのでっかい刀をかついで。
目がちかちかするような着物を着て。
ぬん、なんで頭に羽ついてるん。
なんでそんなにでっかいん。
なんでそんなに黄色いん。
なんでゆめきちに手ぇ伸ばしてるん。
ていうかなんで俺、肩をぐわしって掴まれてるん。
何これなんぱ。
俺なんぱされてるん。
でもちょっと申し訳無いけどなんぱは遠慮したいってゆうか。
そんなにこにこスマイルには騙されへんぞってゆうか。
ゆめきちはけーちゃんと再会するまで俺が守るってゆうか。
「な…」
「ん?な?」
「なんぱはていちょうにお断りするんごめんなさいー!」
逃げるよゆめきち!
逃げるよこーちゃん!
「さよならなんぱのお兄さんもう絶対会えへんと思うし俺ら三人これで失礼しますー!」
「は!?え!?ちょっと待ってくれよあんた!その子猿俺の友、」
「ぬーーん!たいさーーーん!」
俺らにはおシゲちゃんとけーちゃんを見つけるっていう重要なお仕事があるんやから!
こんなところでなんぱに捕まってる場合やないんやから!
なんぱのお兄さんに捕まりそうになってたゆめきちを両手でかかえてダッシュ。
お兄さんと目を合わさんように猛ダッシュ。
振り返らずに一目さん。
ごめんねお兄さん俺らいそいでるから!
「なんぱは可愛い女の子にしてあげてほしいわお兄さんイケメンやったからすぐに素敵な女の子に出会えると思うじゃあねー!」
「(しゅた!)」
「ききー!」
……
………
「えええええええーー!?」
ちょ、お前!夢吉ぃ!?
お前まで何手ふってんだお前は俺の友達だろおおお!!
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という事で慶ちゃんとエンカウントする事ができましたただのナンパに間違えられてますけれども!
自己紹介も無くただ逃げて逃げられただけの出会いだったわけですけれども。
この後キネマ主と慶次君は謙信様のお屋敷で再会するか、逃げたキネマ主に慶次君が追いつくか二通りの続きがあるのですけれども、未だにどっちに続くかは未定です。
追いついたところで一緒に謙信様のお屋敷に行くだけなのでそうなったらもう再会を謙信様のお屋敷にしようかなって思わなくもなく…
でも次回は途方に暮れる成実さんからスタートです。
あ、途方に暮れる成実さんが途方に暮れる慶次君と出会ってもおもしろいですね!
行き当たりばったりは怖いので手は出せそうにありませんが!
ではでは本日はこのあたりで。
長いにも関わらず対してお話進んでおらず申し訳ありませんぐすん。
慶次君の疑いが晴れるまでどうかお付き合いくださいませ。
最後までご覧下さってありがとうございました!
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