「あ、」
「あん?」
「むさし君はまざらんの?」
ぬん、ほら。
むさし君まっさきに飛び込んでいきそうやん、ああゆう対戦?みたいなんやってたら。
おれさまさいきょう!ってゆうてまざっていきそうやのに。
お庭を見てた目をむさし君に戻す。
そしたらむさし君はあくびをかみころしながらお盆の上に乗ってたおだんごを持って。
「おれさまはらへってんだ。」
まずははらごなしだ。
だんごくうぞ真樹緒。
「ぬん、どうぞー。」
俺はもういっぱい食べたからむさし君どうぞー。
あ、でも喉に詰まらせやんようにね。
鬼さんが入れてくれたお茶どうぞ。
熱いから気をつけてねー。
でもとってもお団子と合うよ!
「はい。」
「おう。」
あ、それによー。
「ぬ?」
おれさましょーぶすんならこいつがあいてだ。
「こいつ?」
むさし君が団子のくしをくわえてちらっと上を見上げた。
俺も一緒に上を見上げる。
首をぐんと伸ばして見上げたらそこにおるんはお茶を入れてくれた鬼さんと、俺に上着をかけてくれたこじゅさんで。
「…ほう、坊や。返り討ちに合っても知らねえぜ。」
「うるせー、おめーこそぼっこぼこにされてもしらねーぞ。」
……
………
「えっ、何でこじゅさんとむさし君が険悪なふんいきなん…?」
むさし君がくわえてたお団子のくしをぷってこじゅさんに吹いた。
そのくしが物凄い速さでこじゅさんに向かって行く。
「えええ何でただのお団子のくしがそんな速さで飛んで行くんまじで…!」
むさし君普通にぷっ!って吹いただけやでまるでこーちゃんが投げるクナイな勢いで飛んで行くんやけどまじで。
それ普通に人に刺さる速さやと思う危ないと思うむさし君まじで…!
「ぬーん!こじゅさん避けて…!」
「温いぜ坊や。」
「うけとめた…!」
こじゅさん受け止めたお団子のくし…!
華麗にすばやく受け止めたお団子のくし…!
そんでもってそのくしこじゅさんの拳の中でぽっきり折れたなにそれすごい…!
やああれただのお団子のくしやないねんで。
むさし君が思いっきり(やあそんなそぶりも全然無くて普通に飛ばしただけに見えたんやけど!)吹き飛ばしたさっしょうのうりょく抜群のお団子のくしやねんで!
あれ絶対刺さってたら大けがやったんやで!
「真樹緒をなぐったこと、おれさままだゆるしちゃいねーぞ。」
「許される謂れもねえな。」
「さらにやっぱりけんあくなふんいき…!」
「おや、宮本殿とは気が合いそうです。」
もっと言ってやって下さいな。
「鬼さん…!」
鬼さん!
ぬん、鬼さん…!
いやだわ鬼さん俺二人を止めてくれるって思ってたのに鬼さん…!
そんなにこにこ笑ってお茶そそいでないで!
縁側でしかもお団子のくしで何かが始まってしまいそうなんやけど新しいお茶入れに行ったりしないで鬼さん…!
立とうとする鬼さんの足をがっしりつかんで待って鬼さんって目でうったえる。
行かんとって鬼さん。
鬼さんがおらんようになったら俺一人でこのじょうきょうどうしたらええのん…!
こーちゃんがお仕事でおらん今、明智の光秀さんがいつもと違うテンションな今、むさし君を止められる人が一人もおらんっていう実はとっても危険なじょうきょうやねんで…!
「小十郎をが泡を吹く所を見れる良い機会になるやもと、」
「はっ、俺が坊やに負けるとでも言いてェか。」
「何なら俺も宮本殿に加勢しよう。」
「あーん?かせーなんてひつよーねーぞ!」
「何と頼もしい。」
「ぬーん!そんな事言いながら鬼さんお団子のくし構えないで!」
しかもそれまだお団子ついてるから!
これから頂くやつやから!
何かちょっとファンシーやから…!
お願いやからちょっと待って…!
鬼さんの足からぐんと伸びをして、鬼さんが持ってるお団子をもぐり。
俺がいただくから!ってゆってお団子をもぐり。
もぐもぐもぐもぐ、無事に鬼さんから武器をうばってゆっくりごくん。
ふん!って鬼さんを見上げたら「真樹緒殿は栗鼠の様でございますなあ」なんてのほほんと笑った鬼さんに頭をぐしぐし撫でられましたあれさっきまで鬼さんと何かちがう…!
「真樹緒殿が嫌がられる事を為すのはこの綱元本意ではありません。」
「ぬん、ほんならあの二人止めて欲しいん。」
「それは私よりも、」
「ぬ?」
「成実殿が適任かと、」
「おシゲちゃん?」
やあおシゲちゃんは寝てるよ?
ぐっすりお昼寝中よ?
俺としてはもう暫くゆっくり寝かせてあげたいんやけど、
「…起きたよ、…」
「おシゲちゃん!」
「何これ…何のさわぎ…」
隣で寝てたはずのおシゲちゃんがむっくり起き上がった。
頭を押さえて小さくあくびして、体をぐんと伸ばしてお庭を見る。
お庭では今、政宗様とちかちゃん、元就様と明智の光秀さんが戦ってるはずで。
「ご覧なさい毛利、絶景ですよ!」
鬼と竜が地に這い蹲り悔しげに私を見上げています。
何て浅はかな方々でしょうね。
個々の力ならば私に勝っているというのに肝心な所で詰めが甘い…!
ああもう可笑しくて腹が捩れそうですよ私。
まさか鬼と竜を見下ろせる日が来るとは。
「ってめェ西海!お前が俺の邪魔するから負けちまっただろうがあああ!」
「あアアアアン!?てめェが俺の前に出て来やがったからだろうがよ!俺ァ明智が一太刀来る前に気付いてたってんだ!」
「シャーラーップ、真樹緒の前で俺の顔に泥を塗った事後悔させてやるぜ。」
「は!望むところだかかって来な!」
「おやおや余裕ですねぇ…」
何ならこのまま踏んで差し上げましょうか。
もしくはその綺麗な顔を蹴り上げて差し上げましょうか。
ぞくぞくします。
……
………
「…何、明智の光秀さんどうしたの。」
俺が寝てる間に何があったの。
悩みでもあるの。
あれでお母さん名乗られるの勘弁してほしいんだけど。
「ぬーん、それが俺にも分からなくってー。」
ねー。
ちょっとしんぱいよね。
ほんとにお悩みあったらどうしよう。
「ってちがうんちがうんおシゲちゃん!」
「ん?どうしたの。」
「あのねおシゲちゃん、こじゅさんとむさし君を止めて欲しいん。」
寝起きにこんな事おねがいしてごめんなさいやねんけど、なんでかさっきからこじゅさんとむさし君がけんあくなふんいきなん。
鬼さん止めてくれるかなって思ったんやけど鬼さんのりのりで。
鬼さんも参加してしまうかなっていうぐらいののりのりで。
これはもう非常事態なんおシゲちゃん!
寝起きのおシゲちゃんにぐぐって迫って力説したらおシゲちゃんが首をかしげながら俺に上着を着せてくれる。
ぬん、これ俺が寝てるおシゲちゃんにかけたやつ。
風邪ひかんようにかけたやつ。
ありがとって言っておシゲちゃんは俺が着てたこじゅさんの上着をとって、俺にその上着を着せた後またこじゅさんの上着ふわっとかけてくれた。
やあ、あったかい。
「、何が原因?」
「あのね、俺が今夜おシゲちゃんと一緒に寝るってゆうたらむさし君が真樹緒はおれさまとねるんだ!ってゆってね。」
あ、ちがう。
ぬんちがうちがうその後。
むさし君戦うの好きやのに、何で明智光秀さんらの闘いに入っていかんのって聞いたん俺。
やってほらむさし君おれさまさいきょう!ってゆうて飛び込んでいきそうやん?
ほんならむさし君お腹空いてたみたいで。
お団子をもぐもぐ食べててその時にこじゅさんにゆうたん。
「勝負するんやったらこじゅさんやって。」
それからお団子のくしで睨みあいなん。
どうにもこうにもけんあくなふんいきなん。
やから鬼さんにどうしようって相談したんやけど、ほらさっきもゆうたように鬼さんのりのりで。
ほんなら鬼さんがおシゲちゃんに止めてもらったらってゆうん。
そう言うたらちらっとおシゲちゃんが頭の上を見上げた。
そこにはにこにこ笑う鬼さんと睨みあってるむさし君とこじゅさん。
じっと見た後ため息をはいて肩をすくめるん。
「まあ、事情は分かったけどそれよりも。」
「ぬ?」
「西海は今夜四国へ発つって言ってたよ。」
毛利も。
国をそんなに空けてられないからって。
「君も帰るんでしょ?ムサシ君。」
真樹緒と一緒に寝るのは無理だと思うよ。
……
………
「え?」
何それおシゲちゃん俺それはつみみ。
「え?」
あれ言ってなかったっけ?
「あん?」
おいこらしげざね、それどーいうことだ。
……
………
「えええええええー!!」
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最後のええええー!はキネマ主ですお待たせしましたやっと更新出来ましたうわーん!
それでも本題の「明智の光秀さんの処遇」までは行かなかったわけですけれども…
最後の衝撃の事実が知らされたので、次回は肝心な話が出来ると思います。
そこでやっと間章終わります。
もう本当にお付き合いありがとうございます。
どうぞ後少しだけよろしくお願いしますー!
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