「寝たのか?」
「ぬ?」
おシゲちゃんがゆっくり廊下へ倒れて行って、すぐに小さな寝息が聞こえた。
俺が明智の光秀さんらと政宗様らのバトルを見ようって誘ったのに、お返事もしてくれやんままに動かんようになった。
おシゲちゃーんって呼んでみるけどうんともすんとも応えてくれやんくって、とっても穏やかな寝息をたてるおシゲちゃんの顔を観察。
やあやあ素敵なイケメンですねーなんてほっぺたつっついてみたり。
お鼻つまんでみたり。
でもやっぱり何にも反応が無くてやあ、しょうがないから着てた上着をおシゲちゃんにひょいっとかける。
ぬん。
おシゲちゃんのお世話がやけて何だかちょっぴりくすぐったい真樹緒です。
こんにちは!
ぬふふ。
ほら、いつもは逆やから。
いつもは俺がお昼寝してたらおシゲちゃんがあったかい上着かけてくれるから。
そんないつもとは逆で俺がおシゲちゃんに上着かけてあげるんって初めてやから。
照れくさい気持ちにもなるよね!
ぬん!
まだ肌寒いしいくらお昼下がりっていってもね、風邪ひいたらあかんしやあ。
ぽんぽんっておシゲちゃんのお腹をたたいて、ゆっくりおやすみよーってたたいてから政宗様らの方を向いたんやけど頭の上から声がして。
「おや、お可愛らしい寝顔で。」
「珍しいな。」
「鬼さん!こじゅさん!」
叫んでから思わず口をおさえる。
口をおさえてゆっくりおシゲちゃんを見る。
横目で確かめたおシゲちゃんはちょっぴりまぶたを動かしたけど、それでも気持ちよさそうに寝息をすうすう。
「ふー、」
よかったー。
おシゲちゃんぐっすり。
すこすこすやすやぐっすり。
一安心して俺はもう一回こじゅさんと鬼さんを見上げた。
ため息吐いてるこじゅさんにへらって笑って、お隣でくすくす笑う鬼さんと一緒にしーって指を立てて。
「政宗様対ちかちゃんまでは起きててんやけどー。」
明智の光秀さんとのお話終わったら眠くなったみたい。
ぱたって倒れてそのままお昼寝に突入したん。
おシゲちゃんがお昼寝って珍しいよね。
「最近はよく眠れていなかった様ですから。」
「…おれのせい?」
「ふふふ、綱元からは何とも申し上げられませんが。」
奥州へお帰りになってからも細々とした所用に追われていらした様子です。
真樹緒殿の所為ではありませんよ。
「あう…」
俺のせいやないよって言ってくれてるのに、ちょっぴりいじわるに笑う鬼さんが俺の頭をぐしぐし撫でる。
こじゅさんがそんな俺を見てやっぱりため息を吐いて自分が着てた上着を俺にかけてくれた。
「ありがとうこじゅさん。」
「まだ寒いからな。」
体を冷やすな。
「ぬん!」
大きめのそれは俺の体を全部包みこんでしまう。
指先から足の先までこじゅさんの着物に包まれてぬくぬく。
とってもあったかくって、もぞもぞしながら鬼さんをちらり。
「なあ、なあ。鬼さん。」
「はい。」
「俺、今日は、おシゲちゃんと一緒に寝る。」
夜、お久しぶりにおシゲちゃんと寝る。
ぎゅってくっついて一晩中おシゲちゃんとおる。
そしたらちょっとはゆっくり寝てもらえるかもしれやんやん?
真樹緒はここにちゃんといますよーってね、くっつくん。
「政宗様が許すとは思えねぇがな。」
「ぬ?政宗様とはちかちゃんのお船の中で一緒に寝たもん。」
それに奥州に帰って来てからもずっと一緒やし。
もう十分いちゃいちゃらぶらぶ済みよ?
いっぱいぎゅうってしたし、ちゅうもしたし、お話もしたし。
やあお船での政宗様は先に寝てしまったんやけどそれでもやっぱりらぶらぶやったよ?
朝なんかは離してくれやんくってね、俺らおシゲちゃんが起こしに来てくれるまでずっといちゃいちゃしてたんやから!
やから別に俺がおシゲちゃんのお布団へもぐりこんだかって、何とも無いと思うよ?
言いながら首を傾げてみたら、鬼さんがくっくっくって笑ってこじゅさんが今日三回目のため息を吐いた。
「こじゅさん?」
「まぁ、言うだけ言ってみろ…」
ぬーん。
やだわーこじゅさん。
そんな顔しちゃって。
眉間にしわよせちゃって。
やだわー。
俺と政宗様はもうらぶらぶやから心配することないねんで。
じたともにみとめるらぶらぶかげんやから大丈夫やねんで。
やから俺、今晩はおシゲちゃんのお布団にもぞっともぐり込もうと思ってるんやけど。
「殿が許せばよろしいですね。」
「えー、鬼さんまで!」
あっついお茶をそそいでくれてる鬼さんまでちょっと困った風に笑うから俺はほっぺた膨らまして二人を睨んで見せる。
政宗様絶対分かってくれるもん。
優しいもん。
俺がおシゲちゃんと寝たいってゆうたら絶対いいよってゆうてくれるもん!
「あにいってんだ真樹緒。」
おめーはおれさまとねんだろ。
……
………
「ぬ?」
あれ?
この声は、あれ?
「むさし君!?」
「おう。」
やあやあむさし君。
今までうんともすんともおとさたが無かったむさし君。
実は奥のお部屋でおシゲちゃんよりも先に絶賛お昼寝中やったんやけどむさし君。
俺がおだんごあるよーって呼んでもぐーすかいびきなんてかいちゃって、とっても気持ちよさそうに寝てたんやけどむさし君。
「おきたん?」
「おう、おかみらがうっせーからな。」
おきた。
「ぬ?明智の光秀さんら?」
むさし君があくびをしながら俺の隣に座る。
ぐんって両手を組んで伸びをして、まだまだ眠そうな顔でお庭を見るから、俺もそれを追いかける様にお庭を見た。
お庭では明智の光秀さんに元就様、それに政宗様とちかちゃんが戦ってるはずで。
「ははははは!それで終わりですか独眼竜!」
奥州の竜も地に落ちたものですね片腹痛い。
いいでしょう。
真樹緒の見ている前で完膚なきまでに私に叩きのめされなさい。
覚悟は出来ていますか!
「Ha!jokeはそこまでにして貰おうかァあアアア?」
誰が地に落ちたって死神さんよ。
目がイってるぜ明智光秀。
やっと本性出しやがったなア?
てめェこそ真樹緒の前で化けの皮剥がしてやるぜ糞がァアアア!
「明智、機を急くな。」
長曾我部が狙っておるわ。
貴様我と組んでおいておめおめと相手の策に陥るなど許さぬぞ。
「ふふふふふ、私を誰だとお思いで。」
見えておりますよ毛利。
鬼の魂胆などとうにお見通しです。
更にはあなたが鬼の更にその背後を狙って下さる事も。
「私はこのまま独眼竜を薙ぎ払いましょう。」
「避けようが。」
「ええ避けて鬼の視界を邪魔し、それにぶち切れた鬼が独眼竜へ槍を向けるんですよ。」
もちろんかの独眼竜はあの通りの方ですからさらにぶち切れて鬼を迎え撃つでしょう。
毛利、そのまま鬼を狙って下さいな。
私は更に上から二人を狙いましょう。
手加減など生温い。
鬼も竜も私の足元にひれ伏すがいい…!
「ああ、ぞくぞくしますね…!」
……
………
「な!」
「ぬーん…」
なんか。
ぬん、なんか。
なんか。
「明智の光秀さんちょう生き生きしてるね。」
鎌持って目がきらきらしてるね。
あんな楽しそうな明智の光秀さんお久しぶりに見た…!
「なー、おかみたのしそーだな。」
「今までに見た事のない明智の光秀さんやねえ。」
やあどうしたんやろう。
どうしたんやろうあの明智の光秀さん。
何かあったんやろうか明智の光秀さん。
なんてゆうか、とんでもないテンションなんやけど明智の光秀さん…!
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