もう!っていうおシゲちゃんの声を聞いてちょっと肩をすくめながら階段を上がる。
通り過ぎる海賊の兄やんらにおはよう!って挨拶をして。
お邪魔にならんようにささっと移動。
階段を上がりきったところで太陽の眩しさに目をきゅってしかめたら「真樹緒!」って手を引っ張られた。
おっきな影が俺を引っ張る。
引っ張って走る。


「う、わ…あ!」
「おめーおきるのおせーぞ!」


もうすぐりくだ!


「むさし君!」


やあやあむさし君!
おはようむさし君!
むさし君よりも寝ぼすけやったんが実は衝撃的な真樹緒ですよおはようむさし君!


「おう!おれさまはひるからねてたからな。」
「あー、そういえばー。」


結構お船の上がものすごいしゅらばやったのに、ぐっすりやったよねむさし君。
船の高い所で寝てたよね。
すごいバランスやったよね。

明智の光秀さんのピンチにはかけつけてくれたけど!
あの時はちょう男前やったでむさし君!


俺の手を引っ張ってたんはむさし君で、そのまま手を繋いでお船の前へ走ったら、むさし君がゆうたように陸はすぐそこやったん。
人がおるんも見える。
家も何かのお店も、お魚運んでる人も見える。


「みろ真樹緒!りくがちけー。」
「ぬん!」


ちかちゃんのお船は大きいから近くまで行くのは無理で、陸に降りるときは元就様に連れて行って貰うんやって。
ちかちゃんが前ゆうてたん。
ここから見ても陸が近いってことはそろそろ降りる準備かしらー。
おシゲちゃんは何にもゆうてへんかったけど。
勝手に降りたら怒られるしー。
お船のマストのてっぺんで俺らを見守ってくれてるこーちゃんにお願いしたらきっと連れて行ってくれるやろうけど、それはおシゲちゃんに止められてるしー。
がまんよねー。


「陸にはね、鬼さんが待っててくれるんやで。」
「おに?おにならそこにいるじゃねーか。」
「ぬんぬん、ちかちゃんやなくって、うちの鬼さん。」


奥州の鬼さんなん。
お名前が鬼庭さんってゆうてねー、こじゅさんに似てちょっぴりこわもてやけどとっても優しいんやで!
そして更には男前!
いけめん!


「きょーみねー。」
「むさしくーん!もっと興味持って!」


おれの!おれの家族!
奥州の俺の家族なんやけど!
もっとこう、がっつり鬼さんの事聞いてほしいんやけど!
ねほりはほり聞いてほしいんやけど!
どんどん近づいてくる陸を眺めながらむさし君はほんまに興味なさげにふん!って鼻をならす。


「真樹緒のかぞくはよー。」
「ぬん?」
「おかみとおにとおしのびとさんでーと、おれさまだろー。」


おーしゅーのやつなんでおれさましらねー。



ぬん…!



やあやあ、むさし君。
そんな事考えてくれてたんむさし君。
俺、ちょっぴりどころか今すっごいびっくりやでむさし君…!
俺やこーちゃん、ちかちゃんや明智の光秀さんや元就様の事そんな風に考えてくれてたんまじで!


「…俺、むさし君やちかちゃんや明智の光秀さん、元就様もかぞくやって思ってるよ?」


大事な大事な人って思ってるよ?
四国に行って薩摩のお国に行ってザビーさんとこ行って安芸に行って、俺すごく大事な人いっぱい見つけたよ?
やからそんなほっぺた膨らませんとってやあ。

むさし君のお顔を覗きこみながらどうしたん急にって首を傾げて見る。
ちらっと俺を見たむさし君は何だかとってもおおげさなため息はきながらまた目線は陸の方に戻してしまったん。
ぬーん!
どうしたんむさし君、さっきよりも大きくほっぺたふくらんじゃって!
ちゃんと言うてくれやんと、俺わからへんよう。


「坊や、真樹緒相手に遠回しな物言いをしても伝わりませんよ。」
「おかみ!」
「明智の光秀さん!」


あれやあ明智の光秀さん。
おはよう明智の光秀さん。
どうしたんため息はいちゃって。
むさし君とおそろいやでため息どうしたん!
俺なんでむさし君がご機嫌ななめか分からんくってちょっとお困りなんやけど助けてくれない明智の光秀さん!

俺がお願いしたのに明智の光秀さんは肩をすくめてむさし君の頭を撫でる。
俺のお願いには応えてくれやんとなでなでなでなで。
ええーむさし君だけいいなーなんて思いながらそれを見てたら反対の手で俺の頭を撫でてくれた。


ぬん!
さすが明智の光秀さん!
俺のいいたい事わかってる!


「真樹緒、坊や、下船の準備を。」


毛利が迎えに来ています。


「ぬん!まじで!」


鬼さん!
鬼さんおる?
お迎えに来てくれてるみたいなんやけど!


「商人らしからぬ男が馬を従えてやってきているらしいですが。」
「!鬼さん!」


絶対鬼さん!
鬼さんとお馬はもうワンセットなんやで!
鬼さんお馬とっても大事にしてるから!
俺先に行くね明智の光秀さん!
後で鬼さんも紹介するから!


「あっ!こらまて真樹緒!」
「ぬーんあとでねー!」


むさし君が叫ぶのも聞かんとダッシュ!
また後でね!って思い切り走る。


そう言えばお船が止まってる気がする。
下の方が騒がしい気がする。
政宗様やおシゲちゃん、こじゅさんがもう下に行ってるんやろうか。
さっきまでおったちかちゃんの姿も見えへんしこれはいよいよテンションがあがってしまうよね!


「こーちゃーん!」
「(しゅた!)」
「ぬん!おはようこーちゃん!」


あのね、港に着いたんやってちかちゃんのお船!
そんでもって港には鬼さんが迎えに来てくれてるんやって!
港に行くには元就様のお船に乗り換えやなあかんらしいんやけど、俺とっても早くいきたくて。
早く鬼さんに会いたくて。
でも先に降りたらあかんからとりあえずは元就様のお船があるとこまで。


「こーちゃんお願いできる?」
「(こくり)」
たのもしい…!


さすが俺のこーちゃん…!
こーちゃんが頷いたと同時に体が浮いた。
慌ててこーちゃんの首につかまると周りは真っ黒な羽だらけ。
やわらかくってちょっぴりくすぐったいこーちゃんの羽に包まれて俺とこーちゃんしか見えやんようになったと思ったらすぐに明るくなって。


「真樹緒、」
「元就様お船乗せて!」
「ふ、早う乗れ。」
「ぬん!」


そこはもう元就様のお船。
すぐ前にお船の用意をしてくれてた元就様のお船。


「真樹緒!?」
「ぬ?」


振り返ったらちかちゃんのお船からこっちに降りて来るおシゲちゃんとこじゅさんが見える。
びっくりしてる顔の二人が見える。
その後ろにおる政宗様は笑いながら俺に手を降ってくれて、嬉しくなって俺も思いっきり手を降り返した。



ぬんぬんお先におシゲちゃん!
お先にこじゅさん!
お先に政宗様!
俺とこーちゃんひと足お先に鬼さんに会いに行ってくるわ…!




……
………




「…真樹緒あのやろー…」
「妬いたなら妬いたと、はっきり言わなければ真樹緒には伝わりませんよ。」
「うるせーおかみ。」


やいてねー。
はらがたっただけだ。


「…、まあ…真樹緒がとぼけている内はあちらとこちらに大した差はありませんよ。」


元々感情表現の豊かな子です。
坊やも知っているでしょう。


「わかってっけどきにくわねー。」
「…可愛いですねえ。」
「あたまなでんなおかみ!」


おれさまはおこってんだぞ!


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鬼さんと再会までいかなかったですそんなまさか…!
本当は武蔵君の出番やらおシゲちゃんの出番やら無かったはずなんですが、ほら、勝手に出てきちゃって。
何せ奥州家族と四国の家族が一緒にいるので人口密度が高くってスルーするわけにもいかなくって…!

なんて言い訳なのですが。
次回はすぐに鬼さんと再会したいと思います。
菩薩系武将です鬼さん。
怒ってるけど何か本当に怒ってるのかという菩薩っぷりに小十郎さんがキレるよ。

ではでは。
いつもに増して長くなりましたキネマ、ご覧下さってありがとうございました!

何だか何も進んでないうえに特にイチャイチャもせずにすみませ…!

  

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