政宗様にだっこされてお城の中をずんずん。
そのお隣を着替えやら手拭いを持った片倉さんがずんずん。
ずんずん。
ずんずん。
俺がお城の中を珍しげにきょろきょろしている間にお風呂みたいなとこに連れてこられました。
真樹緒ですこんにちは!


おシゲちゃんはね、今日の晩にある宴の準備をしにいかなあかんらしいん。
何でもこないだの戦は政宗様の勝ちだったみたいですよ。
おめでたいねー。
すごいねー。
それで宴会するねんて。
兵士の皆さんお疲れ様、っていうんと勝ち戦おめでとう!宴会するねんて。
俺はそんな薄着で寒かったやろうからとにかくあったまれって言うことでな。
でっかいお風呂に運んでもらったわけです!


広い!
そして何か木のいいにおい!!


「総檜だ。」
「ひのき…」


花粉症の敵がこんなところに…!
やぁ、でも立派やねえ。
立派なお風呂やねえ。
おっきいし。
窓格子の向こうは竹やぶっぽくて、何や俺高級温泉旅館にきたみたいやで。
政宗様のお城はすごい!


「小十郎。」
「は。」
「お前は真樹緒の部屋の用意だ。」
「承知。」


じゃぁな、って片倉さんが笑って俺も手ぇふった。
よく温まれよってゆうてくれる片倉さんに手ぇふった。
ばいばい片倉さんまた後で!
ぶんぶん手ぇふって片倉さんとお別れ。
俺の部屋用意してくれるんやって。
至れり尽くせりやねえ。
ありがとー片倉さん。


「なあなあ政宗様。」
「Ah?」
「いろいろありがとう。」


お風呂もありがとう。
お部屋もありがとう。
政宗様にはほんまに俺とってもよくしてもらってるん。
やから言わせてね。
ほんとにありがとう!

へへって笑ったら政宗様も笑ってくれました可愛い!!
政宗様可愛い!!
笑った顔がとっても素敵です政宗様ちょう可愛い!


「真樹緒。」
「んん?」
「中に女中がいる。」
「うん。」
「分からねぇ事があったら聞け。」


ん?
あれ?
俺だけ?


「政宗様は入らんの?」
「…俺は一寸な、」
「…何で?」


困ったように笑う政宗様は俺の頭を撫でながら言葉をにごしてしまった。

何やろう。
ちょっと元気が無くなったみたいなん。
しょんぼりしてもうた感じなん。
ぬん…
聞かんかった方がよかったんかなぁ。
お風呂。
深い事情とかがあったんやろうか。
ちょっとしゅんってなって政宗様を見上げる。
そしたらな、「何て顔してんだ」ってほっぺたをつままれる。


やって。
政宗様がそんな顔するからやん。
何や寂しそうな顔するからやん。
政宗様がそんな顔してるん俺いややもん。


「何でもねぇよ、執務が残ってんだ。」
「……ほんまに?」
「ああ。」


ぶう。
それやったらええけど。
それやったらしょうがないけど。
政宗様が言うんやったら信じるけど。
唇とんがらせたら今度はいつもみたいに笑ってくれた。

あ、ちょっと安心。
ふつうの政宗様や。


「ほんなら政宗様、また後で!」
「よく温まれよ。」


ぐい、って肩を寄せられて。
うん?って政宗様を見上げたら、おでこにちゅって。



「おお?」



あれ?
ちゅう?



「政宗様?」



ちゅう?
何でちゅう。



「目が取れそうだぜ?」



やって。
ちゅう。
政宗様がちゅう、するから。
そのままずっと動けやんくて。
言葉が出んくて。
ちょっと固まってたら今度はほっぺたにちゅって。



「ぬん?!」
「くく、」
「…、政宗様?」
「あんまり真樹緒がcuteな顔するからな、」



思わず手が出ちまったぜ。
なんてそんな事言って笑いながら廊下を歩いて行ってしまう。
手をひらひらふって楽しそうに。
俺はその楽しげな政宗様の背中をぼーっとしたまま眺めて。
眺めて。
眺めて。



……
………



えええ何でちゅう…!


何で今のタイミングでちゅう…!!
いままでお風呂のお話してたはずやのにどこにちゅう要素がまじで…!

やあほんま。
ほんま何でやろう。
何でとつぜん政宗様ちゅうしたんやろう。

ぬん。
あれかな。
スキンシップなんやろうか。
外国とかでほっぺたにちゅってするやつあるやん?
あれと一緒なんかな。
聞こうにも政宗様の姿もう無いんやけど!
ぬーん!

  

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