おシゲちゃんにただいまをした。
ぎゅうぎゅう抱きついてただいまをした。
おシゲちゃんの腕がとっても苦しくってとっても嬉しかった。
何回もゆうた「ただいま」をもう一回ゆうたらもっと腕の力が強くなって、やっぱり優しい声で「おかえり」ってゆうてくれた。
それでも何か足りやん気がしたからおシゲちゃんにくっついたままよじよじ。
前からくっついたからそのまま登って背中によじよじ。
ちゃんと首にぎゅっと腕を回してベストポジション見つけてみました。
ぬん。
おシゲちゃんや政宗様と無事に再会を果たした真樹緒です。
おシゲちゃんの背中からまんぞくげにこんにちは!
「ぬー…おシゲちゃんの背中ひさしぶりー。」
「はいはい、落ちるんじゃないよ。」
「大丈夫!俺背中にくっつくのとくいやから!」
「そんなの自慢できる事じゃないでしょ…って真樹緒。」
「ぬ?」
「お前、もしかしなくても肥えたね…?」
……
………
「ぬ?」
「前より重いよ。」
よっこいしょって言いながらおシゲちゃんが俺を背負い直してくれた。
まだまだ軽いんだけどさ。
でも肉がついたよね。
そんな事言いながらちらっと俺を見上げて来る。
「ぬん、ほら、四国ってとってもぎょかいがおいしくってー。」
ちかちゃんとこで出して貰ったお魚も、元就様の所で食べた貝もとってもおいしくってー。
なんていうかこう、もりもり食べちゃうっていうか。
それにほら、お魚ってヘルシーやからいっぱい食べても大丈夫かなって。
「かなって…」
「お魚以外にも沢山食べてたんでしょう?」
お魚はへるしーかもしれないけど、お魚だけじゃないでしょう?
甘いものとか甘いものとか甘いものを沢山食べてたんでしょう?
俺いつも甘いもの食べ過ぎない様にって言ってるよね?
ご飯が食べられなくなるから控えなさいって言ってるよね?
食べ過ぎは体に悪いからやめなって言ってるよね?
何、向こうのお母さんはそういうの気がついてくれなかったのかな?
「ぬん…」
おシゲちゃんがにっこりわらって明智の光秀さんを見た。
何て言うか笑ってるのに笑ってへん顔で明智の光秀さんを見た。
でも見られた明智の光秀さんも短くなった髪の毛をかきあげてため息吐きながらおシゲちゃんを見て。
「妙な言いがかりをつけないで下さいますか。」
私が目を光らせていても鬼や毛利が、知らぬ間に餌付けをするんですよ。
最中やら団子やら饅頭やらをどこからともなく持ち出しては真樹緒や忍や坊やに与えて行くんですよ。
お止めなさいと再三言い聞かせても堪えないのですよ。
私の所為にされるのは甚だ不本意です。
「それに。」
「何。」
「真樹緒がこうなのは元々奥州の方々が甘やかしていた所為でしょう。」
やれやれ。
ご自分が躾られなかった事をここで持ち出されましても。
私には預かり知らぬ事。
「…は、言ってくれるじゃない近江のお母さん。」
中々痛い所を突いてくれるね。
でもアンタだって真樹緒の、例の椎茸嫌いを直せた訳じゃないんでしょ。
それなのに大きな顔しないで欲しいんだけど。
……
………
「ぬーん…!」
えええええ…!
何!
何でまたおシゲちゃんと明智の光秀さんが険悪なふんいきなんちょっと待って…!
さっき落ち着いたやん。
おシゲちゃんのお話聞く前に落ち着いたやんかちょっと待って…!
しかも今しいたけ多分関係ない…!
何で二人ともりんせん体勢なんこの辺りの空気感こわい!
俺の体重が増えたかどうかのお話やったんちがうん何でにらみあい…!
「あァん?三人幸せそうな顔して食ってやがんだ、いいじゃねぇか。」
何揉めてんだあの二人は。
椎茸だってよォ。
食えなくたってここまででっかくなったんだ、別にいいじゃねぇか。
「その通りよ。」
団子を見せるだけであれの顔が輝くのを知らぬか三傑よ。
明智の目が怖くて長曾我部に遅れを取るなど我にあってはならぬ事。
好き嫌いは感心せぬが、煩く言う程の事でもなかろう。
「やあ元就様!?」
やあやあいつのまにお船に!
さっき海でお別れしてから見当たれへんかったのにいつの間に富嶽に乗ってたんびっくり!
明智の光秀さんとおシゲちゃんのただならぬ雰囲気をさっして助けに来てくれたん?
でも今、ほんまに誰も間に入りこめやんような感じで俺も背筋がぞくぞくしちゃうっていうか!
お母さん同士の会話やし勝手に入り込んだら俺ちょっとしいたけの事もあるしやぶへびになりそうな気がして勇気が出ないってゆうか!
「いや…、伊達の右目を拾いに少しな。」
「ぬ?みぎめ…こじゅさん!?」
「そなたの忍びもな。」
「!こーちゃん!」
もしかしやんでもこじゅさんとこーちゃん!?
元就様連れてきてくれたん!?
「我の船に乗せて奥州に連れてもよかったが、そなたも会いたかろう。」
まじで!
二人とも全然姿が見えやんくって俺しんぱいやったん。
陸にまだおるんかなって思ってたけどここからは見えやんし。
二人とも無事でおった?
元就様を見たら小さく笑って頷いてくれた。
無事も何も無傷よ、って肩をすくめて頷いてくれた。
「ありがとう元就様。」
「じきに着こう。」
暫く待つがいい。
「ぬん…!」
「………ああやだやだ、うちの甘やかしたがりとそっくり。」
好きな物をこれでもかと与えたり甘やかしたり。
なんなの。
もう、お母さんだけじゃなくて余計な物まで連れて来てくれて。
一人で十分だようちには手に負えない真樹緒馬鹿がいるんだから。
「そいつはどこのどいつの事言ってんだァ?成実。」
「ぬ?」
「それこそ俺の背中から真樹緒を引っぺがそうとしてる梵の事だよちょっと何するの母子の感動の再会だよやめて。」
「あれ、政宗様。」
おシゲちゃんがじろっと後ろを向いた。
それと同時に俺の体が浮いて、いつの間にか政宗様にだっこされる。
あれ?って首をひねったら政宗様の笑ってる顔が見えて。
「Ah?俺と真樹緒の感動の再会でmoodをブチ壊した奴に言われたくねぇな。」
返せ。
真樹緒は俺が連れて行く。
「駄目、まだあげない。」
俺がどれだけ真樹緒の事心配したと思ってるの。
道場が大破するぐらい取り乱したんだよ。
いつもいつも独り占めしてるくせに、こういう時ぐらいお母さんに譲ってくれてもいいでしょ。
「Ha!何言ってやがる。」
道場が大破したのはテメェが勝手にキレたからだろうがよ。
昔の血が騒いだかァ?
「…騒いだっつったらどうすんだ。」
「受けてたってやろうか。」
「ま…政宗様…?おシゲちゃん…?」
えええ…
えええまって。
何で今度はおシゲちゃんと政宗様がただならぬふんいきなんちょっとまって。
しかも何かおシゲちゃんがおシゲちゃんやないしゃべり方やったでちょっとまって。
何いまのん、俺の知ってるおシゲちゃんやない…!
「ぬん…」
政宗様に体を抱えられたままそろっとおシゲちゃんを見下ろした。
ゆっくりそおっとこっそり見下ろした。
そしたら見たことも無い顔でおシゲちゃんが政宗様を見てて俺の背筋がびくん…!
おシゲちゃんその顔あうと…!
奥州のお母さんとしてほんのちょびっとあうと…!
「あにいってんだおめーら。真樹緒はやらねーぞ。」
真樹緒はおれさまのもんだ。
かってにもってくんじゃねー。
……
………
「ぬ?」
「さっさとこい真樹緒。」
おれさまあいつきにくわねー。
おかみのかみをきりやがったやつだからな。
……
………
「ぬ?」
あれ?
むさし君?
むさし君いつの間におったん?
いつの間に俺や政宗様やおシゲちゃんの背後にきたん?
あれ?
いつの間に俺の体、ひょいっとだっこしてるん?
俺今まで政宗様に脇かかえられてたんやけど…!
何で俺今むさし君にひょいっと担がれてるんザビー教のデジャヴ…!
ていうかむさし君、俺ちょっと空気読んでほしかったなやっておシゲちゃんと政宗様の視線が痛い…!
「ちょっとそこの坊や、うちの真樹緒をどうするつもり。」
「おい糞餓鬼。誰の真樹緒だって?」
聞き捨てならねぇなあ。
もう一遍言ってみな。
「あー?なんどでもいってやらー。真樹緒はおれさまの真樹緒だ。」
おににもさんでーにもおしのびにもやるつもりはねー。
もちろんおめーらにもだ。
おかみはおかみだからゆるしてやる。
おかみはみんなのおかみだからな。
……
………
「むさし君何か男前やけどでもちょっとそれ違う…!」
ぬーん!
俺!俺!今までちかちゃんのところでおったけど実は奥州がおうちってゆうか!
長い間お留守にしてたけど、本当は奥州がじっかってゆうか。
そのじっかに何にも言わんと出てきたから怒られて、明智の光秀さんの髪の毛も俺の責任ってゆうか俺が悪いんやからおシゲちゃんと政宗様にお船のオールかまえるんやめて…!
今はほら、その家族との感動の再会やったってゆうか。
感動の再会やったけどぬん、でもちょっと険悪やったけど、ほんまは感動でやあ。
この後は奥州のおうちに帰るからあんまりおシゲちゃんと政宗様を刺激しやんでほしいんやけど…!
「あーん?しゃべんな真樹緒したかむぞ!」
「俺のお話聞いてむさし君…!」
片手でかつがれると俺のお腹へのダメージはんぱないってゆうか!
ここで俺が逃げると更にあそこのふんいきも悪くなるってゆうか!
「待ちな坊や!真樹緒を返して貰おうか!」
ちょっと梵!
あの子の足止めて俺が真樹緒を取り返すから。
「おめーにぼーやなんていわれるすじあいねー!」
「この糞餓鬼がァ、竜を怒らせると痛い目見るぜ!」
「うるせーあおいの!」
「Ah―ァ!?誰が青いのだてめェ!」
てめぇが餓鬼の足を掬いやがれ成実!
俺が真樹緒を受け止めてやる!
「はァ!?」
「Ahァ!?」
「もうすでにふんいき悪い…!」
……
………
「「明智。」」
「何です人を坊や担当の様な目で見ないで下さいますか。」
鬼も毛利も私を何だと思っていらっしゃるので。
そんな生ぬるい目で見られる謂れはありませんよ。
「貴様母親であろう。どうにかいたせ。」
あれがあれでは連れて来た我らの品格が疑われよう。
甚だ不本意よ。
「坊主を止められんのはオメーだけだろうよ。」
おら、あいつもかーちゃんの言う事なら大人しく聞くだろうしよ。
ここはオメーががつんと言ってやれって。
「物事には出来る事と出来ない事と、出来ても関わってはいけない事があるんですよご存知で?」
あれは後者です。
坊やと真樹緒の問題ならいざ知らず、奥州の三傑や独眼竜となど誰が関わり合いになりたいと思いますか手に余ります。
「ぬーん!明智の光秀さああああん!むさし君とめてええええー!」
俺なんか酔うてきたー!
きもちわるいー!
……
………
「お呼びだぜ?」
「名指しぞ。」
「…どなたもこなたも。」
「ぬーん!頭がくがく…!」
むさし君が俺を担ぎながらお船を走り回る。
後ろからおシゲちゃんと政宗様が追いかけて来るけどそんなのお構いなしにむさし君が走る。
俺が止まってってゆうてもお耳に入ってへんくって走る速さはそのまんま。
俺はもう頭も体もがくがくで。
ずっと続く揺れにがくがくで。
酔いがさいこうちょうなんやけどそろそろ止まってほしいんむさし君…!
ていうか止めて欲しいん誰か!
ぬん!誰か!
明智の光秀さん!
近江のお母さん…!
明智のお母さん…!
たすけて…!
「…全く、」
頭がぐるぐる回るはしっこで、明智の光秀さんがこっちにくるのが見えた。
俺が伸ばした手をため息吐きながら掴もうとしてくれるのが見えた。
俺はチャンスを逃さん様にしようって、絶対あの手を掴んだら離さんようにしようって決心しながらでも頭はぐるぐる。
やあもう、ちょっとほんまどれが明智の光秀さんかもよう分からんけど俺がんばる。
やってここで明智の光秀さんとこに行っとかな絶対俺吐くし…!
今すでにもう気持ち悪いし…!
頭も眼もぐるぐるぐるぐる。
もう無理!
もう限界!ってなった時、急にむさし君が止まった。
「ぬ…?」
どん!って大きな音を立てて何かにぶつかって、思いっきり跳ねかえった。
「ってえなんだ!」
跳ねかえったむさし君が俺を抱えて甲板をころがる。
でもちゃんと俺を腕の中にかばってくれて、俺は衝撃なんていっこもけえへんまんまそおっと辺りを見渡した。
「ぬん…」
やあむさし君どうしたん。
何にぶつかったん。
けがない?
大丈夫?
聞きながらもぞもぞむさし君の腕の中から抜け出した。
ぎゅってしててくれた腕を外してむさし君の顔を覗きこんで。
それからゆっくり顔を上げて何にぶつかったんやろうって回りを見て。
そしたらそこには。
「…何やってんだ、真樹緒。」
そこには。
そこには!
「っこじゅさん…!?」
ちょっと髪の毛が乱れて。
ちょっと着物がぼろぼろになって。
ちょっと顔が土で汚れた。
でも、でも、でも!
懐かしい顔で笑うこじゅさんが。
こじゅさんが…!
「お前って奴は、どれだけ俺達に心配をかけりゃあ気が済むんだ。」
こじゅさんが…!
「あれは…」
「…竜の右目ぞ。」
「くっくっく、先を越されちまったなぁ、明智。」
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という事で再会してひとまずアプ…!
うわーん長い!
ギャグってどういう風に書くのかな、なんてもだもだして書いたのであんまりギャグでもないかもしれませんが、少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
それにしても人がたくさんいると会話ばっかりになってダメですねはんせい。
中々進んでくれませんでした。
最後小十郎さんと一緒に小太郎さんも来ています。
次回それも含めて続きを書けたらいいな。
今回もっと落ち着いて明智さんが髪の毛切ったあたりのくだりを入れたかったのですが、無理でた無念です。
「短くなっちまったなぁ…」
っていう会話したかったのですけれども…!
ではでは本日はこのあたりで。
最後までご覧下さってありがとうございました!
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