おシゲちゃんが富嶽へ向かってムササビみたいに飛んで行った。
その姿が確認できやんぐらいの速さで飛んで行った。
もうほんまにその影がムササビに見えたくらいの勢いで飛んで行った。

飛んで行って明智の光秀さん狙いで一直線、海の中からは全然その様子が全く見えやんくって富嶽の上が今一体どうなってるんか想像もつきません真樹緒です。
こんにちは…!


…ま、政宗様おシゲちゃん…
…俺に止められると思うなよ。


止められるとしたらお前だけだろうが、そう簡単には止まらねぇなあれは。


ぬーん!


えええどうしよう!
どうしよう何でおシゲちゃん明智の光秀さんに向かって飛んでったんやろうおシゲちゃんと明智の光秀さんって初めましてやなかったっけ!
初めましてであれはちょっと明智の光秀さんもびっくりしてしまうんやないかって俺は思うんやけどどう思う政宗様…!

俺、明智の光秀さんにはとってもお世話になっててね。
実は近江のお母さんでね。
おシゲちゃんや政宗様にこれからお話しやなあかん事の中にその近江のお母さんの事もあるんやけどね。
ていうかまずお話聞いてほしくってね!


「政宗様はやく俺らも富嶽いこう!」


政宗様の肩をゆすってお願いする。
遠い目をして俺と目を会わせてくれない政宗様の顔を両手でつかんで、ゴキっとこっちに向けてお願いする。
やってほら、もう何かよだんを許さないふんいきやから。
上で何が起こってるんかほんま想像がつかへんから。
おシゲちゃんの飛びっぷりからしてじんじょうやないから。

ぐえっ、って政宗様から今まで聞いた事無い声が出たけどぬん、それはごめんねってちゅってして許して貰って。


「政宗様、はやくはやく。」
「早くっつってもなァ?」


まずは船にでも上がらねえとどうにもならねぇぞ。

政宗様が首をさすりながら俺を抱えて辺りを見渡した。
木の残骸や折れた矢、葉っぱなんかがあちこちに浮いてるけど足場になるもんが無いからこのまんまやったら俺らがふやけてしまうだけなんやって。
さっさと海から上がらんとあかんねんて。

ぬーん。
そうよねー、政宗様と再会の感動を分かち合ってた時はテンション上がってそんなに気にならんかったけど、まだ海の水冷たいしね!
早く海から上がった方がいいよね!


「でも、そうなったら元就様のお船に迎えに来てもらわないとー…」
「…毛利元就か。」
「ぬん、政宗様も知ってるん?元就様。」
「中国を治めている智将だろう。」


知らねぇ奴なんざいねぇよ。
冷血非道、冷酷無情、人を人とも思わねえ奴だと聞いていたんだがな。
それ故に完璧な智略を以って戦に臨むと言う。


「ぬ?元就様とっても優しいよ?」
「Ahァ?俺よりもか?」
「えー?政宗様とおんなじくらい?」
「聞き捨てならねぇなsweet。」
「やあ政宗様、もうちゅうは後で!」


ぬん!
今はほら、おシゲちゃんと明智の光秀さんが心配やから!
離して政宗様。
ちゅうしてる場合や無いんよ、もう。
やあそりゃあね、政宗様からのちゅうは嬉しいけどね。
ほら俺今ちょっとおシゲちゃんと明智の光秀さんの事で頭いっぱいやから。


「ちゅうはあとで。」


ほんでもってお船さがそう。
俺らを乗せてくれるお船さがそう。
元就様のところのお船やったら富嶽の近くまで行ってもらえるし、富嶽におる海賊の兄やんらに頼んで富嶽に乗せてもらえると思うから。
俺のほっぺたやおでこ、首にちゅうしてくる政宗様にどうにか対抗しようとして腕を動かしてみる。
けど政宗様はそんな俺が暴れるのもなんのその、両手をぎゅってして俺を閉じ込めてしまう。
閉じ込めてしまって笑いながら涼しいお顔するん。
俺あとでってゆうてるのにやで!
もう政宗様!


「どういった経緯で毛利を懐柔したのか吐いたら離してやるぜ。」
「かいじゅう?」


何、かいじゅう。
怪獣?



……
………



かいじゅう?
その可愛い顔で落としたんだろうよ、くっそcuteだな。
真樹緒が可愛らしくて許されるのは真樹緒だけぞ。


貴様のその花畑の様な頭まで容赦されると思うたら大間違いよ。
さっさと真樹緒から離れるがいい奥州の荒竜が。


「元就様!」
「Ahァ、?」
「元就様、俺らをお助けにきてくれたん?」


ぬん!
うれしい!
俺が政宗様からのちゅう攻撃から逃げながら海の上をじゃばじゃばしてたら頭の上から声が聞こえてきて。
それはとっても聞きなれた元就様の声で。
いつの間にやってきたんか元就様の乗ったお船がすぐ近くにおって。
いつもよりちょっぴり細い目で俺と政宗様を見下ろしてたん。


「元就様ちょうぐっどだいみんぐやで!」
「…真樹緒、はよう乗れ。」


上は待ちかねておるぞ。
そなたが船から飛び下りて長曾我部、明智の身の毛がよだっておるわ。


「ぬん!」


元就様が手を伸ばしてくれる。
お船に引き揚げてもらおうと思って俺も手を伸ばしてみたんやけど。


「真樹緒、掴まってろ。」
「わ、あ!?」


政宗様が俺を抱えたまんま船に上がった。
小脇に抱えてひょいっとお船に上がった。
元就様の手を掴み損ねて体がぐらっとする。
せっかく元就様が手を伸ばしてくれてたけど掴めやんまんまお船の上に上がってしまってやあ。


「…貴様。」
「あんたの手は必要ねぇよ。」


触るな。
俺のだ。


「…不遜な。」
「元就様?政宗様?」
「何でもねぇ、無事か真樹緒。」
「うい、体が動きにくいけど大丈夫やで。」


ありがと!
今まで足元がふわふわしてたぶん、急に重たくなった感じが変やけど平気。
足の先もちょっぴり冷えてて感覚が無いかんじするけど動くし大丈夫。
ほら政宗様、見て、足真っ赤。
海の水とっても冷たかったもんねえ。
政宗様は大丈夫?
中におった時はそんなに感じへんかったけどやっぱり海から上がったら寒いね。



「なあなあ政宗さま、」



「Ha…真樹緒が随分世話になったな。」


礼を言うぜ毛利元就。


「…貴様に礼を言われる理由は無い。」


我の意思ぞ。


「真樹緒はうちの可愛いkittyなもんでなァ?」


礼は丁重にしねぇといけねえだろう。
奥州筆頭として重々に御礼を申し上げるって奴だ。


「甚だ不愉快よ。」



「政宗様?元就様?」


ぬん?
どうしたん?
何でそんなに見つめあってるん?
見つめあってるだけやのに何で二人ともそんな怖い顔してるん?
さっきもそんな感じやったやんね?
ぬ?
なにごと?


「真樹緒、行くぜ。」
「政宗様?」
「真樹緒、着てゆけ。」


すぐに我も追おう。


「元就様?」


あれ?
うん?
ぬん、着物ありがとうあったかいん。
やあでも俺のお話スルー?
政宗様とさっきの一瞬の内に何があったんかはスルー?
ていうか政宗様、富嶽に行くってゆうてもここからやったら海賊の兄やんらも呼べやんよ。
もっと近づいて行かんと無理やと思うんやけど、俺。


「飛ぶぞ、真樹緒。」
「え?」


政宗様、って政宗様を呼んだ時には俺と政宗様の体はもう元就様の船から随分離れた所にあって、富嶽の突き出た大砲の上にとん、って着地。
その高さにびっくりして思わず政宗様の首にぎゅってしがみついたら今度はそこを踏み台にしてもうちょっと上にある鬼のお顔みたいな所へ政宗様が飛んだ。


「政宗様高いん…!」
「落とさねぇよ。」
「分かっててもやっぱり怖い!」
「お前さっき飛び下りてたじゃねぇか。」


俺へ向かって。


「ぬん、でもあの時は政宗様しか見えてなかったから。」


再会のテンションで政宗様しか見えてへんかったから。
やから別に高さも気にならんかったってゆうか。
そんなに高いと思わんかったってゆうか。
今見て初めてその高さに気が付いたってゆうか。


「なら今も俺を見てりゃあいいだろう?」
「政宗様を?」


見てるん?


「逸らしてる暇なんざねぇぜsweet?」


俺のお鼻にちゅってちゅうをして政宗様がまた飛び上がる。
鬼のお顔からその上の大砲へ。
一番真ん中にある一番大きな大砲へ。
大砲に着地したらもっと大きく飛んで今度はお船の甲板が見えた。
俺はまた体が浮いたもんやから政宗様にくっついて。
政宗様に言われた通り政宗様を見てたんやけど、でもそこから見えるちかちゃんや明智の光秀さん、おシゲちゃんが気になったから目は政宗様から甲板へ。



ぬん、ほんなら。
ほんなら。



その腹真樹緒と同じ様にグッチャグチャにしてやるよ!


よくもうちの子達の腹を斬ってくれたね。
あんたの相手は梵達だったはずだろう。
何、抵抗の出来ない真樹緒を狙ってんだって話だよ覚悟は出来てるんだろうね。
五体満足でいられると思ったら大間違いだよ。




……
………




ぬーん!


お、おシゲちゃんが!
おシゲちゃんが!
奥州のお母さんなおシゲちゃんが…!
きらりと光る刀で明智の光秀さんに襲い掛かってるところでした待っておシゲちゃん俺、お腹ぐっちゃぐちゃになってへんから!
斬られてお腹痛かったけどぐっちゃぐちゃにはなってへんよ大丈夫やから!


もう治ったし!
全然全く痛くないし!
俺もこーちゃんも無事やから!
やからちょっと待って!


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長くなったのでわけわけしてアップします。
前半イチョイチョしていたので入らなかったという…!
お母さん達の拳と拳のぶつかり合いは次回に持ち越しますすみませ!

  

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