とっても温かなお昼下がり。
とってもまったりなお昼下がり。
青いお空に白い雲、吹いてくる風はちょっぴり冷たいけど頭のてっぺんで輝いてるお日様がきらきらしてるから全然寒く無くってそんなお昼下がり。
厳島の綺麗な鳥居と海が見渡せる神殿の中で、元就様へって持って来たお土産のおにぎりを皆で頂いてますー。
もぐもぐいただいてますー。
真樹緒ですこんにちは!


やあやあ昨日は知らん間に寝てたみたいでやあ、俺ほぼ記憶が無いん。
目が覚めた時は自分のお布団におって、もうとっても高くなったお日様が窓から見えて、あれ俺昨日どうしたんやっけって首をちょっこり捻ってみたんやけど全然思い出せやんくって。
瞬き三回、あくび一回、腕を伸ばして伸びも一回。
お布団を片付けて顔を洗うお水を貰いにお外に出て、お隣のお部屋にいるはずの明智の光秀さんの所へ行ってね。


「ようやくお目覚めですか。」
「寝すぎじゃねぇか真樹緒よう。」


目がとろけちまうぜ。


「おはよう明智の光秀さん!ちかちゃん!」


やあやあとってもぐっすり眠っちゃって!
実は早起きして日の出を見ようとか思ってたんやけど全然無理で!
今もうどれぐらいやろう?
きっとお昼前ぐらいやと思うんやけどやっぱり起きたてやからおはようございますってけらけら笑うちかちゃんと、ため息を吐く明智の光秀さんとおはようのごあいさつ。
それから昨日俺どうしたっけ?って聞いてみたんやけどちかちゃんは笑ったまんまで、明智の光秀さんはさっきよりももーっともーっと深いため息ついてお目目を逸らすん。


あーれー?
何で逸らすん。
俺昨日の事聞いただけなんやけど。
普通に聞いただけなんやけど。
目を逸らしたまんま教えてくれへんかったん。
ごちそう食べてたとこまでは覚えてるけど、何か甘いジュース飲んだ後から記憶がさっぱり無いのよねー。
ふしぎ。


「むさし君、むさし君、おにぎりいかが?」


少しぐらいなら食べれそう?
それともお水飲む?


「…うるせー真樹緒…しゃべんなはらにひびく。」
「ぬん。」


俺が首を傾げてもだーれも何にも教えてくれへんくって、ほんならここはむさし君に教えてもらおう!ってなってね。
ほら、むさし君って何でもお話してくれるやん?
聞いたら教えてくれるやん?
やから今回もむさし君やったら昨日の事教えてくれるかなーって思ってお部屋に行ったら、お布団の中でうずくまるむさし君を発見しちゃってー。
うんうんうんうん唸ってるむさし君を発見しちゃってー。


「…宿酔ですね。」
「あんだけ飲んでりゃあな。」
「しゅくすい?」
「昨日飲んだ酒がまだ残っているんですよ。」
「…あれやあ。」


ぬーん。
二日酔いってことやろうか。
確かにむさし君、お酒やらご飯やらいっぱい食べてたもんねえ。
でも飲んでる時は普通やったような気するんやけど。
全然酔って無いような感じやった気するんやけど。


「うるせーおまえらでていけ。」


あ、真樹緒はここにいろ。
おかみもいろ。
おれさまをかんびょーしやがれ。
おにはじゃまだどっかいけ。


「あアん?」
「おれさまはおかみと真樹緒がいりゃーいい。」


なんて言うむさし君はいつもの元気が全然なくって俺の腰にぎゅってくっついたまんま動かへんようになっちゃって。
お膝に顔を押し付けたまんま動かへんようになっちゃって。
とりあえず二日酔いにきくってゆうウコン?っていうショウガみたいなやつ(ちょう苦いんやって!むさし君が飛び上がってたよ!)を粉にしたやつを飲んでもらって安静にしてるん。
一日寝てたら治るよって明智の光秀さんもちかちゃんもゆうてくれたんやけど、丁度良いタイミングで元就様がやってきてね。


「真樹緒、神殿へ参るぞ。」


ついて来るがいい。


厳島神社を案内してくれるってゆうから俺、むさし君をお布団に戻そうと思ったら「おれさまもいく」ってついて来てしまったのよねー。
ぬーん。
動くのも辛いはずやのにー。
でも行くってゆうてどうしても俺から離れてくれやんから、いつもの半分ぐらいのゆっくりさで歩いて神殿までやって来たん。
そんでもって今は神殿の中を見せてもらった後のお昼のごはんタイムで俺らはおにぎりもぐもぐ食べてるんやけど、むさし君は全然食欲が無いみたい。


「おうおう小僧、昨日の威勢はどうしたよ。」
「うるせーおに。」


ちかよるな。
わらうな。
うるせー。
だまれ。


むさし君がのそっと首を上げてちかちゃんを睨む。
ちかちゃんは笑ってむさし君の頭をちょーんって小突いたりして楽しそうなんやけど。


「ぬーんちかちゃん、むさし君をあんまりしげきしないであげてー。」


ほんまに辛そうなん。
俺、二日酔いになった事無いから分からんけど吐き気とか頭痛がして動けやんねんて。
あのむさし君が動けやんってよっぽどやで!
やからそおっとしといてあげて欲しいん。


「ふん、加減が出来ぬのなら飲まねば良いものを。」


己の限度も分からぬのか。
流石小童よ。
まだまだ若いわ。



……
………



…あんだと?
元就様?


ぬん?
あれ?
元就様。
ちょっと元就様。

そんな涼しいお顔でむさし君を刺激しないでほしいわ俺。
むさし君今二日酔いでとっても気が立ってるんやけど。
とっても気持ちが悪くて気分も絶好調に悪いらしいんやけど。
ついさっきちかちゃんにもお願いしたんやけど…!


「真樹緒、こちらへ来い。」


菓子を用意させた。
口だけの小童など放っておくがいい。


「ぬーん元就様!」


元就様、俺、むさし君を刺激しやんでね、ってお願いしたのに!
たった今お願いしたのに!
そんな涼しいお顔で手を振らないで!
そりゃあお菓子のお誘いはとっても魅力的やけど俺今はむさし君の背中を撫でてあげたいってゆうか!

頬杖ついて手招きする元就様は何だか楽しげでちょっと意地悪に笑う。
おにぎりをもぐっと食べながら、むさし君を見て笑う。
ほんなら俺のお膝で寝てたむさし君がゆらっと起き上がって元就様の方をすんごい視線で睨んじゃって。
見た事も無いくらい眉間に皺寄せてむさし君の周りの空気も何だかまっ黒けってゆうか。


「む、むさし君…?」
「…もういっかいいってみろさんでー。」


おれさまのどこがくちだけだっつーんだ。
げんどなんてねー。
さけなんてみずみてーなもんだからな。


「何度でも言ってやるわ。」


口先だけの小童が。
己の飲んだ酒に飲まれて宿酔とは片腹痛い。
腕が震えておるぞ。
真樹緒を煩わせるな。
室で寝ておればいいものを。


「…てめーさんでーききずてならねー。」


さけはおれさまがのんでやったんだのまれてねえぞ。
しょうめーしてやらあ。
かかってきやがれ!


「かえりうちださんでー!」
「ふ、その言葉後悔するでないぞ。」



……
………


えええええちょっと待って二人とも…!


何で。
何で元就様武器持ってるんどこから出したんさっきまでおにぎり食べてたやん…!
むさし君かってさっきまで俺のお膝でダウンしてたんちがうんそんな飛び上がって大丈夫なん吐き気は…!
ていうかここ神殿なんやからそんな事したらあかんと思うよ多分!
ぬーん二人とも待って!


「…あいつァ、本当に単純だな。」
「ええ全く。」
「明智の光秀さん!ちかちゃん!そんなまったりしてやんと…!」


折角ののどかなお昼下がりやったのに一気にそんな雰囲気どこかに飛んでいってしまったやんか。
俺、皆でおにぎり食べててとっても楽しかったのに。
むさし君もじっとしてた方が絶対二日酔いにもいいのに。
もーう!
元就様がむさし君の事しげきするから。


「心配すんなって。」


毛利もあれで小僧の事は気に入ってんだ。
ひでー事はしねェよ。
ちかちゃんが親指をぐっと立てて笑うけど。


そんなほっぺたにお米つぶつけたままイケメンに笑われてもー。


どやっとキめられてもー。
俺のしんぱいはつきないってゆうかー。
ぬーん。
何だかデジャウ。
ずっと前に政宗様にブリ大根の大根を大根サラダな大根に斬られた時のデジャウ。
あの時も俺こんな気持ちになったんちょっぴりせちがらいー。

おれ心配なん。
そりゃあ元就様も本気は出せへんって俺信じてるけどやあ。


「あン?」
「ほっぺ、お米つぶついてるよちかちゃん。」


こっちか?
ううん、はんたい。


「ああ?どこだ。」
「取ってあげる。」


お口よりもとっても遠い所についてるよどんな食べ方したんー。
ちかちゃんの食べ方はごうかいねー。


「取れたよ、はいちかちゃんぱくっとどうぞー。」
「おう。」
「真樹緒、あなたの頬にもついてますよ。」


鼻にもついていますよ。
鬼の事を言えませんよ。
一体どんな食べ方をしたら鼻っ柱に米粒が付くのか。


「ぬ?」


明智の光秀さんが俺のお鼻とほっぺたをするっと触ってお米つぶを取ってくれる。
ふう、ってため息を吐いてあったかいお茶も持たせてくれて。
毛利と坊やの事よりも、なんてそんな事ゆうん。


「真樹緒。」
「はい?」
「これからの事を少しお話します。」
「…?はい、」


俺のお隣に座って髪の毛をかきあげて、海を見てた明智の光秀さんの目が俺の目とぱっちり合う。
それからとっても真面目な顔で。


「私達は明日より四国へ戻り、それから海沿いに奥州を目指します。」
「奥州?」


甲斐やなくって?


「事情が変わったんですよ。」
「ぬ?」
「豊臣が動いています。」
「とよとみ…」


明智の光秀さんが言うにはね、何や豊臣さんっていう所が政宗様の所を狙ってるかもしれやんのやって。
ぬん、奥州。
まだ詳しくは分かって無いらしいけど、それが一番可能性が高いんやって。
それでね、政宗様が明智の光秀さんと戦った後甲斐にいてたはずなんやけどどうやらその豊臣さんが動いてるから奥州に戻ってるみたいなんやって。
それでもしかしたら豊臣さんと政宗様達がかちあってしまうかもしれやんのやって。
やから甲斐に戻るより、直接お船で政宗様を追い掛けた方が早いって。


「…政宗様大丈夫かなあ。」
「心配すんな真樹緒。」


俺がいるだろう。
この鬼がついてんだ、百人力よ!


「ちかちゃん…」


ちかちゃんが俺の頭を撫でながら笑う。
大丈夫だ大丈夫だって言いながら笑う。
ぬん、俺かって、ほら、政宗様強いし、こじゅさんも強いからそんなに心配してる訳ちがうけど。
でも全然政宗様に会って無いからやっぱり心配やなってゆうんがあって。
もちろん甲斐の皆の事も気になってて。


「そんな顔をするんじゃありませんよ。」
「明智の光秀さん…」
「あの竜がこんなところで倒れるものですか。」


まだその目であなたの無事も確認していないのに。


「そうやけど…」
「毛利の水軍も共に来ます。」
「元就様?」
「…あなたの事が心配でならないそうで。」
「まじで!」
「後で礼を申し上げなさいよ。」
「はい…」


ですのでよもやの事があっても心配は無用。
あなたは戻った時の事を考えなさい。


明智の光秀さんが笑いながらおにぎりをもぐっと食べる。
腹ごしらえをして備えなさいなんて簡単に言っちゃってむさし君と元就様の闘いをのんびり眺めたりしてる。
ちかちゃんも何だかごろっと寝転んだりしてくつろいじゃって。


「ぬん…」


そしらた一人でそわそわしてる俺が俺らしくないなって思えてきて。
こんなにおろおろしてても仕方ないよねえ、って俺ももう一個おにぎりをぱくん。


そうよね。
政宗様と豊臣さんが偶然出会うにしたって確立は低いよね。
そんなうまいこと当たる訳ないもんね。
当たったって政宗様とこじゅさんおるから大丈夫よね!
ぬん!
今俺がここで心配してても何にも始まらんし、やあやあここは政宗様と再会した時の事を考えるのが一番よね!


「あ、おみそ。」


ぬんっと気持ちも新たに食べたおにぎりの具はちょっぴり大人の味のねぎみそでした。
やあやあ味がしっかりしててうましー。
形がちゃんとした三角やから明智の光秀さんが握ったやつかしらー。
お母さんのおにぎりうましー。


「政宗様に会ったらまずはぎゅうよねー。」


感動の再会をわかちあうよねー。
政宗様に飛び込んでいって、ぎゅってしてもらって、お名前呼んでもらって。
んー…もし誰も見てへんかったらちゅうもしてくれるかもね!
ほらお久しぶりやし。
感動の再会やし。
ちょっとぐらい甘えてもいいよね!


「それからこじゅさんにも飛び込んでいってー。」


希望はあの素敵な背中やけど、でもここは真正面から頑張りたいよね。
あの筋肉を満喫したいよね。
指を一本ずつ折りながら政宗様とこじゅさんにやってもらうリストの作成。

あれと、これと、それと。
ちょっと楽しくなってきて指が足りやんようになってきた時、お仕事してたこーちゃんが帰ってきた。


「(しゅた)」
「あ、こーちゃん。」


あれもう神殿の見回り終わったん?


「(こくり)」
「ごくろうさまー。」


お疲れさまー。
ちょっと遅くなったけどお昼ごはん食べてね。
おにぎり。
俺らがつくったおにぎり。
あと半分ぐらいしかないけどどれ食べる?
おみそおいしかったよ?


「(ふるふる)」
「ぬん?」


どうしたん?
じっと俺を見て。
こーちゃんも俺と一緒に政宗様らと再会したらやってもらうリスト作る?
こーちゃんもお久しぶりやもんね!


「(ふるふる)」
「う?」


なあに?
ほんあらどうしたんこーちゃんそんな真面目な顔しちゃって。
何でか神妙な顔しちゃって。
もうすぐ政宗様達に会えるんよ?
嬉しくない?


「(……)」


俺が首をかしげたらこーちゃんの口がゆっくり動く。
ぱくぱく動くのをゆっくり目で追って、こーちゃんが何を言いたいのか読み取ってみる。
ぬんぬんこーちゃんゆっくりお願いね。
こーちゃんの思ってる事やったら結構分かってるつもりの俺やけど、やっぱり直接お話ししてくれた事は聞き逃したくないもんね。


「(ぱくぱく)」
「お、う、しゅ、う、の?」
「(ぱくぱく)」
「は、は、」
「(こくり)」
「ぬん…」


おうしゅうのはは。
奥州の母。
って事はつまり奥州のお母さん。
おシゲちゃん。
そう、おシゲちゃん。



……
………



っは…!おシゲちゃん…!
「真樹緒?」
「どうしたい。」


いやいやいやいや。
ぬんぬんぬんぬん。
ちょっと待って。

ちょっと待って俺とっても大事な事忘れてた。
えーっと近江のお屋敷までは覚えてたんやけど、今の今までとっても大事な事忘れてた。

おシゲちゃん。
奥州のお母さん。

政宗様と一緒に甲斐におるってさっちゃんがゆうてたような気がする。
そんでもってとっても、とーっても怒ってたってゆうてた気もする。
尋常やないってゆってたような気もする。
近江のお屋敷の時点でそうやったらあれ、俺なんかもう四国までやってきてしまってるし、帰るのがとっても遅くなってしまってるし、これは怒られるどころやないんちがうん俺…!
のほほんと感動の再会とかゆうてる場合違うんちがう俺…!



「こーちゃん…!」


どうしようおシゲちゃん絶対怒ってる。
ちょう怒ってる。
俺の想像が追いつかんぐらいに怒ってる。
おシゲちゃんにはちょう会いたいけどちょう怖い…!
涙が出そうな目でこーちゃんを見上げたのに。



……
………



「(なでなで)」
ぬーん…!


そんなちょっぴり残念そうなお顔で頭撫でたらいや…!
俺分かってるねんで。
こーちゃん前髪隠れてるけど今、怒られるんはしょうがないよってゆうお顔したやろうばれてるよ!



とっても穏やかなまったりお昼下がり。
けれど俺はもうまったりなんて気分にはなれやんくって。
おにぎりも喉が通らん様になってもうて。
政宗様やみんなに会えるのはとっても嬉しいはずやのに、何だかさっきから背中の寒気が止まりません真樹緒です…!


--------------

という事で何でも無い二日酔いのお話でした…!
次のお話までのちょっとしたワンクッションとしてご覧下さると幸いです。


次回はすでにお船の上で、再会が近いというのに何だかテンションが下がったりのキネマ主と、その原因についてお話して。
更には早々に政宗様達を発見してもらえたらと思います。

それか書いていて流れがおかしくなりそうになったら、お久しぶりの政宗様サイドから。
案の定豊臣さん達とエンカウントしております。

まいていきたいですまいて。
再会の所が書きたくてしょうがなくてうずうずしておりますわたし。
頑張ります…!

ではでは最後までご覧下さってありがとうございました。

  

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