「鬼、」
「あん?」
「あなたと毛利も大事なお話がおありでしょう。」
明智の光秀さんがちかちゃんと元就様を代わりばんこに見た。
俺もまねしてちかちゃんと元就様を見る。
ちかちゃんはにや、って笑って。
元就様はふん、ってため息。
明智の光秀さんは俺と目が合うとちっちゃく頷くし。
ぬーん、俺だけ何だかおいてけぼり!
明智の光秀さん、そのアイコンタクトの意味俺よく分からんのやけど!
お説教かくごしておきなさいとかやったらちょう怖いんやけど!
「真樹緒。」
「はい?」
「厳島への来訪、心より歓迎する。」
「元就様?」
「今宵は宴を設けている。」
楽しむが良い。
それまでゆるりと足を休めておけ。
部屋を用意している。
我も後に顔を見に行く故。
「おにぎりは?」
「夜に。」
「ぬん、待ってる!」
ちかちゃんと大事なお話あるんよね!
ぬんぬんおっけー俺待ってるよ!
むさし君とこーちゃんと明智の光秀さんと待ってるよ!
明智の光秀さんとお話もあるし!
ちょっと怖いけど!
「、神社見に行ってもいい?」
「案内させよう。」
「ありがとう元就様!」
本当はここでもう一回元就様にぎゅってしたかったんやけど。
ありがとうを思いっきり伝えたかったんやけど。
やあほらご招待ありがとうとか。
宴の用意ありがとうとか。
お船もありがとうとか。
たくさんのありがとうを伝えたかったんやけど明智の光秀さんに捕まってしまっててそれも出来やん感じやから元就様の手をぎゅう。
ぎゅうってにぎってぶんぶんぶん。
ありがとう元就様。
本当にありがとう。
「ちかちゃんもお話終わったら一緒に神社見に行こうね。」
「待っててくれるのかい。」
「皆で見た方が楽しいから!」
「ありがとよ!」
ぬん!
俺の頭をがしがし。
笑いながらがしがし。
「俺、元就様も一緒がいいな。」
「…善処しよう。」
「お願いしますー。」
厳島神社のみどころたくさんおしえてね!
元就様も俺の頭をがしがし。
ちかちゃんよりもちょっぴり優しく、でも笑いながらがしがし。
「おれさまも真樹緒をなでる。」
そうそうむさし君も、って。
「ぬ?」
……
………
「おれさまも真樹緒をなでる。」
「ぬ?」
ええ?
ちょっと待ってむさし君その手なに。
わきわきわきわきってその手なに。
撫でてくれるんは嬉しいけどそれ撫でる時の手ちがうよねわきわきしてるでむさし君…!
むさし君がひょっこり現れて俺の頭に手を伸ばす。
ふつう撫でるってこう、手で優しくあれすると思うのにむさし君はわきわき動かしながら手を伸ばす。
えええむさし君ちょっとそれ何か痛そう…!
「にげんな真樹緒!」
「やってー!」
「どけおに、さんでー、真樹緒はおれさまがなでる。」
……
………
「誰がさんでーか貴様…!」
そこになおれこの無礼者が性根から叩き直してくれるわ!
むさし君がちかちゃんと元就様の手をはたきおとす。
べちっと思い切りはたきおとす。
はたき落とされたちかちゃんは何だか面白そうに笑ってるけど、元就様がちょっとごきげんななめ…!
だいじょうぶ元就様けっこうな力ではたき落とされてたよ!
「落ち着きなさいよ毛利。」
坊やの言う事を一々真に受けていてはこの先持ちませんよ。
これは私がお預かりしますからどうぞ貴方がたは先達てのお話を。
「おかみはなせ!」
おれさまは真樹緒のあたまをなでる!
さんでーにおくれをとってたまるか!
「はいはい、後ほど頭が擦り切れるぐらい撫でてやりなさい。」
「えっ、それはちょっと俺いやかも…!」
すりきれるのはいやかも…!
撫でてもらうんはとっても嬉しいけど頭すりきれるのはちょっとえんりょしたいってゆうか!
むさし君ちょう力一杯撫でてくれそうなんやもん!
俺が逃げようと思ってじたばたしても明智の光秀さんは俺を離してくれやんくって、片手に俺、逆っかわにむさし君を掴んで(さっきのちかちゃんと同じ持ち方…!)涼しいお顔。
騒がせましたね、なんて元就様に肩をすくめて涼しいお顔。
ぬーんさすが近江のお母さん…!
じたばた暴れる俺らもなんのその、なんて素敵なえがおー。
まぶしいわ!
「…貴様明智、随分手慣れておるな。」
いつの間に死神が子守をする様になった。
「何です気の毒そうな顔をしないでいただけますか。」
あなたもこれから慣れて頂くんですよあれに。
「俺は未だに慣れねェけどな。」
「十分でしょうに。」
「くっくっく。」
それからちかちゃんが笑って、元就様も笑って、明智の光秀さんも笑って。
「ついて参れ真樹緒。」
部屋に案内しよう。
「!はい!」
砂浜の上を皆で歩く。
さくさくさくさく気持ちのいい音がした。
肩を掴んでた明智の光秀さんとは手を繋いで。
むさし君も首根っこつかまれてたけどいつの間にか明智の光秀さんと手を繋いで。
(やあまだほっぺたは膨れてたけど!)
ぬん、ここにこーちゃんもおったら一緒に手繋ぐのになあ、ってちょっぴり残念に思ったり。
目の前に見えるのは笑いながら元就様に話しかけるちかちゃんとそっぽ向いてるけどちゃんとちかちゃんのお話にあいづち打ってる元就様。
二人とっても仲良くって俺は嬉しくなる。
「明智の光秀さん。」
「何です。」
「ちかちゃんと元就様のお話、うまくいくとええね。」
言ったら明智の光秀さんがちょっとびっくりしたお顔で俺を見る。
そのお顔がおかしくって俺は笑った。
ぬんぬん俺実はちゃんと覚えてたよ。
大事なお話ってちかちゃんと元就様が仲よくしましょうねっていうお話やろう?
俺二人とも大好きやからうまくいったらええなー。
それを聞いた明智の光秀さんは何か言いたげやったけど何も言わんとため息をはく。
首を小さく振ってため息をはく。
その向こうでむさし君が「どうした?」って首を傾げて。
何にもないん!ってまた笑う。
ぬんぬんぬんぬんさあ行きましょー。
元就様が案内してくれるお部屋にまいりましょー。
それからじっくりまったり安芸を満喫しましょ!
ぬん!
「…あなた浮かれている所失礼ですが真樹緒。」
「ぬ?はい?」
「部屋についたら私と膝を突き合わせて大事なお話がありますよ。」
……
………
「ぬーん…!」
わすれてた…!
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やっと安芸に辿り着きました…!
辿り着いただけなんですけれども(汗)
前回あまり出番が無かった明智の光秀さんですが、今回はいつもにましてお母さん仕様でした。
子供二人を両手に繋いでもう本当どこまでいくのかおかみ。
むさし君はおかみの怖さを何だか分って来た感じなので、ここぞという時は逆らったりしませんほらお母さん相手だと勝てる気なんかしないから!
キネマ主はキネマ主でいつも通りの甘えっ子です。
基本くっつくのが好きな子なので元就様相手でもそれは変わりません。
元就様も何だか受け入れてくれるみたいなので更にキネマ主が甘えたに。
そう言えばむさし君が元就様をどう呼ぶのかが決まっていなくて最後までどうしようか悩んでいたのですが最終的にさんでーに落ち着きました。
馬鹿にしてるわけじゃないんですよ。
本当にさんでーだと思ってるからさんでーなのです。
ほらもう明智の光秀さんもおかみって呼ばれるのを諦めましたしね!
次回からやっとちゅー魔本番です。
さっくりさくさく次回からもう夜もたけなわ(笑)
厳島神社の観光はちゅー魔の次の日に持ち越し。
明智の光秀さんのお説教が長引いたんですよきっと。
お迎えにきた元就様と元親さんが見守る中、延々正座でお説教されているのではないでしょうか。
むさし君はあぐらで付き合ってくれると思います。
偵察から帰って来たこーちゃんは一緒に正座してくれると思います。
それでは。
四章も残りわずかとなって参りました。
どうぞもう少しお付き合いくださいませ。
本日はこのあたりで失礼します。
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