「真樹緒、あなたに書が届いていますよ。」
「ぬ?誰から?」
「毛利からじゃないんですか?」
「!元就様!」
元就様を厳島でお見送りしてしばらく、まったりゆったりお船に揺られながら俺らは四国に戻って来たん。
明智の光秀さんはやっと戻って来ましたね、なんてため息はいて。
ちかちゃんはそんな明智の光秀さん見て笑って。
むさし君とこーちゃんはさっき仕留めたサメを頭の方と尻尾の方でわけっこしながら運んだりしたりして。
何てゆうか四国からザビーさんの所へ元就様お迎えに行って、それから帰って来るまで結構あっという間やったなーなんて思いながら今度は甲斐へ戻る準備してるん。
てゆうても荷物とかはそんなに無いから荷造りするとかは必要無くて、明智の光秀さんとちかちゃんがどうやって甲斐へ戻るか相談するだけなんやけど。
やあほら、帰り道の確認とかルートとかね。
海の様子とかね。
その他にも何か色々大人の大事なお話があるんやって!
俺はそんなお話の中に入ってもきっとよう分からんやろうからこーちゃんとむさし君を誘って、サメがつるしあげられるのをじーっと傍で観察してました真樹緒です。
こんにちは!
ぬん!
あのもともとあった巨大なサメのお隣にね、つるしあげられたん。
こーちゃんとむさし君がしとめたサメ。
でっかいねーなんて三人でサメ見上げてたらちかちゃんとお話が終わった明智の光秀さんがやってきて、俺にお手紙届いてるよって教えてくれたん。
お手紙。
元就様からかもしれやんのやって!
「ありがとう明智の光秀さん!」
「部屋で開きなさいよ。」
私からもお話があります。
鬼を連れて行きますからそのまま部屋にいて下さい。
「はい!」
ここやったら風に吹き飛ばされてしまうかもしれやんもんね!
ぐちゃぐちゃになってしまうかもしれやんもんね!
大事なお手紙がそんな事になったら大変やもん。
ちゃんとお部屋へ行って読むから安心してー。
それに明智の光秀さんとちかちゃんの事も待ってるから!
明智の光秀さんからお手紙を受け取ったら思わずほっぺたがへにょってゆるんだ。
顔もなんだかにんまり笑ってしまう。
ぬんぬんとっても嬉しくなってお手紙をぎゅって抱きしめた。
やって!
元就様からのお手紙やで!
一緒にお船に乗った時、厳島へおいでってゆうてくれたやん?
お迎え送るよってゆうてくれたやん?
このお手紙、きっとその事やと思うん。
やから余計にうきうきしちゃうってゆうか!
読むのが楽しみってゆうか!
「むさし君、こーちゃん、俺ちょっとお部屋もどるね!」
「あ?」
「(?)」
「さめみねーのか?」
「ぬん!」
ちょっと俺にお手紙届いたからそれ読んでくる。
元就様からのお手紙届いたからそれ読んでくる。
だからちょっとごめんね!
ばーいばーいってむさし君とこーちゃんに手を振って、もう一回明智の光秀さんにお礼をゆって、お手紙大事にかかえてお部屋に走る。
ごめんねこーちゃんむさし君、これ大事なお手紙なん。
じっくりしっかり読まなあかんし。
ほらお返事とかも考えやなあかんし!
字もていねいに書かなあかんし!
「まて真樹緒!おれさまもいく!」
「(しゅた!)」
「ぬ?」
あれ、ぬん?
足ういた?
やあこーちゃん?
「(ぎゅう)」
「むさし君とサメ見やんでええの?」
だっこしてお部屋連れてってくれるん?
むさし君、下で慌ててるけど。
一緒にサメ見てやんでもええの?
「(こくり)」
「やあ、ありがとー。」
俺がてってけ走ってたらこーちゃんが俺をひょーいってだっこしてくれた。
両手で持ち上げられて、それからそのままこーちゃんの背中へ乗せてくれる。
お部屋へ連れてってくれるってゆうから俺はそのままこーちゃんの首にぎゅう。
ちゃんとお手紙潰してしまわんようにぎゅう。
ほらこーちゃんやったらここからお部屋まできっとひとっ飛びやから。
しっかり掴まってやなあかんけど、そこはお手紙を守る様にそふとに注意深くしやなあかんから。
「おしのび!おめーおしのびのちからつかうのずりーぞ!」
「(つーん)」
「真樹緒をはなしやがれー!」
おれさまがつれてってやる真樹緒おめーもおしのびからおりろ!
「えー、でも俺それやったら自分で走っていこーかなって思うってゆうか!」
何やったら三人で歩いてお部屋戻ってもいいんやけど。
あ、でも早くお手紙読みたいからちょっとこばしり位がいいかも。
ぬん。
下りようか?
やあこーちゃんがだっこしてくれるんはちょう嬉しいんやで?
くっつけるし、あったかいし、俺こーちゃん大好きやし!
それにやっぱりこーちゃんは俺のお嫁さんやしね。
「ね!」
「(こくり)」
「あーん?なんだそれ!おれさまきーてねーぞ!」
「ぬ?」
俺がこーちゃんとにっこり笑ってたらむさし君が下からおっきい声で叫んだ。
今にも手に持ったオールを放り投げそうな勢いで叫んだ。
ぬん?
むさし君どうしたんそんなまゆげつりあげて。
こーちゃんと俺はふうふやねんで?
えーっとね、俺がお婿さんでこーちゃんがお嫁さんなん。
もうこーちゃんのおじいちゃんにもご挨拶すんでるし。
夫婦関係もちょうりょうこうよ?
らぶらぶ。
ちょうらぶらぶなん。
ご挨拶したんはずいぶん前やし、そんなびっくりする事でもないねんで?
「ねー?」
「(こくり)」
そろそろ新婚さんな期間も過ぎてこーちゃんもお嫁さんが板について来たかんじよね!
……
………
「…おかみ…」
なんだあれ。
どーいうことだ。
あんでおしのびと真樹緒がふーふなんだおかみのせいか。
おれさまあんまりおかみにてぇあげたくねーけどおかみのせいならてかげんしねーぞ。
「私も初耳ですよ。」
何故私の所為になりますか。
誰の所為かと言えば真樹緒と忍の所為でしょうよあの思い立ったら吉日主従が。
夫婦のそれも大方あれの思いつきに決まっています。
言い得て妙なところは敢えて何も言いませんよ私は。
「ぬ?」
こーちゃんがひょいひょいっと飛び移った屋根から明智の光秀さんとむさし君を見下ろした。
でも二人ともこっちを見上げながらちょっぴり怖い顔してるん。
えええ一体どうしたんやろう。
俺何か変な事ゆうたやろうかどうしたんやろう。
さっきのむさし君といい、明智の光秀さんといい俺とくに心当たりないんやけど…!
ちょっぴりどきどきしながら、けどやっぱり原因が分からんくって首をかしげたままひらひら手を振ったら明智の光秀さんがため息を吐いて、むさし君がオールを構えるん。
さっき投げそうやったオールを今度は両手に構えるん。
えええ何で…!
何でむさし君りんせんたいせい…!
「…おかみ。」
「…何です。」
「おしのびをたおしたらおれさまが真樹緒のよめだな。」
……
………
「は、」
「おしのびをたおしたらおれさまが真樹緒のよめだな?」
あ、ちげーな。
おれさまが真樹緒をよめにしたらいーんだな。
おれさまあたまいい。
でもどっちにしろおしのびはたおさなきゃなんねーとめるなよおかみ!
……
………
バシッ!
「いってー!おかみなにすんだ!」
「さしもの私も一体どこから突っ込めばいいのか。」
こうなったら力に任せるしかないかと。
落ち着きなさいよ坊や。
「ぬーん…」
むさし君がオールを構えて今にもりんせんたいせいでどうしようかな、っておろおろ明智の光秀さんとむさし君を見てたら明智の光秀さんがむさし君の頭をぺいっと叩いた。
ちょっぴり呆れながらぺいっと叩いた。
ぺいっと叩かれたむさし君はさっきまで投げそうやったオールを下に下ろしてほっぺたふくらましてる。
ぬん…やあ、なんか、とっても、しぶしぶな感じやけど。
明智の光秀さんに怒られたからしぶしぶ下ろした感じやけど。
「真樹緒。」
「はーい?」
「坊やも連れて行ってあげなさい。」
妬いていますよ。
「や?」
「おかみ!よけーなこというんじゃねー!」
「むさし君?」
「真樹緒!おしのび!」
「?はい?」
むさし君がオールを背中に背負って走り出した。
走って勢いをつけて屋根のへりをつかんでひょーいって。
「…ぬ?」
「よしおいついた。」
「むさし君!」
ひょーいって屋根の上へ飛び上がったん。
首をこきこき曲げて意外にかんたんだな!ってむさし君が笑うん。
ぬん!
むさし君すごいお忍びさんやないのにちょう身軽!
お空飛んだみたいに見えたですごい!
「いくぞ真樹緒!おしのび!」
「わあむさし君、手ひっぱったら俺落ちる!」
こーちゃんから落ちる!
そのままとんとんって走って来たむさし君が俺の手を引っ張った。
引っ張られた俺の体はぐらっと傾いたんやけどこーちゃんがうまい事ささえてくれてなんとかまだこーちゃんの背中の上。
もーむさし君気をつけて!って振り返ったら「真樹緒がおれさまをほってくからだろー」って。
「ぬん…」
やあむさし君おいてけぼりで寂しかったんやろうか。
こーちゃんもこっちに来てしまったし一人ぼっちにさせてしまったし。
一人ぼっちでサメ見てるんはちょっぴりあれよね、さみしいもんね。
明智の光秀さんおるけど明智の光秀さんはあんまりサメにテンションあがってくれへんしねー。
サメ。
ちょうテンション上がると思うんやけど明智の光秀さんはいっつも冷静なのよねー。
やっぱりお母さんやからやろうか。
子供ごころを分かってくれへんの。
「むさし君、むさし君、ごめんねおいてけぼりで。」
やっぱりみんな一緒がいいよね!
ごめんね!
こーちゃんと俺と二人だけで行こうとして。
「…」
「むさし君?」
「真樹緒!」
「?はい?」
俺がむさし君に謝ったらちょっぴりむさし君が難しい顔をして黙ってしまう。
黙ったまんま考え込むみたいに目をつむって。
それからじろ、ってむさし君が俺をにらんだ。
唇をとんがらせて俺をにらんだ。
「おめーとおしのびがふーふなんておれさまみとめねーかんな!」
「ぬ?」
手は握ったまんまそう言って、足でこーちゃんをげしげし蹴って。
ぬん…こーちゃんは涼しいお顔で避けたり受けたりしてるんやけど。
「あれやあ…」
やっぱりむさし君なかま外れにされたと思ったんやろうか。
そんなつもり全然なかったんやけど。
俺、むさし君の事も大好きなんやけど。
不安にさせてしまったかしらー。
「むさし君!」
「あん?」
こーちゃんの隣をお部屋に向かってぴょんぴょん。
まるでお忍びさんかと見間違うぐらいの身軽さでこーちゃんと同じ様にぴょんぴょん走るむさし君の手をひっぱって(まだ手は繋いだまんまやからね)お名前を呼ぶ。
なあなあむさし君ちょっと聞いて。
あのね聞いて。
「あんだー?真樹緒。」
「俺ね!むさし君の事も大好きよ!」
ぬん!
そりゃあこーちゃんはお嫁さんやしらぶらぶやけどもね、俺むさし君かって大事なお友達よ?
ほらとっても仲良くなったやん?俺ら。
こっちにやってきてちょっとしか経ってへんけどもうすっごい仲良しやん?
むさし君は強くて、優しくて、男前で、俺むさし君の事大好きやからね!
安心してね!
なかま外れとか違うからね!
でも俺も自分の事ばっかり考えてしまってごめんね。
これからちゃんとむさし君もお誘いするからね!
「ね!」
「…」
「(…)」
「ぬっふふーん。」
やからしょんぼりしやんでねー。
仲良く一緒にお部屋行こうねー。
こーちゃんの頭をなでなで。
もちろんこーちゃんは俺がこーちゃんの事好きって知ってると思うけど!ってなでなで。
むさし君と繋いだ手をぶんぶん。
むさし君は今日初めてゆうたけとちゃんと覚えててね!ってぶんぶん。
二人はなんでか黙ったまんまやったけど(さっきは沢山お話してたのにね)もうお部屋ももうすぐそこ。
ここの屋根を右っ側に下りて正面に見えるお部屋が俺のお部屋。
お庭が綺麗に見れてね、お気に入り。
明智の光秀さんのお部屋と隣どうしなんやで。
でも寝る時とかは一緒におふとん入るんやけど!
俺明智の光秀さんの事も大好きよ!
俺の近江のお母さん!
ぬん!
「…おいおしのび。」
「(…)」
「真樹緒はおれさまがだいすきなんだってよ。」
「(いらっ)」
「しょーがねーからよめはおめーにゆずってやらー!」
「(しゅっしゅっしゅっしゅ!)」
「えー!こーちゃん待って何でクナイ…!」
ていうかお部屋あっちやでどこいくん…!
目の前やでどこいくん…!
俺はやくお手紙読みたいんやけどどこいくん!
「やるかおしのび!」
「むさし君もちょっと待って…!」
えええ何で突然戦いが始まったんそういうふんいきや無かったよね…!
お話の流れ的にそういう空気でも無かったよね…!
このままお部屋行って皆で元就様からのお手紙読まんとそろそろ俺色んなかたがたに怒られると思うんやけどまじで!
ていうかほんまこのくだり何回め俺そろそろ二人にも仲良くして欲しいんやけどでもきっと実は仲いいよね…!
元就様のおにぎり食べた時二人ともあうんの呼吸やったもんね俺知ってるんやで!
あ!そういえばあの時の事ちゃんと二人とも元就様にごめんなさいしやなあかんよ!
そのお話も俺しやなあかんと思ってて、ほんで、やから、もう、
「ぬーん…!」
やからそんな屋根の上ぴょんぴょん飛んでやんと早くお部屋戻ってお手紙読もうほんま俺おこるよ!
……
………
「おうおう明智、どうしたィ。」
そんな不貞腐れた顔してよう。
真樹緒に届いた書ってのはそんな顔になる様な内容だったのか?
「…鬼。」
「あん?」
「真樹緒は私の事も好きなんですよ。」
……
………
「はァ?」
知ってるよかーちゃんじゃねえかお前。
つーか真顔でどうした。
真樹緒に何か言われたのか。
「いえ、一言断っておきたかったので。」
「…気はすんだかい。」
「ええとても。」
「………そりゃァ何よりだ。」
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お手紙を読むところまでいかないとかそんなまさか。
やっと四国についたのでここからちょっとまったり。
むさし君とこーちゃんとイチャイチャしつつ、おかみが呆れつつ、元親さんが慣れつつ次回へ続きます。
次回は安芸にむかいますまいていこう。
本当にまいていかなきゃいつまで経っても政宗様に会えない。
今年中にはきっと私再会させてみせる。
ひさしぶりにお嫁さんのくだりが出てきましたが、実はちょっと前にやりとりしているのですよね小太郎さんとキネマ主。
その時むさし君もいたのですが、きっとその時は戦うのに夢中で聞いてなかったとかですニルのご都合主義…!
今回はそれで一回の更新分使ってしまったんですけれどそれもどうかと(汗)
でもほらキネマ主から大好きって言ってもらえましたし武蔵君。
(深い意味は無いですよきっとお嫁さんって言うのと同じくらいのレベルの大好きだと思います)
それを聞いてちょっとおかみもイラっとした感じで。
最後全く話の流れを知らない元親さん捕まえて自慢してみました。
(でもキネマ主は元親さんの事も同じくらい好きですよ)
果たしてキネマでキネマ主の特別が出来るのかどうなのか。
(あの青い人が結構贔屓されていたりしますがかの子の中では全員スタートラインですよまさかの。まさかの)
ではでは次回は元就様も揃ってお送りしたいと思います。
全員のチューシチュエーションは考えているので後は書くだけ!
そして安芸へ行くだけ!
がんばります。
ここまでお付き合い下さりありがとうございました!
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