明智の光秀さんの鎌から何か技っぽいのが出て。
ちかちゃんとむさし君の体が一瞬ぴたっと止まったと思ったら次の瞬間にはお部屋の端っこまで飛ばされちゃって。
それを見ながら清々しく前髪なんかをかきあげる明智の光秀さんに近江のお母さんと美人おかみを同時にみいだしました真樹緒です。
右手にこーちゃん、左手にむさし君と手を繋ぎながらこんにちは!
「鬼、毛利はお願いしますよ。」
「あン?」
「私、鎌より重い物は持った事がないんです。」
いくら己より小柄な方と言いましても武将ですし。
細腕の私にはとてもとても。
「大鎌二丁振り回す奴が何言ってやがる。」
面倒くせーだけだろうよ。
「ちかちゃん元就様よろしくね!」
「へいへい。」
どうせ俺ァお前等に頭上がらねぇよ。
「ぬん!ありがと!」
やあやああのね。
元就様も落ち着いたしむさし君とこーちゃんのおいかけっこも無事に止まったし、さあこれから帰ろうかーってお話になったん。
ほら早く元就様を安芸に連れて帰ってあげたいし。
安芸のみなさんも元就様の事を心配してると思うし。
無事ですよってお知らせしてあげたいん。
やあ…無事ってゆう…その、訳や…ないんやけど。
むさし君が結構なごむたいを元就様にやってしまったりしたんやけど。
ふくろだたきとかに、ぬん、してもうたんやけど。
そんでもって元就様まだ全然目覚まさへんのやけど。
でもやからってここにずっといるよりはって。
元就様が気失ってる内に四国へ一端戻った方がいいん違うかって明智の光秀さんがゆうたん。
やから今帰る準備中なんやけどちかちゃんが元就様を運んでくれるんやって。
ぬん!
よろしくね!
「やあやあほんなら皆で帰りましょー。」
こーちゃんの手を引いて、むさし君の手を引いて、元就様を担ぎあげてるちかちゃんの所まで走る。
行きしなみたいに俺らだけで行ったらきっとやっぱり怒られるからね。
おかみでお母さんな明智の光秀さんが黙ってへんからね。
それに早く帰りたいってゆうんもあったしやあ。
ほらほらこーちゃんもむさし君も行くよーって走り出そうとしたんやけど。
「なー、真樹緒。」
「ぬ?」
むさし君がぴたっと止まって動かなくって。
足を止めたまんま全然動かなくって。
引っ張ってもびくともせえへんくって逆に引き戻されてしまったん。
「どうしたんむさし君。」
「こいつよー。」
「こいつ?」
何?ってむさし君の方見たら、むさし君がザビーさんの肖像画をじいっと見てるん。
ぬん。
肖像画。
ザビーさんの肖像画。
さっき元就様…サンデー毛利様がこう神々しく登場した時バックにあった肖像画。
それをずうっと見て動いてくれへんのやけど。
やあやあむさし君ザビーさんがどうしたん。
「なーんかみたことあんなーとおもってたらよー。」
「?うん。」
「まちでおめーをつれていきそーになったやつとおんなじかっこーだな。」
……
………
「ぬ?」
「ほらまちでおめーさらわれそーになったじゃねーか。」
町?
皆におみやげとか買ったとこ?
ええ?
そんなんあったっけ?
こーちゃんやむさし君とははぐれてしまったけどそんな事あったっけ?
「あにいってんだあぶなかったじゃねーか。」
「ええ?そう?」
ぬーん。
そうやっけ。
ごめんねちょっと待って思い出してみるから。
まず明智の光秀さんとお約束確認してから町へ行ってー、しょっぱなにこーちゃんとむさし君とはぐれてー、でもおいしいもん食べてー、おみやげ買ってー、かりんとう食べてー、買い忘れてたおみやげまた買いにいってー。
「(ふるふる)」
「え、ちがう?」
「みやげかいたしにいくまえにからまれてたろー。」
「あー……ああ!」
ぬん!
そういえば!
町に行った時の事を思い出して大きくうなづいた。
やあ本当は手をぽん!ってしてみたかったけど両手こーちゃんとむさし君と繋いでるしね。
それは出来やんからね。
出来やん代わりに大きく頷いてこーちゃんとむさし君を見る。
そういえばそうやったねえ。
俺がお豆腐でんがく食べてた時、ザビーさんみたいな服着た人に声かけられたもんねー。
思い出したら確かザビーさんってゆうてた気もするわ!
「あー、じゃあここのやつだったんだなー。」
「ねー。」
あの人今どうなってるんやろうねー。
無事にここに戻って来てたらええんやけどねー。
むさし君に追いかけられた後!
「なー。」
「ねー。」
「ねーじゃありませんよそれは一体何の話です。」
……
………
「ぬ?」
明智の光秀さん?
あれ?
ちかちゃんと元就様のとこにおったんやないん?
あれ?いつの間に?
それにお顔ちょう怖いよ?
あれ?
何で怒ってるん?
「私ここへ来る前に何か町で変わった事は無かったかと尋ねたはずですが?」
あなた何も無かったと言いましたよね真樹緒。
私に嘘をついたのですかいい度胸です詳しく聞かせて頂きましょうか。
……
………
「ぬーん…!」
明智の光秀さんが怖い。
笑ってるけどちょう怖い。
えええやって俺も今の今まで忘れてたんやもん町で声かけられた事とか全然全く思い出せやんかったんやもん楽しかった事しか覚えてなかったんやもん…!
右と左にこーちゃんとむさし君を繋いだまんなずりずり。
明智の光秀さんがとっても怖い顔で迫って来るからずりずり。
「真樹緒をこわがらすなよーおかみ。」
なんてむさし君がゆってくれてるけど、むさし君結構明智の光秀さんの事すきやからあんまり助けにならないのよね!
何だかほのぼの見守ってくれてるだけなのよね!
俺も明智の光秀さん好きやけど!
近江のお母さん大好きやけど!
けど怒られるのは好きやないってゆうか!
ほんならこーちゃん!ってこーちゃんの方を向いたんやけどこーちゃんも実は最近とっても近江のお母さんの事好きやから頭をちょっこり撫でられて終わってしまうん俺こりつむえん…!
「坊や。」
「あん?」
「真樹緒を攫おうとした輩はどうしました。」
「いっぱつなぐってやった。」
真樹緒にてーだそうとしやがったからとーぜんだ。
そのあとほうってきたからどうなったかはしらねー。
「その輩がここの者だというのは確かで。」
「おれさまがみまちがえるはずがねー。」
「…そうですか。」
「あ、明智の光秀さん…?」
ふふふって口元を上げる明智の光秀さんがやっぱり怖くて俺はむさし君とこーちゃんの背中にこそこそ。
やっぱり「おかみ真樹緒がこわがってんぞー」なんて言いながらもむさし君は笑ってるし。
こーちゃんの背中は頼もしいけどでもこーちゃんも頭撫でてくれるばっかりで明智の光秀さんの怖さは変わらんし。
ちょっとでも明智の光秀さんから隠れようと思ってこそこそ。
ぬん…!
やって明智の光秀さんちょうこわい…!
「真樹緒。」
「はい…!」
「あなたへのお説教は後にするとして。」
「おせっきょう…!」
あるんや。
後にするけどあるんや俺なんでおこられるん!
「大事な事を黙っていたからですよ怒りますよ。」
「もう怒ってるやんかー!」
明智の光秀さんが俺の頭をぐりぐり。
両手をこーちゃんとむさし君が繋いでるからある意味身動き出来へん俺の頭をぐりぐり。
ぐーした手の一番固いとこでぐりぐり。
頭だけでも逃げようともぞもぞしたけどやっぱり逃げられやんくってずーっとぐりぐり。
「忍、坊や、暫く真樹緒をお願いします。」
「(?)」
「おかみどっかいくのか?」
「ええ少し野暮用が。」
「ぬ?」
そしたら俺の頭をぐりぐりしてた明智の光秀さんが急にその手を離して今度は鎌を持った。
まだ気は済んでいませんけどなんて恐ろしい事を言いながら鎌を振る。
それからぐるってお部屋を見渡して。
俺とちかちゃんが入って来た扉でも明智の光秀さんらが入って来た扉でも無い扉、さっき人がいっぱい出てきた三番目の扉の前で止まる。
「諸悪は根源から絶たねば。」
……
………
「ぬ?」
「鬼。」
「あァ?」
「何をしているんです行きますよ。」
「…とっととずらかるんじゃなかったかい。」
「私一人にあの得体の知れない者の相手をしろというつもりですか。」
薄情な鬼ですねえ。
「よく言うぜィ。」
そんなおっかねえ目をしてよう。
ちかちゃんが笑って背負ってた元就様を下ろした。
それから槍を担ぎ直して。
「ちかちゃん?明智の光秀さん?」
「真樹緒。」
「はい?」
「私と鬼は少しここを離れます。」
「へ?」
「あなたは忍と坊やと、大人しく待っていなさい。」
ああ毛利は未だ目を覚ます事は無いと思いますが、よもやの時は忍と坊やが何とかするでしょう。
さほど手間はかかりません。
すぐに戻ってきます。
そう言って明智の光秀さんとちかちゃんがお部屋を出て行った。
ひらひらってちかちゃんは手を振ってくれるけど俺は何が何だか分からんくって。
明智の光秀さんとちかやんが出て行った扉を見ながら俺はきょとん。
だーれもいてへん扉をしばらく見てから今度はこーちゃんとむさし君を見上げた。
「明智の光秀さんとちかちゃんどこ行ったんやろう。」
俺らを置いて。
元就様まで置いて。
どこにご用事なんやろう。
「…こんかいはしかたねーなー。」
おれさまがいねーとおしのびひとりになっからな。
おしのびひとりに真樹緒はまかせらんねー。
やっぱり真樹緒はおれさまがまもる!
あんしんしろ真樹緒!
おれさまはさいきょうだ!
「へ?むさし君何のお話?」
「(……)」
「こーちゃん?」
「(しゃきーん)」
「へ?何でこーちゃんこのタイミングでクナイ?」
え?
またこのくだり?
結構やったよこのくだり。
むさし君がちょっぴりこーちゃんの逆鱗にふれてこーちゃんがクナイを持って。
それから確か追いかけっこが始まるんよね俺もう知ってるでこの後のてんかい…!
「やるきかおしのび!しょうぶだ!」
おかみがおこるからこのへやんなかだけでな!
「(しゅばばばばばばば!)」
(こ く り)
「ぬーんやっぱりー!」
やっぱり!
やっぱり始まったおいかけっこやっぱり…!
もーう何でえ仲良くできやんのうなづき合って実は仲ええんちがうんふたりともー!
気合ってるんちがうんこのくだり何回めー!
追いかけっこばっかりしてー!
もーう!
「二人ともお部屋出たらあかんよー!」
「あんしんしろ真樹緒―!おれさままけねー!」
「(ぐっ!)」
「そーやなくってー!」
もうー!
俺ほんまにしらんよ!
明智の光秀さんに怒られたって知らんのやから!
でも広いお部屋で寂しいから早くこっちに帰って来てね…!
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やっとこ元就様とお話する準備が整いました。
でも実は元就様を起こすところまで行きたかったのですけれど…!
長過ぎて到底無理でした無念です。
おかみは一本五キロぐらい(予想)の鎌を二つも振り回してるので結構力はあると思うんです。
キネマ主ぐらいなら担げると思うんです。
でも面倒くさいの嫌いだし動くのも嫌いだから全部アニキにまる投げ。
アニキは優しいので言う事きいてくれるよ。
キネマでのアニキのポジションが何だか最近決まってきましたね!
家族でいるとどうしてもキネマ主とのイチャイチャより頼りになるお父さんぽくなるのはもう仕方ない事なんだと思いますきっとちゅー魔でラブラブするから許して下さいぐすん。
最後おかみとアニキが向かったのはザビーさんの所ですが、次回はキネマ主と元就さんとの初対面なのできっとそのくだりは割愛されます。
元就さんとのお話が終わったところで根源を断ってきてちょっとスッキリしたおかみが帰ってきて一段落です。
次回キネマ主は元就様が動かないのを心配して鼻とかつまんじゃって元就様に「息が出来ぬわ…!」って怒られるところから始まりますキネマ主どこでも怒られてばっかり悪気は無いんですよ心配したんですよ。
どうぞお付き合いくださいませ。
今回むさし君はつえー奴と戦うのを我慢しました。
本当なら自分が行きたかったのですが、キネマ主と手を繋いでるしちょっぴり気に行ってるおかみが行くってゆうし譲ったのです。
小太郎さんとむさし君のくだりは何度もやっていますが、最近は実は仲がいいんじゃないのと思ったり。
いざという時には力を合わせそうな二人です。
ほら何だか兄弟みたいだからもう。
兄弟が弟だか兄だかを取り合ってるんだけど実は皆仲がいいみたいなノリなんです。
ここに後から元就さんが入る訳ですが四国家族は人数が多くてちょっとおかみが大変ですね。
でも多分おかみだから大丈夫…!
それでは本日はこのあたりで失礼します。
ご覧下さってありがとうございました!
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