「鬼。」
「あン?」
「その長い足を少し前に出してみませんか。」
「足?」


おらよ。


ってめーおに!なにしやがんだばっきゃろー!
ぬーん!ちかちゃーん!それあぶないー!


ベッシャァァァァァ!



……
………



あン?
ぬん…


こーちゃんとのおいかけっこが始まってしばらく。
ものすごい速さで走るこーちゃんからむさし君が俺を担ぎあげてるってゆうのにこれまた物凄い速さで逃げて大きな広間をぐるぐる。
猛スピードでぐるぐる。
しまいには俺の目までぐるぐるしてきてちょっぴり挫けそうになってきた時。
すっと伸びて来た長い足にむさし君が引っかかって、顔面から思いっきり地面に滑り込みました。


ぬん。
真樹緒です。
むさし君が庇ってくれたから俺は全然顔面無傷なんやけど、その分むさし君が。
むさし君の顔面が。
むさし君がお顔を地面に伏せたまんまびくともしやんのやけどどうしよう。
しっかりぎゅってしてくれてるむさし君の腕の中からもう一回真樹緒ですこんにちは!


「む、むさし君…」
「……」
「ぬん、むさし君…」
「…………」
「むさし君、だいじょう」
「っおにおめーあにしやがんだあっぶねーだろ!」
「むさし君!」


俺がむさし君の腕の中でもぞもぞしてたら今まで顔面を地面にくっつけたままびくともせえへんかったむさし君ががばって飛び起きた。
俺をぎゅってしたまんま飛び起きた。


やあやあむさし君だいじょうぶ?
ちょっとおでこ見せて。
そうゆって手を伸ばしたのにむさし君は飛び起きてすぐにちかちゃんに船のオールもって飛びかかって行く。


「おかみちょっと真樹緒もってろ!」
「願っても無いお申し出で。」
「へ?ぬ?明智の光秀さん?むさし君?」


俺はむさし君に背中を押されて明智の光秀さんの胸にぽすん。
目の前をおかみな明智の光秀さんの可愛いみつあみが揺れて。
ぬん、やあ、感動の再会なんやけど、ぬん。


「おれさまにあしひっかけてただですむとおもうなー!」
「あァ?俺の所為じゃァねーだろうが文句があんなら明智に言いやがれィ!」
「おかみのせいにすんじゃねー!」
どう考えてもおかみの所為だろうがよ!


……
………


ぬん、


なあなあ明智の光秀さん。
ええの。
あの二人あのまんまでええの。
何やとっても危険なふんいきやけど。


「放っておきなさい。」
「ぬーん。」


涼しい顔でちかちゃんとむさし君を眺めてる明智の光秀さんは「大丈夫ですよ」なんて言いながら俺の頭を撫でる。
ぽんぽん。
なでなで。
俺がはらはらどきどきしてるってゆうのにお構いなしにまたぽんぽんなでなで。
やあそんな撫でられたら俺ぬーんってなるやんか。
はらはらどきどきが無くなってしまうやんか。
ちかちゃんとむさし君が大変な事になってるのに明智の光秀さんにぎゅってしたくなるやんか。


「ぬーん。」
「何です。」
「ううん別にー。」


何にもないん。
別に何にもないん。
ちょっと明智の光秀さんにくっつきたくなっただけでー。
やあほら感動の再会やし。
明智の光秀さんとはお久しぶりやし。
こーちゃんとむさし君とは感動の再会したんやけど、明智の光秀さんはまだやったやんか?
やから俺がこうやって明智の光秀さんにぎゅってするんは仕方がないってゆうか。
明智の光秀さんは俺の頭も撫でるのもええけど、俺といっしょにぎゅってしてくれたらいいのになってゆうか。


「明智の光秀さん。」


じ、って明智の光秀さんにくっついたまんま見上げてみる。
どう俺をぎゅってしてみないっていう視線をばしばし飛ばしてみる。
ぱちっと目があった明智の光秀さんは小さく首を傾げた後ちょっと考えて俺の頭を撫でてた手を離した。
それからゆっくり明智の光秀さんの腕が背中に回る。


「真樹緒。」


言いたい事があるならば声に出しなさい。
その口は必要な時には少しも開かないで。
私はあなたと違って疎いんですよ。


ちっちゃい溜息が聞こえて背中がぽんぽん。
やさしくぽんぽん。
「よくご無事で」って耳元で聞こえて何だかくすぐったい。
耳もくすぐったいし、お腹もくすぐったい。
色んなところがくすぐったくなって笑ったら今度はちょっぴり強くぎゅってされた。

ぬーん。
うれし!


「明智の光秀さんは怪我ない?」
「ええおかげ様で。」
「よかった。」


心配してたん。
離れ離れになってしまったから。
俺とちかちゃんが歩いてた通路は本当にまっすぐ続くただの道やったんやけど、明智の光秀さんやこーちゃんやむさし君らの方はどうやったんかなって。
初めに来た時ロボット出たやん?
あんなのがいっぱいうろうろしてたりせえへんかったんかなって。
明智の光秀さんやこーちゃん、むさし君はとっても強いけどそれでもやっぱり心配やったんやで。


「ふふ、」
「ぬ?」
「随分可愛らしくなりましたね。」
「なに?」
「「ちかちゃん」」


私の知らぬ間に一体何があったのやら。


笑いながら明智の光秀さんが俺のおでこを撫でる。
おでこを撫でて目にかかってた前髪をよけてくれた。

やあやあ明智の光秀さんありがとう。
最近前髪伸びてね、気になってたん。
ええ、伸びましたねえ。
戻ったら揃えましょう。
やあほんまに!
ありがとう!


「ぬん、本当はね、姫ちかちゃんなん。」
「姫ちかちゃん。」
「そう。」


姫ちかちゃん。
こそこそ話をするみたいにちょっと明智の光秀さんに顔を近づけて小さい声で。

これはちかちゃんのちっちゃい時のお話なんやけどね。
昔ちかちゃん姫若子ちゃんって呼ばれてたんやって。
意味はあんまりよう分からんのやけど、でも姫若子ちゃんって響き可愛いやんか?
お姫様みたいで。
それでね、俺ちかちゃんの事ずっとあにきって呼んでたけどそれは初めて会った時お名前がよく聞き取れやんかったからで俺としてはちょっぴり不本意なスタートやってね。
機会があったらもっと良い感じの呼び方ないかなーって思ってたん。
素敵な呼び方を探してたん。
そんな時に聞いた姫若子ちゃんがとってもお気に入りになってやあ。
やから元親のちかちゃんと姫若子のお姫様をくっつけて姫ちかちゃん。
可愛いやろう?
でもこれはね、状況によって変わるんやで。
今はちかちゃんやけど可愛いちかちゃんを発見したら姫ちかちゃんになって、素敵に強いちかちゃんを発見したら鬼ちかちゃんになるん。
さっき扉を回し蹴りした親ちゃんはとっても素敵な鬼ちかちゃんやったんやで!
ぬん!


「…それはそれは。」


鬼も形無しですね。


「?素敵な鬼ちかちゃんやったんやで?」


かっこよかったよ?
回し蹴りでね、どーんって扉を開いてもうたんやで?
何でかたなし?


「ふふふ、こちらの話です。」
「ぬ?」


笑ったまんま俺の頭をくしゃっと撫でて明智の光秀さんが体を離した。
俺が首を傾げてるのにそんなのお構いなしで目を細めてしまう。
それからそろそろ鬼等を止めませんとってさっきからオールと槍とで戦ってた二人を見るん。
笑った明智の光秀さんはとっても綺麗やと思うけど俺はやっぱり不思議なまんま。
けどちかちゃんとむさし君も気になるし。


おらおらおらァァ!口だけか坊主!
うるせーみてやがれおれさまさいきょう!



気になるし。



「ぬん…」


やあやあそうね。
そうよね。
そろそろ止めやんとこのお部屋大変な事になるよね。
なんかむさし君どこに持ってたんか分からんけどまた石出してるし、ちかちゃんはちかちゃんで鬼ちかちゃんやし。
俺は明智の光秀さんがゆった事も気になったし、明智の光秀さんが離れたんがちょっと残念やったけど頷いてこーちゃんの方にくっついた。



「さて、」



仲が良いのは結構な事ですが、本懐を遂げた事ですしそろそろお暇しますよ。
言いながら明智の光秀さんが鎌を構える。



……
………



ぬ?


ええ?
鎌?
何で鎌?
その鎌何か凄い鎌よね俺知ってるで。
こう切れあじも抜群やけどたまにかまいたちみたいなやつ出るよね俺知ってるで。

ぬん…
やあほんなら何でそんな鎌をむさし君とちかちゃんに向かって構えてるん明智の光秀さんちょっと怖い…!



呪詛的千棘。



ドオオオオオオン!!!



なんか出た…!


技っぽいのん何か出た!
何か出てむさし君とちかちゃんを直撃した…!
まじで…!



ものすごい強さの爆風が吹いて。
もくもくもくもく。
土煙りが舞い上がる。
こーちゃんが捕まえてくれたから俺はふっとんだりせえへんかったけど、それでも体はぐらぐら。
でもそんな足元も危うい爆風の中で明智の光秀さんはとってもすがすがしそうに前髪をかきあげてましたみつあみも揺れてお久しぶりの美人おかみふたたび…!
まじで…!



「ってめぇ明智!何しやがる!」
「おかみおれさまをまきこむんじゃねー!」


わりーのはおにだけだろ!


とっととずらかると言っているんです余計な騒ぎは後にして頂けますか。


これ以上私の機嫌を損ねる様なら放って行きますよ私真樹緒が無事なら他は意外とどうでもいいんですよ。


……
………


…意外でも何でもねェよこのかーちゃんが。
「おかみ!かえんなら真樹緒よこせ!」


おれさまが真樹緒をまもる!


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進んでないですすみませ…!
本当は明智さんとアニキとむさし君をザビーさんの所へやるまで書くつもりだったのですが長くなりすぎたのでここで一端アプです。
元就様と会話するのにどれだけかかってるの本当…!
元就様におにぎりあげなきゃいけないのに。

次回はきっと元就様とお話できるはず。
サンデーの時の記憶はうっすらしかないとかニルのご都合主義出ますすみませ(汗)
週末までに更新お知らせ出来ればいいのですが。
連休はろくに連休できないため今からちょちょいと書きすすめておりまする。
それでは!

  

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