真っ白い壁と混瓦葺屋根の外観は印象的なスパニッシュ様式で、ご近所さんからはまるでモデルハウスみたいねともっぱらの評判だ。
家に入るとすぐに広がるリビングダイニングは開放的な吹き抜けで、兄弟全員のお気に入りの赤いソファーもここに置いてある。
そんなダイニングを見渡せる使い勝手の良いカウンターキッチンには朝、いつも一番上の新が立って温かい朝食を用意していた。
「おはようお兄ィ。」
「おう。」
おはよう。
兄弟の両親は仕事の都合で海外に住んでいる。
二人揃って大きな研究室で大きな研究に関わっているので、正月やお盆といった大型連休以外では中々日本には帰ってこない。
兄弟三人だけで過ごすのも今年で十年を過ぎた。
長男である新も手慣れたもので、朝一番に起きて朝食と弟と妹二人分の弁当を用意するのが日課になっている。
十代の中頃から一家の台所を任されていれば料理のレパートリーもそれなりで。
今日も今日とて二つの弁当箱を米とおかずで一杯ににし、デザートに苺なんかも切っちゃったりなんかして腕を振るう。
弁当の用意が終われば朝食の準備をと、パンを焼きベーコンと卵をフライパンに広げてところで妹のひまわりが起きて来た。
「うち先、洗面台借りるなぁ。」
「飯冷めへんうちに戻れよ。」
「はーい、」
大きな欠伸をしながらひまわりは台所を出る。
時刻は六時半。
そろそろ弟が起きてこなければいけない頃なのに、けれど二階へ続く階段はそんな気配も無くしんと静まり返っている。
「あの阿呆。」
また二度寝しとるな。
あれだけアラームは十分おきに三回は鳴らせェゆうたはずやのに。
寝る前毎回言い聞かせては「もーお兄うるさいー分かってるし!」とやたら自信ありげに胸を張る弟のどや顔が頭を過り新は力任せにパンを切る。
焼けたパンがまな板で跳ねた。
「真樹緒―――!そろそろ起きろや!」
朝やぞ!
そう声を張り上げれば二階からごとんと鈍い音が。
ベッドから転げ落ちたなと思わず首を振って、後二回はこれを繰り返さなければならない予感に新は更に深いため息をついた。
リンク無 次
←book top
←キネマ目次
←top