「ちかちゃんちかちゃん、姫ちかちゃーん、」


ぬんぬん。
ちかちゃんと一緒に真っ暗な通路をずんずん。
どこまでも続く真っ暗な通路をずんずん。
このまま出口見つからんのやろうかって思いながらもやっぱりずんずん。
特別な隠し扉やってゆうてたのに特にそんな特別な事はおこらなくて何だかちょっぴりひょうしぬけな真樹緒です。


「あなたのおうちはどこですかー。」


いぬのおまわりさんを姫ちかちゃんにかえ歌しながらこんにちは!


「おうちーを聞いてもわからない、」


なまえーを聞いてもわからないー。
はーい、ほんならサビいくよー。
さんはい。



にゃんにゃんにゃにゃーん。
にゃんにゃんにゃにゃーん。


「なーいてばかりいーる、こねこちゃん!」


ぬん!
こんにちは!


「西の鬼をつかまえて子猫ちゃんたァ、随分な言われようじゃねぇか真樹緒。」
「姫ちかちゃんが可愛くておきにいりなん。」


とっても俺のお気に入りなん。
やからね、ほんまは迷子のこねこちゃんなんやけど、姫ちかちゃんにかえてみたん。
槍を肩にかついで笑ってるちかちゃんに笑い返した。
これ俺のおったとこで歌われてた童謡なんやで、って繋いでる手を振ってみる。


ほら、さっきはなんだかおばけの歌やったから。
暗いところでおばけの歌とか歌ったらもしかしたらもっと怖くなるかもしれへんやんか?
せっかく手繋いでちかちゃんを守ろうと思っても、ちかちゃんの気持ちがおばけでしょんぼりしてたらあかんやんか?
やからちょっと気持ちを盛り上げようとおもってー。
今回は可愛らしい感じのんにしてみました!


「そうかいそうかい。」
「ぬん!」


ちかちゃんが笑ってくれたから俺もご機嫌になってまた前を向いた。
気持ちが盛り上がってくれてたらええんやけど!
こう同じ景色ばっかり続いてたら冒険もちょっぴり飽きてしまうしね!


ぬん、でもね。
まだまだ暗い通路はずうっと続いててね、さっきから全然変わりがないん。
曲がったりちょっとした坂はあるけど分かれ道なんかは無くって、ちかちゃんと二人迷う事もなくずんずん進めてるのは嬉しいんやけど。


「…ぬう、」


やあ今どこらへんなんやろう。
お城のどこらへん歩いてるんやろう。
明智の光秀さんやこーちゃん、むさし君らは無事かなあ。
それに元就様も。
ザビーさんの声はさっきどこからともなく聞こえて来たけど、肝心の元就様がどこにおるんかいっこも分からんのよねー。
ザビーさんに聞く方がええんやろうか。
教えてくれるかなあ、元就様の居場所。
でも聞こうにもそのザビーさんもどこにおるか分かれへんしね。
声しか聞こえやんかった訳やし。


ぬーん。


「あ、そうやちかちゃん。」
「あン?」


どうしたい。


「元就様ってどんな人?」


やあやあそういえばね、俺知らんかったなって思って。
安芸を治めてる偉い人ってゆうんしか知らんかったなと思って。
顔も見た事ないしー、若いんかお爺さんなんかも知らんし。
ちかちゃんとどういう関係かも知らんしやあ。
よかったら教えて欲しいなってゆうか!


「あァー…毛利なァ、」
「島津のじっちゃんみたいにでっかいおじいちゃん?」


それともちかちゃんみたいなムキムキなお兄さん?

ちかちゃんを見上げたら顎のところに手をあててうーんって。
ちょっぴり眉間にしわを寄せてね。
たまに首をくいっと捻ってそれからまたうーんって唸ってしまうもんやから、あれちかちゃんは会った事あるんやんなあ?なーんて俺も首をひねりながらちかちゃんがお返事してくれるまでじーっと見上げた。


「じーさんじゃァねえな。」


でっかくもねえぞ。


「へー…」


やあほんならどんな感じ?
笑うちかちゃんにさっきとは逆っ側に首をひねって聞いてみる。


「あいつァ、根っからの策略家だ。」
「さくりゃくか…」
「勝つ為の手段は選ばねえ。」


勝つ為ならどんな手でも使ってくるっつーのか。
あいつの詭策は裏の裏を突いてくる。
しかも自軍の兵士さえ顧みらねぇ恐ろしい策だ。
そりゃあ詭策も時には必要だろう、だが真っ向勝負が筋の俺にゃァ何つーか納得できねぇっつーか腑に落ちねえっつーかなぁ。


「好かねえな。」
「ぬん…」


ちかちゃんがしかめっつらのまま肩をすくめた。
口をぶうって突きだして「あの人を見下した目も気に入らねー、」なんて言いながら元就様の事を色々教えてくれたちかちゃんやけど、実は元就様と仲いいんちがうかなあ。
なんやとっても元就様の事知ってるみたいやし!


「やあほんなら雰囲気どんなかんじ?」


えーっとね、お顔とか。
背丈とか。
年齢とか。
じっちゃんみたいなお歳じゃないとなるとどれぐらいやろう?
安芸を治めてるってゆうぐらいやから俺と同い年とかはないよね、きっと。


ぬーん。
でも政宗様も若いしなー。
お国治めてるしー、若いしー、とっても男前!
俺のご自慢の政宗様!


「あー…背はそんなでかくねぇな。」


俺よりも小せェし。
まあ真樹緒ほどちみっこくもねぇけどな。


「やあちかちゃんばかにせんとってや!」


俺今成長期なんやで!
これからぐぐんと身長かって伸びるんやから。
姫ちかちゃんや明智の光秀さんもびっくりなぐらい背高なるんやから。
子供の成長期って大人が考えもつかんぐらいの速さを見せるんやで!
くくくって笑ったちかちゃんに今度は俺が口を突きだしてぶう。
もー失礼しちゃう!って見上げてた目もじろり。
あんまり背の事は気にしてへんけどそんな事ゆわれたら気ーわるいやんかー。


「おうおうそうだな、真樹緒はでっけぇ男だな。」


悪かった悪かった。
繋いでた手を離してちかちゃんが頭を撫でてくれる。
笑いながらおっきい手で撫でてくれる。


「…ぬん…」


でも何や慰められてる感じが全然せえへんのは何でやろうきっとちかちゃんがとっても素敵な笑顔で笑ってるからやろうけど…!
でっけえって多分背丈の事やないからやろうけど!

てゆうかちかちゃんいっこも悪いとおもってへんよね。
でっけぇ男にでっけぇって言われてもあんまり嬉しくないねんで!


「もー…」
「くくく…毛利の話じゃなかったのか。」
「は!」


ぬんぬん。
やあやあ。
俺の悪いくせ。
いつの間に俺の身長のお話に。
あかんあかん違うん。
今はこれからお迎えに行く元就様のお話なん。


「ちかちゃん続けて!」


背は分かったから今度はお顔。
どんなお顔してるん元就様。

ちかちゃんと離れてしまった手をもう一回握ってぶんぶん振って。
ぐいっと持ち上げたらちかちゃんにもっと持ち上げられてしまってちょっと足が浮いた。
ものすごく簡単に足が浮いた。
慌てて両手でちかちゃんの手を掴んだら面白そうにもっと上にあげられる。
ちかちゃん力持ち!


……
………


おもしろい…!


でも足ぶらぶらしてちょっと不安定やけど!


「ちかちゃん力持ちやねえ…」


姫ちかちゃんやのにー。
俺を片手でもちあげれるなんてー。
そりゃあちかちゃん筋肉むきむきやけどやー。
ここからでも素敵な腹筋が見えてるけどやー。


「軽ィ軽ィ。」
「ぬん、今度反対っかわにむさし君ぶらさげて明智の光秀さんに見てもらおー。」


もちろん俺はこっちっかわにぶら下がるつもりやけど!


「明智の呆れた顔が目に浮かぶな。」
「でもちゃんと見てくれると思うん。」
「あいつァお前に甘いからなァ。」
「ぬん!」


俺の近江のお母さんやからね!
厳しくて怖い所もあるけどほんまは優しいん。
ちゃんと優しいん。

そおっとそのまま下に下ろして貰って俺は笑う。
約束ね、ってちかちゃんと手を繋いで。


ぬんぬんそしたら。
ぬんぬんほらほら。
お話元就様に戻さなきゃね!


「元就様ってどんなお顔?」
「顔ねェ、」


そりゃあまあ端正な顔してると思うぜ。
だが無表情な面の皮でよう。
まあ何考えてんのかさっぱり分かんねぇけどな。


「目がな、」
「め?」
「あいつの目は獣だ。」
「けもの…」
「大人しそうに物事を静観しているように見えて腹ン中じゃでっけえ野心を抱えてる。」


時を読み、場を読み、好機とあらばなぶる様に相手に近づき仕留めにかかる。
おっかねえ野郎だ。


「へー…」


さっきまで笑ってたちかちゃんが急にまじめな顔になって正面をじっと見た。
繋いだ手の力もちょっぴり強い。
ちかちゃんと元就様はね、長い間海を挟んであんまり仲よくなかったんやって。
ちかちゃんの考えてる事と元就様の考えてる事が正反対で分かり合う事は無いと思うんやって。

でも色々気になってやったんやって。
色んな事が色々気になってやったんやって。
そうゆうた時のちかちゃんはいつもの笑顔で俺に笑ってくれた。


「元就様…」


ぬん、元就様。
何や怖い印象やけどちかちゃんが笑うから、本当はそんなに怖くないんかもしれへんよ。
あの笑顔にはね、ちょっぴり心配やなあってゆう気持ちも入ってると思うん。
心配してもらえる人がおるってゆうんはその人が大事に思われてるってゆう事やと思うん。
やからね、お近づきになるのは難しいかもやけどお話ぐらいはできるかも!
お話は聞いてもらえるかも!
一緒にお船乗って帰って来て貰わなあかんしやあ。
俺がんばる!

むん!って左手に力を込めて。
けついを新たにしてみたところで。




「お、」
「ぬ?」
「見ろよ真樹緒。」
「?なに?」
「いかにもっつー扉だと思わねえか。」
「へ?」


正面にはなんてゆうか、ちょっと、ぬん。
すすけた感じの壁に派手なふすまみたいな扉が。
お花の絵がかかれてあって、つつじ?つばき?ようわからんけど可愛らしいお花が描かれてあるふすまみたいな扉が。
この隠し通路、入る時一体どうやって入ったか分からん感じやったのになんやこう今すぐにでも観音開きできそうな扉が。
えええこんな簡単なんでええん。
すぐに出れそうな扉でええん。


「やっと出口かい。」


真樹緒、手ェ離すんじゃねえぞ。


「ちかちゃん?」


ぬん?
どうしたんちかちゃん。
あの扉、すぐ開きそうやけど。
真ん中からぱかっと開きそうやけど。
押したら開きそうやけど。
やあそんな手ぎゅうっとにぎっちゃって。


胡散臭ェ扉はァ…
「う?」
正面からぶっ壊す!!


ちかちゃんが槍をふりかぶった。
ふりかぶって何か槍をじくにして思いっきり。
ぬん…思いっきり扉を。


「十飛…!!」


キックで。
それはもうほれぼれするようなキックで。
ていうか回し蹴りでごかいちょうしてくれました姫ちかちゃんすごい…!
姫ちかちゃんやのにすごい…!
そういえば西海の鬼ってゆわれてるんよね確か明智の光秀さんゆうてたよやあほんなら鬼ちかちゃん…!


鬼ちかちゃん…!


そんでもってごかいちょうした扉の向こうはとっても広い大きな部屋で。
薄暗いのはさっきまでと同じやけど天井が高い大きな部屋で。
その大きい部屋の真正面には。



我が名はサンデー毛利、愛に目覚めし者!



ザビー様に歯向かう者は我が智略の下に跪くがいい…!



……
………



あ?
ぬん…


なんか。
なんか。
ばらに囲まれたおひげのおっさんの絵をバックにきらきらしてる人が。
緑で、わっかもって、愛で、ぬん。
さんでー、


……
………


サンデーもうり…!
毛利元就様…!




ちかちゃん元就様俺が思ってたんと何かちがう…!
安心しな俺が思ってた奴とも違うからよ。


コエーもん見たな真樹緒大丈夫か。
俺の頭をぐわっしぐわっし撫でるちかちゃんの正面、俺らとは反対っ側、も、元就様を挟んで向こう側。



…何ですあれは私への挑戦ですか。


いい加減許容量というものも限界なのですが。


「あー?なんだあいつへーんなかっこだなー!」


おいおかみ!
あいつだれだ。
やっつけてもいいのか。
おかしなこといってっけどよ!


あなたは今まで生きてきて悩んだ事などないのでしょうね。


お幸せな事です。


「(…)」


あれは!
あれは…!


明智の光秀さん!
むさし君!
こーちゃんー!!
みんな…!


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やっとサンデー毛利でました愛の伝道師…!
PS2を繋ぐのが面倒でプレイ動画がん見です。
見るうちにちょう愛しくなりましたサンデー。
キネマ主はもっととっつきにくい武将さんをイメージしていたのに愛とか言っちゃってどや顔してるサンデーさんが出て来たのでちょっぴりショックを受けています(笑)
アニキは顔ひきつっていると思います。
でも次回はとりあえずサンデーを撃破。
戦闘シーンはきっと書けないのですぱっと撃破。
多分サンデーだからむさしくんに任せていても大丈夫だと思います。

おかみとこーちゃんも同じ部屋にやってきましたし。
これからさくさく進んで行きたいです。
おかみそろそろキレそうですし!
それでは!

  

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