「おいそこのおに!おれさまとしょうぶしやがれ!」
アあァん!?


むさし君が明智の光秀さんの事をうっかりおかみって呼んでしまって。
そんなつもりなかったんやけど原因をつくってしまったんは俺やからむさし君と一緒に明智の光秀さんに思いっきりおでこをひっぱたかれちゃって。
思わずむさし君といっしょにおでこをかかえて座り込んでしまったんやけど、そんなちょうどいい感じのタイミングで明智の光秀さんの新しい鎌が出来あがってやあ。
ちょっとご機嫌を直してくれた明智の光秀さんとこーちゃんとむさし君と、お屋敷に戻って島津のじっちゃんにご挨拶。
一日泊めて貰ってばびゅんと四国のあにきのところに戻って来ました真樹緒ですこんにちは!


ぬん…


やあ帰って来たんはええねんけど。
おひさしぶりにあにきに会えたんはとっても嬉しいんやけど。
感動の再会もそこそこにむさし君があにきに向かって走っていっちゃってー。
俺がお船の上であにきの事教えたら何だかむさし君が乗り気になっちゃってー。

俺があにきにただいま!って飛び付く前に例のオール持ってむさし君がおれさまさいきょう!ってあにきに全速力で走っていってしまったん。


「せーい!おれさまじるしのおくのて!」
「何だァこの坊主!」


おい明智ィ!!
てめぇら何面倒臭ェもん拾ってきやがった…!



心外な。


勝手について来たんですよ。
拾った覚えは毛頭ありません。


「むさし君ってゆうん!」


強い人がちょう好きやねんで!
お船であにきのお話したら何だか乗り気でやー。
あにきと手合わせしたいみたいなん。
でもたまにお話全然聞いてくれやんからあにき気をつけてねー!


「(こくこく)」



……
………



見てねェで止めろよ…!


あにきがイカリでむさし君のオールを受け止めた。
ちょっとびっくりしたむさし君がそれでもにししって笑って飛び上がるとあにきに向かって石を投げる。
あにきはあにきでその石をとっても上手に打ち返してて。


「明智の光秀さーん。」
「何ですか。」
「あれ、止めやんでもええの?」


ほら、あにきとむさし君。
飛んだり跳ねたりしてるけど。
石なげたり弾いたりしてるけど。
実はここもうザビーさんとこへ行くためのお船の上やけど。
お船の上であんなことしてたら危なくない?
いくらあにきのところの頑丈なお船やってゆうてもそこらじゅうに石あたったら危なくない?
それに俺、一回あの石でおでこ打ってるからとってもおそろしいんやけど…!
ほら見てそろそろこっちにあの石飛んでくるよ…!


「安心なさい。」


あなたには当てません。


ガキィン!


「(こくり)」


キンキンキン!



……
………



「あたらへんけど結構いっぱいこっちに飛んでくるよ…!」


むさし君の石!
明智の光秀さんとかこーちゃんが石弾いてくれてるけど結構こっちにも飛んできてるよ!


ぬん…


こーちゃんと明智の光秀さんの間にはさまって、頭の上とか目の前で弾かれる石を見た。
そよそよ前髪をなでていく風はとっても気持ちいい。
風のむこう青い青いお空もすごく綺麗。
そんな爽やかな海の上でたまにガッ!っとか、ゴツッ!とか聞こえてきて俺が全然爽やかな気分になれへんのやけど…!
あにきうまいこと避けてるけどちょびっと当たってるんちがうんまじで!


「こら明智ィ!いい加減この坊主何とかしやがれィ!」
「鬼。」
「ああァん!?」
「暫く坊やはお任せします。」


私、これから得体の知れない城へ行くにあたって真樹緒と話しておかなければならない事がありますので。



……
………



ぬ?
あァ?


ええ?
俺そんなお話はつみみ。
大事なお話あるとかはつみみ。
それに何か明智の光秀さんちょっと笑顔が怖いよさっきまで普通な感じの美人おかみとか近江のお母さんやったのに今そんな顔でお話あるとか俺きんちょうするんやけど…!

あにきとむさし君がお船の上を飛んだり跳ねたりしてる傍で明智の光秀さんが俺の頭をぽんぽん叩く。
俺がおそるおそる見上げてるってゆうのにやっぱりちょっと怖い笑顔で笑いながらぽんぽん叩く。
すぐそばにおるあにきとむさし君の声も聞こえやんくらい俺はどきどき。


そらそらそらそらおにー!


もうこうさんかー?
よえーよえー!
真樹緒はおめーのことつえーっていってっけどたいしたことねーな!
おれさまのがつえー!


あァん!?もう一遍言ってみやがれこの糞餓鬼ィ!


鬼ヶ島の鬼を馬鹿にするたァいい度胸じゃねぇかあァ!?
そこまで言うならこの鬼が食らってやらァ…!



ぬん…



やあちょっとはやっぱり聞こえるんやけど。
ものすごい激戦の音が聞こえるんやけど。
船に乗ってる海賊の兄やんらもちょっと慌ててるんやけど。



「真樹緒。」
「…はぁーい、」


ちらって俺を見下ろす明智の光秀さんを俺もちらっと横目で見上げた。
お隣におるこーちゃんの後ろにいつでも隠れられる様にしっかりこーちゃんと手を繋いでね。
優しいこーちゃんはそのまま頭を撫でてくれるけど、俺はまだ明智の光秀さんにどきどきしたままなん。


なあに。
なあに明智の光秀さん。
一体そんなにおそろしい笑顔でどうしたん。
せっかくの美人おかみが台無しやで!
ゆわんけど!
美人おかみでおでこふしょうしたからゆわんけど!


「真樹緒、」


ザビー教とやらの所へ到着する前に、あなたに言っておく事があります。

やっぱりにっこり笑顔で明智の光秀さんが俺の前にしゃがんだ。
肩をがっしり掴んでちょっと掴まれた所がいたい。
そんで正面の明智の光秀さんがちょう怖い。
何かこう、なんとも言われへん感じの空気がちょう怖い…!


「…なに?」
「例の城でのお約束です。」
「おやくそく?」
「ええ。」


言いながら明智の光秀さんが指を一本立てた。


「一つ、見知らぬ場所で走り回ってはいけません。」


俺はじっとその指と明智の光秀さんを交互に見ながら(やあほら明智の光秀さん笑ってるのに何か笑ってへんやん?やからちょっと様子をうかがってね)そろっと頷いて。


「はい。」
「二つ、無闇矢鱈と怪しげな物に触れてはいけません。」


明智の光秀さんがもう一本指を立てる。
それにもちゃんと明智の光秀さんの目を見ながら頷いて。


「はい、」
「最後に。」
「?はい?」


明智の光秀さんの指も三本目。
肩を掴んでる手にもちょっぴり力が入った。
そのまま更ににっこりが深くなって。


無闇矢鱈と坊やについて行ってもいけません。
ぬん…
いいですか、坊やがあちらで何をしでかしても私や忍から離れるんじゃありませんよ。


お返事は。


「ええええ、なんで…」


なんで明智の光秀さん。
何となく分かるような気もするけどなんで明智の光秀さん。
むさし君も初めましてな場所でそんな無茶とかもせえへんと思うよおれ。
行った事ないところで暴れたりはせえへんと思うよおれ。
ほら、むさし君も武将さんやし。


「あれに常識や良識が通じると思ったら大間違いですよ。」


お返事は。


「ぬん…」


俺のむさし君フォローをものともせず明智の光秀さんが肩をぎゅって握って来る。
今度は全然全く笑ってない顔で力を込めて来る。


お返事は。
はい…!


背筋をぴーんって伸ばしてきをつけ。
とっても真面目な顔をした明智光秀さんにお返事。
分かったって何度も頷いて。


「アニキー!島に到着しましたぜー!」


聞こえたのは海賊の兄やんの声。
俺も明智の光秀さんもこーちゃんも、そろってその兄やんの方を見た。
さっきまで暴れてたむさし君もぴたっと止まってお船の帆につかまって兄やんの指差す方を見てる。
岸壁の上に建ってるお城は何だかとっても洋風で、見えてるお庭も何だか洋風で、外国のお城みたいなん。


「……真樹緒、」


すごい。
すごい。
ちょうすごいお城!
青い空白い雲をバックに森の中にある古城!みたいな!
お城の中にはすごい秘密が隠されてる!みたいな!
なにそれテンションあがる…!


…真樹緒、


両手をぎゅっとにぎったら胸がどきどき。
お城を見るたびに胸がそわそわ。
何だか飛び上がりたいぐらいにテンションが上がって。
叫び出したいぐらいの冒険な雰囲気にテンションが上がって。


聞いていますか真樹緒、
よーし!いっくぜー!


真樹緒!
おれさまについてこい!
つえーやつをぶっとばしにいくぞ!


ういういりょーかーい!


ぬんぬん了解!
行こうむさし君!


同じようにわくわくそわそわしてたむさし君と手を繋いでダッシュ。
大丈夫お船下りる時はむさし君俺の事ちゃんとだっこしてくれたから!
お忍びこーちゃんもびっくりなすばしっこさでお船下りてくれたから!
お船を降りたらすぐそこに見えるお城に俺とむさし君は一直線。
お隣走ってくれてるこーちゃんも一直線。
冒険のにおいがぷんぷんするお城におじゃましますー!



……
………



…真樹緒、
「おーおー、もう姿が見えねェぜ。」


早ェな。


……
………



ちょっとお待ちなさいよあなた方…!


真樹緒に至っては坊やについて行くなと今、まさに今!私と約束したばかりでしょう一体あれは何だったのか…!


「だいじょうぶー!」


明智の光秀さんだいじょうぶー!
俺、あにきにもらったおにぎりとすいとうもちゃんと持って来たからだいじょうぶー!
あんしんして!


あなたは一体これから何をしに行くつもりですか…!


物見遊山にやってきてる訳ではないのですよ。
何度も言いますが私あなたが大事なんです。
自分でも信じられない程に。
そこのところをあなたも自覚して行動を慎みなさいよいい加減に…!


-------------

最近明智の光秀さんが気の毒ですね…!
最後明智の光秀さんは明智の光秀さんとは思えない程のダッシュでキネマ主を追いかけたと思います。
ふだん運動とか嫌いそうなのにおかみ…!

とっても駆け足でついた四国ですが、とっとこ毛利さんのところまで走ろうと思います。
そのためにプレイ動画みたのだからサンデーに腹かかえて笑ったのは内緒…!
次回はキネマ主チビザビーを触ろうとして明智の光秀さんに怒られます。
お土産に欲しがってアニキに作ってもらえと怒られます。
それからサンデー!
最後にメカザビーにむさし君が喧嘩吹っ掛けてめでたし…!
(めでたし!?)

がんばります…!

  

book top
キネマ目次
top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -