「こーちゃんあーん。」
「(あー)」
「よくかんで食べてね。」
「(こくん)」


ぬんぬん。
ではでは俺も。


「もぐ、」


もぐもぐ。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
もぐもぐ。



「おいしい!」
「(こくこく)」


むさし君があのザビー教の人を追いかけていっちゃってこーちゃんと二人ぼっち。
でもむさし君、すぐもどってくるよってお約束したから俺とこーちゃんはまだあつあつのお芋のかりんとう食べてひと休みしてます真樹緒ですこんにちは!
ぽくぽくもぐもぐかりんとう食べながらこんにちは!
口の中へ入れたとたん甘い香りが広がるかりんとうはかめばかむほどおいしくって俺をとっても幸せにしてくれますうまし…!


「こーちゃんこーちゃん、これ見て。」
「(?)」


かりんとうをもぐもぐ食べながらお膝の上に置いたふろしきづつみをこーちゃんの前で開く。
中に入ってるのは割れ物やからそおっとね。
一枚ずつゆっくり開いて、出て来た木の箱を一つもって。


「これね、さつまきりこってゆうねんて。」


薩摩のお国で作ってるきりこってガラスなんやって。
色んな色があってとっても綺麗やったん。
政宗様らへのお土産にって思ってね。
そっと木の箱のふたを開いて見えたのは青いおちょこ。
こーちゃんに見てってそおっと持ち上げて見せる。


ぬん。
これは政宗様のんなん。
青いやろう?
やから政宗様。


「綺麗やねえ。」
「(こくん)」
「他にもあるん。」


茶色いのはこじゅさんで、赤いのはゆっきー。
もっと赤いのはお館様やし緑色はさっちゃん。
それから紫はあにきやろう?
一個ずつ箱から出してこーちゃんに見せる。
政宗様のところへ帰った時にお土産で渡すねんでって言いながら。
喜んでくれるかなー。
皆喜んでくれたらええなー。
こーちゃんにどう思う?って聞いたらこーちゃんがちょびっと首をひねってた。


「こーちゃん?」


あれ?
ぬん?
どうしたんこーちゃん。
おちょこ。
けっこういいチョイスかなーって思ってんやけど何か気になる?

やあもしかしてさっちゃん?
さっちゃんがお酒のめるかどうか?
ぬん、さっちゃんお忍びさんやけど前宴会の時ふうつにおったしお酒飲めると思って、おれ。


「(ふるふる)」
「ぬ?」
「(…、)」
「お?」
「(…、)」
「う」


ぬ?
おう、?

聞いたらこくんって頷いてまたこーちゃんのお口がぱくぱく動く。
俺はそれをしっかり聞こうとこーちゃんのお口をじーっ。
なになにこーちゃん。
何をお話?


「(ぱくぱく)」
「ぬ?」


お う しゅ う の
は は


「奥州のはは?」
「(こくん)」


ぬんぬん。
奥州の母であってるんやって。
奥州の母。
奥州のお母さん。


「おシゲちゃん?」
「(こくり)」


ぬん。
おシゲちゃんがどうしたん?


「(こつん)」
「きりこ?」


こーちゃんがおシゲちゃんって言いながらさつまきりこの箱をこつんって叩く。
おシゲちゃんとさつまきりこ?
こーちゃんがじって俺を見た。
俺を見て、きりこを見て、そんでからもう一回奥州のははって、おシゲちゃんって、ぬん…



……
………



は…!!!


ぬん。
待って。
ちょっと待って。
俺とっても大事な事忘れてたんちがう。
何だかとんでもない事忘れてたんちがう。

やってやで。
お膝にあるきりこが入った箱をもう一回一つずつ並べてみる。


「これが政宗様、」


その隣がこじゅさん。
ゆっきーとお館様、さっちゃんで。
あにき。


ぬん…


あれおシゲちゃんの分は。
じっと並んだ箱を見て数を数えて。
はい右からー、ひーふーみーよー、いつ、むー。



……
………



俺なんてこと…!!


忘れてた。
俺おシゲちゃんのお土産わすれてた俺何てこと…!


「こーちゃん…!!」


どうしよう俺おシゲちゃんのお土産買うん忘れてた大事な奥州のお母さんやのに…!
ていうかちょっと待って鬼さんの分もわすれてるんちがう俺なんて事…!


「(なでなで)」
「ぬーん…」


きりこを片付けてぬんぬん。
風呂敷に包み直してぬんぬん。
ちょっと落ち着くためにこーちゃんにかりんとう食べさせてもらってぬんぬん。

やあもうこれはもう一回さつまきりこのお店に行くしかないよね。
おシゲちゃんのきりこ買いにいくしかないよね。
鬼さんのきりこ買いにいくしかないよね。


「こーちゃん、こーちゃん。」
「(?)」
「むさし君が戻ってきたらちょっと行ってほしいところがあるん。」


お願いできる?
ここからそんなに遠くないから。
かりんとうもぐもぐしながらこーちゃんにお願い。
本当はもっと町を探索したかったんやけど、今行っとかへんかったらもう日が暮れてしまうし。
後でむさし君にもお願いして。


「よんだかー?」
「ぬ?」
「みやもとむさし!けんざーん!」
「むさし君!」


俺がぬんぬん予定を立ててたら目の前から声が。
顔を上げたらすぐ近くにむさし君。
にかって笑ったむさし君。
ぬんむさし君!


「やあもうザビー教の人はええの?」
「あ?おう。あいつよえーの!」


てごたえねーの。
にげてばっかでよー。
おもしろくねーからいっぱつなぐってもどってきた。


ぬん…


一発なぐったんや。
弱かったけど一発なぐってきたんやむさし君けっこうシビアよねけろっとした顔してるけど実はやる事やってくるよね…!


「だってよー。」
「ぬ?」
「真樹緒、おめーあいつにてーだされたんだろ。」


……
………


…ぬ?


あれ?
そんな事ゆうたっけ?
俺、ゆうたっけ?
声はかけられてちょっと腕ひっぱられたけど別に手出されたとかは無かったんやけど…
ぬん。
大丈夫やねんけど。


「やくそくだかんな!」
「やくそく?」
「真樹緒はよえーから、おめーにてーだすつえーやつはおれさまがたおしてやるっていったろ。」


さっきはおしのびのあいてしてたからおそくなったけどよー。
これからはおれさまがおめーをまもってやるからあんしんしろよ!


「わあ…!」


むさし君が笑いながら俺をもちあげる。
俺とおんなじ背ぐらいってゆうのに軽々持ち上げる。
俺は急に体がういてびっくりしてしまって。
むさし君!って俺がさけんでもむさし君はにんまり笑ったまんま俺をぐーんとむさし君の頭よりも高くもちあげてしまう。


「むさし君!」
「かりーな真樹緒!」


おめーちゃんと食ってんのかー!


「毎日いっぱい食べてるもん…!」


さっきもかりんとう食べたばっかりよ…!
ていうかその前にもお豆腐でんがくとか食べたよ!
それに町に来る前に朝ごはんももっくり食べて来たし。
むさし君もおったやん一緒にごはん食べたやんか俺ちょっと足ぶらぶらしてとってもバランス悪いからそろそろ下ろしてほしいな…!


「(……)」



……
………



バシッ!!


「いってー!」
こーちゃん…!!


俺がお願いしてるのににんまり笑ったまんまやったむさし君の頭がきゅうにへっこんだ。
後ろからこーちゃんにばしっとチョップされてへっこんだ。
へっこんだむさし君はそのままぷるぷる。
ぷるぷる震えながら痛みに耐えてるん。


「むさし君…」
「っのやろー…」


あにすんだおしのび。


「(…)」


でも両手には俺を持ってたもんやからむさし君は前みたいにこーちゃんに飛びかかっていかんで、じっとり睨むだけ。
いーって歯を食いしばってこーちゃんを睨むだけ。
でも睨まれたこーちゃんは涼しい顔でむさし君を見下ろしてるん。


「ぬん…」


なにこの空気。
なんなんこの空気。
むさし君が俺をだっこしたままこーちゃん睨んで、こーちゃんがちょっといつもと違う雰囲気でむさし君を見下ろして。
とっても重たい空気でちょっと俺いたたまれやんのやけど…!


「(…)」


て を
は な せ


「おことわりでー。」


真樹緒はおれがまもんだ。
おしのびはおよびじゃねー。


……
………


「(…)」


ベシッベシッベシッ!!


だっだっだっ!!!
ふえた…!


こーちゃんのチョップ増えた!
まじで!
何で!


やあやあこーちゃんどうしたん。
むさし君もどうしたん。
さっきのふんいきもなんてゆうかちょっぴりいごこち悪かったけど今のアイコンタクト中になにあったんもっとふんいき険悪よ…!
そんでもって何回もゆうけどそろそろ俺下ろしてもらえると嬉しいわ!
むさし君が力持ちやってゆうのは痛いほどわかったけどやっぱりほら俺足ぶらぶらしてバランスが!
そしてこーちゃんの視線も何だかアレやし…!


「むさし君、むさし君。」
「あん?」
「ほらかりんとう食べよう。」


かりんとう。
むさし君だけ食べてへんかったやろう?
むさし君がチョップされたところをなでなで。
大丈夫?ってなでなで。


「はい、いたいのいたいのとんでけー。」


それからおまじない。
いたいのいたいのとんでけってね。
撫でながらおまじない。
このおまじない結構きくねんで。
前政宗様にもやったけど結構ちからをはっきするねんで。


「いたいの、いたいの、とんでけ。」
「お、」
「最後にに甘いもんたべたらかんぺきよ!」


ほい、やからあーん。
おまじないやっててあげるからむさし君あーん。


「あ?」
「あーん。」


何だかびっくりしてるむさし君に笑ってかりんとうをふりふり。
ちょうどお口を開けたまんまやったからその中にえいって放りこんだ。
もぐ、って動いたお口に頷いて。

ぬんぬんさあどうぞ。
たべてねかりんとう。
まだあつあつやろう?
さっき買ったばっかりやから!


「…うめー。」
「ぬん!よかった!」


よかった!
はいほんなら今度は俺を下におろしてね。
こーちゃんの視線も気になるけど、俺ちょっといかなあかんところがあるってゆうか。
戻らなあかんってゆうか。
お願いしたらもぐもぐお口を動かしながらむさし君が俺を下ろしてくれる。
かりんとう食べながらゆっくり地面に下ろしてくれる。


「真樹緒はやっぱりへんなやつだな。」
「ぬ?」
「へんなやつだ。」


そしたらむさし君がちょっとまじめな顔で(やあお口にかりんとう入ってるからまだもごもごしてるんやけど。むさし君お口に食べ物入ったままお話したら明智の光秀さんにおこられるよ。)俺をじっと見るん。


「おかみのはなしはしてねー。」
「ぬん…」


おかみちがうけどね…!
明智の光秀さんやからね…!

ぬん。
明智の光秀さんのところに戻る前にもう一回お願いするけど明智の光秀さんの前でおかみってお口すべらせやんとってねむさし君。
俺が怒られるから…!



「真樹緒。」
「ぬ?はい?」
「おれさまはじめてだ。」


こんなふーにしてものくったのも。
おめーみたいなちっせーてであたまなでられんのも。


「?そうやったん?」


俺けっこうやるよ?
あーんってゆうやつ。
こーちゃんはもちろん、政宗様とかおシゲちゃんとかとようやるけど。
やあいたいのいたいのとんでけは政宗様しかしたことなかったけどやあ。
ぬん。


嫌やった?
ごめんね。


「ちげーよ。」
「ちがうん?」
「真樹緒。」
「はい?」


むさし君がごくん、ってかりんとう飲み込みながらおでこをさする。
俺がおまじないしたところをさする。
やあまだ痛いんかなぁ。
おまじない足りへんかったやろうか。
ほらこーちゃん伝説のお忍びさんやし力もちょう強いから!
そおっと手を伸ばしたらむさし君にぎゅってつかまれた。
びっくりして顔を上げたらむさし君はやっぱりまじめな顔で。


「おめー、おれさまのことすっ、」


バシッ!!!!


いってー!!!
「むさし君…!」


何かを伝えようとしてくれたんやけどやっぱりこーちゃんに後ろからばしっとチョップされて頭がへっこみましたさっきよりも強かっみたいでむさし君がうずくまったまま震えて立ちあがってくれません…!


「こーちゃん…!!」
「(ぐっ)」
いやいやいやいや…!


そんなすがすがしい顔でおやゆび立てられたら俺どうしてええのか…!


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最後むさし君が言おうとしたのは「おめーおれさまのことすきなのか」です小太郎さんが皆までいわせませんでしたけど…!
聞かれたら好きって答えちゃうからキネマ主。
たとえそれがお友達へのそれでもしんぼうならなかった小太郎さん。
いい加減にしてよと思っています。
むさし君は明確な気持ちはありませんが本能でキネマ主を守ろうとしてくれます。
でもキネマ主が好きって言ったらおれさまも!ってなるので小太郎さんはそれを阻止。

それにしても再会するだけでどうしてこんなにかかるのか…!

次回はおシゲちゃんと鬼さんのお土産と、明智の光秀さんへの結い紐買ってお屋敷に戻ります。
頑張ったら四国にももどれるかもしれないわたし頑張ります…!


  

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