「あ、そっちの青色のんもくださいー。」
「はいよー。」


割れ物だから気をつけな坊主。


「はーい!」


ありがとう!


こーちゃんとむさし君が俺を置いてどこかへ行ってしまって。
ものすごい速さでどこかへ行ってしまって。
暫く二人が消えた方向をじっとながめて俺、途方にくれてたんやけど。
今はお忍びさんの格好してへんこーちゃんやけど実は伝説のお忍びさんやん?
そんでもってむさし君はおれさまさいきょー!やん?
そんな二人がお相手やから俺、追いかけて追いつく事も探す事もできへんくってやあ。
しかたないから一人でてけてけ町を満喫してます真樹緒ですこんにちは!


ぬん。
今はね、お土産買ってたん。
おみやげ。
あにきへのお土産と、政宗さまらへのお土産。
さつまきりこってゆうてね、とっても綺麗なガラスなんやで。
そのきりこのおちょこ買うたん。

おちょこ。
お酒飲む時のおちょこ。
ほら政宗様とかあにきとかお酒飲むやん?
ゆっきーもお酒飲んでたやん?
さっちゃんはどうか知らんけどきっと飲めると思うしー。
こじゅさんも大丈夫。
おとなのおとこやから!

ぬんぬんほらね。
素敵なおみやげやとおもわない!
色んな色があったねんけどアニキは紫で政宗様は青。
こじゅさんは茶色でゆっきーは赤、おやかた様はゆっきーよりも濃い赤でねさっちゃんは緑。
さっちゃんはオレンジと迷ったんやけどー、迷彩ポンチョがさっちゃんのちゃーむぽいんとやから緑にしたん。
みんな喜んでくれたらええねんけど!


「ではでは今度はおいしいもん探しー。」


お土産買ったからね、今度はおいしいもの探しなん。
ほどよくお腹もすいて来たしー、色んなお店からおいしそうな匂いするし!
さつまきりこのお店のおっちゃんから受け取ったお釣りをきんちゃくに入れて俺はきょろきょろ。
ちょっとずっしりする風呂敷を抱えながらきょろきょろ。
それからくんくん。


くんくん。
くんくん。


「ぬん!甘いにおい!」


人がいっぱいの通りを小走りではしる。
俺よりもおっきい人にぶつからんようにちゃんと避けて、でも手に持った風呂敷はしっかり守りながら甘いにおいを探した。


「多分こっちやと思うんやけどー。」


ぬーん。
曲がり角を見つけたから試しに曲がってみる。
魚が入った桶を揺らしたお兄さんとぶつかりそうになってびっくりして。
「大丈夫か―坊主―悪かったなー」なんて爽やかに去っていくお兄さんに「俺こそごめんなさいー!」って手を振った。
気ついたら近くなったにおいに俺のお鼻もひくひく。
甘いにおいにお鼻がひくひく。
どこ!ってぐるっと辺りを見渡してみたら。


「かりんとう!」


屋台みたいなところで腕まくりしたおばちゃんがかりんとう作ってました!
あまいにおいのもとはかりんとう!
おいしそう!
お鍋の中でじゅわじゅわ揚げられてて何ていいかおりー。
とっても俺の食欲をそそってくれるん。
お鼻はひくひしくしたまま俺はお店をのぞきこんだ。


「かりんとう一袋くださいなー。」
「いらっしゃい坊や、揚げたて持っていきなー。」
「あげたて!!」


お店のおばちゃんにかりんとうの入った袋を風呂敷の上に乗せてもらったら、ぷわんって甘いにおいが香る。


ぬーん。
おいしそうー。
ようみたらお芋のかりんとうなんやねー。
揚がったお芋にアメが絡まってちょうおいしそうー。
あ、ごまもかかってる。
いい匂い!


「ほらこれはおまけだよ。」


口あけな。


「ぬ?」


くち?


「栗の甘露煮食べれるかい?」
「くり!」


たべれる!
たべる!
欲しい!
あーん!


かりんとうを揚げてる隣のお鍋にはぐつぐつ栗が煮こまれてたん。
ほんでね、つやっつやの素敵な栗がたくさん甘いにおいをさせてるん。
かりんとうの横でこんな素敵な出会いがあるなんてー。
俺が口を思いっきり開いたらおばちゃんが楊枝でその栗をぷすっとさして俺の口に入れてくれたん。
口の中でほろほろほろってとけてとっても甘い。


「おいしい!」
「そりゃあよかった。」


口の中が甘くって幸せいっぱい。
やってほらかりんとうは今手がふさがってて食べれやんし。
それにこれはこーちゃんとむさし君見つけてからいっしょに食べようと思ってたやつやし。
明智の光秀さんや島津のじっちゃんにもおすそ分けしたいし!
おばちゃんにありがとってゆうて手を振った。
又来なーって笑いながら手を振り返してくれたおばちゃんにもう一回ばいばいしてまた町の通りに入る。


ぬんぬん。
ぬんぬん。
次は何食べよー。
どうしよー。
甘いもん食べさせてもらったから今度はちょっと塩っ辛いの食べたいなー。
何かいいかんじのんないかしらー。


「くんくん、」


くんくん。
くんくん。


「あれ、」


おみそのにおい!
口の中の栗をごっくんって飲み込んで今度は大通りを進む。
下駄屋さんを通り過ぎて、酒屋さんも通り過ぎて。
染物屋さんの大きなかめをちょっと珍しげに眺めて。
桶屋さんの桶づくりながめてたら時間を忘れちゃったりして。
もう一回大通りに出てきてしまってきょろきょろ。
えーっとね、多分こっち。
大通りのまっすぐいったこっち。


「あった!」


見つけた!
大通りの角っこ、ちょっと小道にはいる角っこのお店からちょういい匂いするん。
煙ももくもく上がっててね、きっとなんかを焼いてるんやと思う。
それにお店の前にイスが出てるし、あそこで買ったやつを食べてもいいんやで!
目の前を川が流れてたりしてふぜいもまんてんー。
俄然やる気がでちゃうってゆうか!


「こんにちはー。」
「いらっしゃい!」


お店の前まで行ったら頭にハチマキ巻いたおじいちゃんが迎えてくれる。
おいしそうな匂いがしたんって笑ったら嬉しいねえ!っておじいちゃんも笑ってくれた。
やあやあここは何のお店ですか―。
とってもいいおみその匂いがしたんで誘われたんやけどー。


「豆腐田楽だよ坊主。」
「でんがく!」


ぬんぬんやからおみそのにおい!
おみそが焼ける香ばしいにおい!
俺、こんにゃくのでんがくとかおナスのでんがくはお兄が作ってくれたから食べた事はあるんやけど、お豆腐は初めて見るん。
まっしろなお豆腐がおみそたっぷりついてちょうおいしそうー。


「一本下さいなー。」
「ここで食べるかい?」
「うい!」


イスに座って荷物を下ろして一休み。
首元を風が吹き抜けていってきもちいい。
歩き回ったからちょっと汗かいてもうたしー。
川の近くやから風も冷たいってゆうか。
かいてきー。
足をばたばた、腕をぐーん。
思いっきり伸びをして体もすっきり、横に置いたゆげが出てるかりんとうをちょっと見て思わず笑ってしまう。


ぬーん。
おいしそうー。
あつあつカリカリおいしそうー。
後で皆で食べるん。
こーちゃんとむさし君と、それから明智の光秀さんと。
お屋敷に戻ったら島津のじっちゃんにもおすそ分け!
楽しみ!


「そうら坊主、おまちどうさん。」
「ありがとー。」


お皿に乗って出て来たのはおみそがたっぷりぬってあるおとうふ。
香ばしいにおいに俺のお鼻もひくひく動く。


いただきますー。
おとうふでんがくいただきますー。
やあでもあつあつやからちょっと冷ました方がええかしらー。
ほんならふーふー。
も一回ふーふー。
でもやっぱりいい匂いには勝てやんくってすぐにぱくん。


「もぐもぐもぐもぐ。」


もぐもぐ。
あつあつ。
もぐもぐ。
あつあつ。


もぐ、


「おいしい!!」


ぬん!
おみそが甘からくってとってもおいしいー。
おとうふがちょっぴり固くっておみそとの相性ばつぐんー。
ぴりっとしてるのはなんやろうー。
この匂いかいだことあるけど思い出せやんなー。


「山椒だあよ。」
「さんしょう!」


ピリッと口の中ではじける感じはさんしょう!
やあやあ食べたことあるよ俺。
うな重とかにかかってるよね!
かくしあじ的な!
最後のひとあじ的な!
そうかそうかおとうふでんがくにもさんしょうかー。
甘からくってぴりっとしてとってもおいしいで!
おじいちゃんにぶいってピースを作ってご報告。
とってもおいしいおとうふでんがくありがとう!ってご報告。
ほんならふぉっふぉっふぉっ!って何だかなつかしい感じがする笑顔でお返事してくれました!


ぬん氏政じいちゃんお元気かしら―。
今度奥州のお城に戻ったら一回訪ねてみよー。
ほんでおとうふでんがく美味しかったよってお話もしよー。


「うまうま。」


そんな事を考えながらおとうふでんがくもぐもぐ。
あつあつのうちにもぐもぐ。
これ食べたらこーちゃんとむさし君を探しにいこうかなーって考えながらもぐもぐ。
おとうふでんがくと一緒に出してくれたお茶をぐびっと飲んでお腹もぱんぱん。
とっても幸せな気持ちでごちそうさま。
ちょっと落ち着くまでお腹を休めて、さあ行きましょかーってゆう時。



「もし、あなた。」
「ぬ?」
「あなた!迷える子羊ですね!?」



……
………



ぬ?


俺がイスから立ち上がろうとした時、目の前がふって暗くなったん。
誰かが前に立ってて陰になったからなんやけど俺はその声にも顔にも見おぼえがなくて。


やあ、黒い服着ててな。
それがなんか洋服っぽい服でな。
なんか手に本持っててにこにこ笑ってて。
俺が何が何だか分からんくってちょっとびっくりしてるのににこにこ笑ってて。
そんで、そんで、そんで。


「わたしには分かるあなたは迷っている!!」
ぬん…


頭が。
頭のてっぺんがつるっと。
つるっと、つるっと…


「かっ、」


ぱ、みたいやなーなんて思ったんやけどそれはちょっと口に出したらあかんかなーってお口の中でもごもご。
両手でお口押さえてもごもご。
聞こえてへんかったらええねんけど、って下からそろっと見上げてみたら全然全く俺なんか気にせんとそのかっぱさんがとっても得意気にしゃべっててました何だか声をかけられたのは俺やのにその俺がちょっぴりおいてけぼりですどうしよう!


---------------

ナンパというよりは勧誘ですねあのうるさい感じを出したかったのですけれど色々無理でした無念です…!
続きはすぐに。
長かったので少しきったのです。

それにしてもキネマ主食べてばっかりですねほんとうこの子は食べることしか頭にないのかな…!

  

book top
キネマ目次
top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -