「ザビー教とやらの所へ行く前に、備えたい物があります。」
「ぬ?なに?」
「武器ですよ。」
あなたと海へ落ちた折、捨ててきてしまいましたので。
明智の光秀さんが美人おかみのまんま言うて、ため息を吐いた。
やあやあそういえば明智の光秀さん飛び下りる前にカマ捨ててたよね。
蘭丸君のお母さんの前でカマ捨ててたよね。
あんな重いやつ持ってたら海の中で沈んでまうもんね…!
って事でー、俺と明智の光秀さんとこーちゃんはザビ―教へ行く準備をしてたあにきから小さなお船を借りて腕のいい鍛冶職人さんがおるっていう日本の最南端、薩摩のお国にやってきました!
明智の光秀さんの武器を作ってもらうねんで。
あとこーちゃんもいい武器あったら新調したいねんてー。
俺も何か薩摩のお国で気に入ったやつがあったら買ってもいいよって。
こーちゃんと二人、あにきと明智の光秀さんにおこづかいもらってとっても小旅行気分な真樹緒ですこんにちはー!
あっという間についた薩摩のお国からこんにちはー!
おこづかいはこーちゃんと一緒におそろいきんちゃくに入れて首から下げてるから無くす心配も無いねんでこんにちはー!
ぬん!
「やぁでもついたんやけどー。」
とっても綺麗な砂浜にたどりついたんやけどー。
ちょっと問題があってね。
やあそんなおっきな問題でも無いねんけどちょっとどうしようかなってゆう事があってね。
聞いてくれる?
あのね。
俺とこーちゃんと明智の光秀さんが揃ってさぁこれから薩摩のお国でびゅー!って時にやあ。
「おれさまはみやもとむさし!せんごくさいきょう!」
ここを通りたきゃおれさまをたおしていきやがれ!
しょうぶだ!
つえー奴からかかってこい!!
「……」
「(……)」
「ぬん…」
なんてゆうか。
見知らぬ男の子が。
ぼさっとした髪の毛でちょんまげの男の子が。
船のオール両手に持ってででんとお出迎えしてくれましたびしぃぃぃ!ってオールでキめられて俺もこーちゃんも明智の光秀さんも思わずその場で立ち尽くして動けません!
やぁ、やって。
あの男の子。
ぬん、みやもとむさしくん?
むさし君。
歳は俺とおんなじぐらいかゆっきーと同じくらいやと思う。
そのむさし君がすごい得意気にたちふさがってるから俺らもどうしようもないってゆうか。
こう何て言い返したらええんか分からんってゆうか。
「明智の光秀さん…」
「目を合わせてはいけませんよ。」
「…こーちゃん、」
「(だ め)」
「ぬん、」
やあでも、もしかして薩摩のお国ってむさし君のお国なんかもしれやんよ。
ほら、政宗様が治めてる奥州みたいなかんじでむさし君が薩摩のお国治めてるんちがう?
そんなところに急に俺らがやってきたから怒ってるんちがうやろうか。
ぬーん。
それやったら俺らの方が悪いっていうか。
勝手にやってきた俺らの方が悪いっていうか。
急にやってきた俺らの方が悪いっていうか。
「薩摩を治めているのは島津ですよ。」
「しまづ?」
「示現流の使い手で一刀必殺術を持つ猛者です。」
あの様な出会い頭に櫂を振りまわす無法者ではありません。
「へー…」
「…よく分かっていないでしょう。」
「何かちょうすごい人やってゆうんは分かったよ!」
ぬんぬん。
明智の光秀さんため息はかないで。
幸せが逃げてしまうよ。
俺ちゃんと分かってるから!
ピースサインをして明智の光秀さんを見上げたら、またため息をはかれてしまう。
ちらって俺を見下ろして小さく肩をすくめられてしまう。
でも俺は明智の光秀さんのその顔がとっても優しかったもんやから嬉しくって。
にっこり笑ってみたら今度は頭をくしゃっと撫でられた。
ぬん!
優しい!
「では真樹緒。」
「はい?」
「行きますよ。」
「へ?」
いく?
どこへ?
「私達はここへ何をしに来たのですか。」
「ぬん!明智の光秀さんとこーちゃんの武器をつくるため!」
「いい子ですね。」
その通りです。
分かっているのなら行きますよ。
美人おかみなみつあみをとっても優雅にふんわり揺らして明智の光秀さんがむさし君とは反対の方向に歩きだした。
むさし君には目もくれず歩き出した。
えええちょっと待って。
ちょっと待って明智の光秀さん…!!
「何です。」
「…むさし君は?」
ぬん。
明智の光秀さん見て。
あそこでお船のオール持ってやる気満々なむさし君おるん見て。
ほらほら。
さっきまっしょうめんから勝負いどまれてた感じやん?
このままスルーしてええのん?
「おや、あそこに誰かいらっしゃいますか。」
私には何の事やら。
……
………
「ぬ?」
ええ、やってむさし君。
ほらあの岩の上でオールぶんぶん振ってるよ。
かかって来いみたいなふんいきになってるよ。
どうやっても逃がしてくれそうにないよ。
ちゃんと見て!
見てあげて!
明智の光秀さんの着物のお袖を引っ張って、明智の光秀さんに続いてむさし君をスルーしちゃったこーちゃんの手も引っ張って、ちょっとお話きいてあげようや!ってお願い。
やってむさし君何や一生懸命に叫んでるんやもん。
「おめぇらおれさまにおじけづいたかー!」
あっはっはー!
おれさまさいきょう!!
おめーらなんかにゃまけねーよ!!
「…」
「(…)」
「えーと、一生懸命やと、おもうん…」
やけどなぁ。
ぬーん。
ちょう得意気やけど。
「甚だ不愉快ですが相手をするのが面倒です。」
ああいうのを相手をするとなると私が大変疲れるのですよ。
これからよくも分からない所へ行こうという時に余計な事はしたくありません。
「(こくり)」
あ ぶ な い か ら
「こーちゃんまでー。」
もー。
そんな事ゆわんとー。
はっきりゆわんとー。
ここでは俺らが薩摩のお国におじゃましてるんやからー。
もうちょっとほらおじゃまします的なけんきょさがやあ。
「あってもいいと思うんやけどおおお!?」
「真樹緒!?」
「(!?)」
俺が止めるのも聞かずずんずん行ってしまいそうな二人を引きとめてたら急に足元が無くなった。
がくって体が傾いて、ずぼって底が抜けたん。
俺足を踏ん張って耐えようと思ったんやけどそれもできやんぐらいに体が浮いてやあ。
気がついたら俺は何や砂だらけで。
手と足は動かせるんやけど、立ちあがったりする事が出来やんくって体をじたばた。
じたばたしたら頭からまた砂が振って来てせき込んだ。
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長くなったので分けさせていただきました!
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