「おゥおゥ明智、おもしれー頭してんじゃねえか。」


どこぞの女将みてーだぞ。
似合いの結い紐でも見繕ってやろうか。



……
………



…どなたもこなたも。
「あァ?」
「ぬん!あにきもおかみやとおもう?!」


ぬんぬん!
ほら!
やっぱり!
やっぱりあにきもおかみやと思う?
俺もそう思ったん!
思ったのに明智の光秀さんが怒るんやで!
俺とっても似合ってて綺麗やと思うのに。


「真樹緒、お前ェがやったのかあれァ。」
「りきさく!」
「いい腕してんじゃねえか!」
「うい!」


頭をがしがし撫でてくれるあにきと、物凄い頭揺らしながら笑ってる俺を見て明智の光秀さんがため息を吐いた。
ちょっと眉間にシワを寄せたままちっちゃくため息を吐いた。
どうとでもおっしゃいなさいな。
そんな声がひっそり聞こえてきて俺とあにきは顔を見合わせてまた笑う。
嬉しくなってけらけら笑う。
めじりに涙が浮かんできそうになった時、開いてる扉から中におるお客さんと目があったん。


「あ、」
「あん?」
「どうしました、」
「やあ、あにき。」


俺お客さんと目ェあってもうた。
ばっちり目ぇあってもうた。


なああにき、お客さんとのお話はもう終わったん?
急に出てきてくれたけど。
元就様どうなるん?
俺初めからお話聞いてたし気になるんやけどー。


「俺ね、たぶん元就様そのザビー教ってところにいると思うよ!」
「ああ、俺もそう思う。」
「ほんなら!」
「けどよ。」


あにきがちょっと考えるしぐさで頭をかく。
それから目をつぶってうーんって考えて。
腕を組んでにやり、って笑った。
あ、このあにきちょっと見た事ある。
俺見覚えある。
ほら、あれ。
あの時。
俺がお船に乗せてもらった時、明智の光秀さんを乗せへんってゆうたときのあにきにそっくりやで!


「てめェ等んとこの大将ぐらいてめェ等で取り戻しやがれって思わねぇか。」
ぬん…!


ほら!!
ほら…!!
このあにき!
見てこれ!
いたずらっぽい顔して笑って意地悪な事言うん。
言い返せるなら言い返してみろって顔で意地悪言うん。

もうー!
俺知ってるでこれあまのじゃくってゆうねんで!
あまのじゃくって思ってる事と反対の事を言うてまう事やねんで!
ほんまはあにきそんな事思って無いくせに!


「あァ?俺ァてめぇでやりもしねえではなっから助けろなんて言う奴の根性が気に食わねェんだよ。」
「道理ですね、私もそう思います。」


面倒臭い。
大体よくも今まで諍いの絶えなかった敵方に助けなどを求めれたものです図々しい。
あの毛利元就なら最も嫌う手でしょうに。
家臣がこれとは毛利殿もお気の毒な事です。
戻られた暁のその面目はいかがなものでしょう。


あけちのみつひでさん…!あにき…!


もうちょっと!
もうちょっとオブラートに包んでみて言葉がちくちくするで何かいたい!
俺に言われてる訳やないのにそこらじゅうがいたい!
体中に針刺さったみたいにいたいで!

ほら見てお客さんもぷるぷる震えてるから!
何か今にも泣きそうやから!
もうちょい優しくゆうてあげて!


「あき?ってところを直さなあかんってゆうてるやん!」


ちゃんと聞いてた?あにき。
お外で聞いてた俺の方がよう聞いてるんちがう?
もう。
元就様のところのお客さんはあきを再興させやなあかんってゆうてたのに。
元就様迎えにいくぐらい行ってあげたらええやんか!
何やったら俺着いて行くし!
一緒にいくし!


ぷん!って二人を睨んだら明智の光秀さんにはため息吐かれて、あにきには笑われた。
俺は、俺が一生懸命しゃべってるのに二人がそんな風やからもっとぷんぷんして足をどんどん。


「二人ともきいてくれてるん!」
「聞いてる、聞いてる、」


だからそんなに怒るなよ真樹緒。
お前の言いたい事は分かった。
毛利を助けに行くっつーんだろ?


「あにきが行けへんねんやったら俺がいくもん。」


お話聞いてたら元就様悪い人ちがうみたいやし。
元就様の所のお客さんが一生懸命お願いしてたの聞いてたし。
こうなったら俺がいくもん。
なあ明智の光秀さん!
俺行ってもええやんなあ!


許しません。
ぬーん!!


「毛利と長曾我部の問題に首を突っ込むなと言いましたよ私は。」
「えええ!でも!」
「許しません。」
「けどおれ…!」
許しません。
ぬーん!!


えええええ明智の光秀さんまじで。
こんなに俺がお願いしてるのにまじで。
俺、あれやで?
明智の光秀さんにもあにきにも迷惑かけやんから!
ほら俺お嫁さんと一緒にちょっとザビー教ってとこに行くだけやから。
ザビー教っていうぐらいやからきっと教会か何かあるとこちがう?
きっと皆優しい人らやと思うん。
ほら、お祈りとかしてる人らやと思うん。


優しい奴等が侵略なんぞする訳あるか。
そんな危険な所にあなたをやれますか。
「ぬうっ!!」


あにきと明智の光秀さんがそろって俺の頭をぐしゃぐしゃ。
よく考えなさいってぐしゃぐしゃ。
俺は二人がかりのぐしゃぐしゃに頭がへっこみそうになって逃げる。
もうー!
頭がもげる!


「ほんなら、ほんなら皆で行こうやあ。」


ぬん。
それやったらええやろう?
俺は元就様お迎えに行ってあげたいん。
明智の光秀さんは俺を心配してくれてるんやろう?
あにきはぬん、分かってるよ、そのいじわる知っててやろう?
しかも知り合いの元就様がおらんようになったって聞いてちょっと面白いなって思ったやろう?
分かってるんやで俺!
あにきの話し方とかで!
段々分かって来るんやで俺!
楽しそうやなって思ったやろ!
ぬん!
やから皆で一緒にいこう!


「そいつァ、かなわねえなあ。」
「私はお断りしますよ。」


あなたは余計な事をせず甲斐に戻る事を考えなさい。
長曾我部と毛利の問題に口出しは無用です。


「明智の光秀さん、」


ぬん、でも。
でも俺。
お話聞いてもたし、元就様の事心配やし。
気になるし。
こーちゃんおったら大丈夫やし、そんでもってあにきと明智の光秀さんが来てくれたらひゃくにんりきやし。
それに。


あかんってゆわれたら俺こっそりこーちゃんに連れて行ってもらうもん。


ぬん!
こーちゃん凄いねんから!
俺のこーちゃんすごいねんから!
奥州から甲斐までひとっとびやし、甲斐から今川さんとこまでもひとっ飛びやってんから!


…あなたやはり今川にも、
「ぬ?うん。」


政宗様やこじゅさん、おシゲちゃんとか皆に止められてたんやけどー。
じっとしてなさいってゆわれたんやけどー。
いてもたってもおられへんかったってゆうか。
やからこーちゃんにお願いして連れてきてもらったん。
政宗様とこじゅさんを見て安心して帰るつもりやったんやけど、雪崩作戦成功してから明智の光秀さんに見つかってもうたやん?
それから近江に行ってー、今ここにおるんやけど!
もし明智の光秀さんが行くなってゆうんやったら俺こっそりこーちゃんとザビー教へ行ってくるもん。


「っ…、」
「ぬん!」


どお!
これでどお!
俺明智の光秀さんに勝ったんちがう!
どお!


「くっくっくっ!お前の勝ちだな真樹緒!」
「鬼…」
「あにき!」
「俺ァ構わねえぜ、俺と真樹緒だけでもな。」
「あにき一緒に行ってくれるん!?」


やっぱりさっき意地悪いうてただけやったんやろ!
もうー!
やっぱりあまのじゃく!
きらきらした目で見上げたらあにきが笑って俺の頭をぐしゃぐしゃまぜた。
髪の毛ぐちゃぐちゃにされてでも嬉しくて俺はあにきの腕にくっついて。
ありがとうって両手でぎゅう。


「お前ェはここで待ってろや。」
「……ご冗談を。」
「ぬ?」
「あなたに真樹緒を任せられますか。」


唯でさえ得体の知れない所だと言うのに。
ザビー教だかなんだか知りませんがそんな訳も分からない所にこの子をやれません。


「ほんなら明智の光秀さんもいっしょ!?」
…鬼が一人で赴くという選択肢は、
「ないないない!俺もいく!」


俺も元就様心配やもん絶対俺もいく!


「なあ、なあ、明智の光秀さん。」


お願い。
一緒にいこう?
俺明智の光秀さんも一緒に来てくれたらとっても嬉しいし心強いん。


「元就様助けたって?」
「………、」


明智の光秀さんの袖をきゅって引っ張ってお願いって見上げた。
あにきが笑い堪えてるのが見えるけど気にしない!
俺は真剣なん。
真剣にお願いしてるん。


「なあ、明智の光秀さん。」


おねがい。


「…………は、」
「あけちの、」
「あなたを」
「う?」
「あなたを無事に甲斐に届ける事が私の役目です。」


毛利も長曾我部も私には興味が無い。
どうなろうと微塵も関係は無い。
けれどあなたが行くと言うならば私は。


「言う事を聞かないと力ずくで連れ帰りますよ。」
「!!!」


あなたは私が守る。
その時が来るまで二度と目を離しはしない。


「あにき!いいって!」


明智の光秀さんいいって!
お許しでた!
一緒に行くおゆるしでた!
ぬん!


嬉しくって飛び上がってあにきの腕をぶんぶんゆらして。
ぐいーんって持ち上げられるまま、あにきにだっこされた。
ちょっとびっくりしたけど嬉しいからあにきの首にぎゅう。
ありがとうねってぎゅう。
あにきも明智の光秀さんもありがとう。
俺とっても嬉しいわ!


「そう言う事だァ、安心しな。」


毛利はちゃァんとお前等んとこに届けてやらあ。
あにきがお客さんを見てにやりって笑う。
俺も大丈夫やからね!って手を振った。
びっくりした感じでびくっとなったお客さんは俺を見て、あにきを見て、明智の光秀さんを見て何かもっとびっくりして肩を揺らしたんやけど、おろおろしながら頭をぺこり。
よろしくお願いしますってお辞儀をしてくれた。


ぬんぬんまかせて。
大丈夫まかせて。
俺とこーちゃん、明智の光秀さんとあにきが揃ったらひゃくにんりきやねんで!
かならず元就様を連れて帰って見せるから!
安心して待っててね!



「……それにしても真樹緒。」
「?はい?」
「あなた忍に何も言っていない様ですがよろしいのですか。」


勝手にそんな事を決めて。


「あ!そっか!」


ぬーんそれもそうやねえ。
ぬんぬんほんならこーちゃんにゆうとこかー。


「こーちゃーん!」
「(しゅた!)」
「あ、こーちゃん!」
「(?)
「今度ね、ザビー教ってゆうとこに行く事になったから一緒に来てくれる?」
「(こくん)」


「明智の光秀さん、こーちゃんいいってー!」


はえーな、おい。
ああそうでしたね。こういう主従でしたねあなたがた。


気にするだけ無駄でしたね。


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元就様ザビーさんとこに捕まってました実は…!
皆で助けにゆきまする(笑)
アニキは相変わらず意地悪言ってるけれど最初から助けてくれる気はあったのですよ。
海賊のお頭の手前ああ言わなきゃならなかっただけで。
毛利さんとは腐れ縁なので、元就さんの安芸に対する思いも分ってくれているのです。
理解とはまた別の所で。

明智さんは相変わらずキネマ主に甘いですね(笑)
キネマ主には小太郎さんがいるけれど、自分の目の届くところでは自分が守りたい近江のお母さんでした。
小太郎さんもいつもと一緒。
キネマ主の言うことなら無条件でお願いきいてくれるよ。

次回はちょっと寄り道で最南端行ってきます。
明智の光秀さんの鎌を作りに行くのが目的ですが、じっちゃんと武蔵くんと友達になるよ。

  

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