「あみあみあみあみ。」
「……」
「あみあみあみあみ。」
「………」
「あみあみあみあみ。」
「………真樹緒、」
「ちょっとまって、今かんじんなとこやから!」
「……………、」



あみあみあみあみ。
あみあみあみあみ。


「できた…!!」


ぬんぬんできた!
みつあみできた!!
かんせい!


「いいできばえー。」


ちょういい感じ!
ぬんぬん。
上出来!


あにきのお屋敷で明智の光秀さんとお風呂いただいて、ほかほかぽかぽか湯上りたまごはだ。
お部屋に戻って来たはいいけどちょう暇で洗いたてな明智の光秀さんのつやつやロングヘアーをいっしょうけんめいにみつあみしてました。
真樹緒ですこんにちは!
ぐっとひたいを腕でぬぐいながらこんにちは!


ほら、明智の光秀さんの髪の毛ちょう綺麗やん?
さっらさらやん?
見てたら触りたくなるやん?
ほんでもって触ってみたらちょっと遊んでみたくなるやん?
やからね、お願いしたん。


「明智の光秀さんかみのけみつあみにしてもいい?」


お願いした時はすっごい呆れた様な目で見られたんやけどー。
聞こえやんかったふりとかされたんやけどー。
俺があんまり期待のこもった目で見るもんやから、何度もお願いするもんやから、ついに明智の光秀さんからお許しが出たのですよ。
明智の光秀さん優しいよねー。
最近優しいよねー。
それで俺ちょうしんけんに明智の光秀さんの髪の毛をみつあみにしてたん。
二つに分けてもよかったんやけどー、今回は一つで。
上出来やとおもうんやけど!


「明智の光秀さんできたで!!」


見て!
ちゃんと見て!
はい、鏡。
お部屋にあった鏡台?の鏡を明智の光秀さんの正面に持って来てどお?って聞いみた。
ほら見て明智の光秀さん。

みつあみ。
ふんわりやわらかなみつあみを目指してみたんやけど!
こうゆうるく編んでいまどきのはやりを目指してみたんやけど!
これを肩から前へ持ってきてー。


「びじんおかみ!!」
誰が女将ですか。


べちん!


「ぬんっ!」


でも、でも、でも。
明智の光秀さんちょうみつあみ似合ってるで。
美人さんやと思うで。
しにせ旅館のおかみさんみたい。
やり手のおかみさんみたい。
言いながらぐっ!って親指立ててみたんやけど明智の光秀さんはため息吐いてまた俺の頭をぺしっとはたくん。
ぺしっとはたいてものすごい不満そうな顔で俺を見るん。
俺はぺしっとされた頭をさすりながらほっぺたぶう。
痛いやんかって唇とんがらせてほっぺたを膨らました。


「似合ってるのにー。」


とってもいい感じやのにー。
窓の傍でぱたぱたうちわで顔あおいでる明智の光秀さんをちらって見上げる。


ほらー。
ほら!
そういう感じがおかみさんやって思うのに。
着物ちょっとはだけさせながらうちわパタパタさせてるんとか絶対おかみさんやのに!


「でも今日一日それでおってね。」
何の仕打ちですか。
「やって力作やもん。」


もったいないやんか!
俺ちょっとお屋敷の中探検してくるからやあ。
俺が出て行ってもそのみつあみ取ったらあかんよ!
戻って来るまでそのままでおってね。


「探検…?」
「ぬん。明智の光秀さんも一緒に行く?」


頭にのせてた手拭いをきちんとたたんで机に置いて。
櫛で髪の毛をとかしたら完璧。
湯ざめしたらあかんから羽織もひっかけて準備は万端。
明智の光秀さんは怪我してるし安静にしてやなあかんかと思ってちょっぴり遠慮したんやけど、歩いて行くし、明智の光秀さんもご一緒する?
俺は一人より二人の方が楽しくて嬉しいけど!
ほらこーちゃんまだ帰ってけえへんし。
お屋敷のまわり見まわって来ますって行っちゃったきり帰ってけえへんし。
帰って来てもまずお風呂に入ってもらわなあかんし。


ぬん。
どう?
探検。


「いえ…私は。」


遠慮しておきます。
俺が聞いたら明智の光秀さんが小さく首を振った。
ちょっと何かを考えるしぐさをしてちょっとみけんにシワ寄せて。
俺はどうしたんって首を傾げたんやけど。


「真樹緒。」
「はい?」
「鬼がいる部屋には近づくんじゃありませんよ。」
「鬼?あにきのおるとこ?」


ぬ?何で?


「何ででもです。」
「?」


いいですね、って念を押して明智の光秀さんがまたうちわをパタパタ。
窓辺にひじをついてパタパタ。
やっぱり俺にはびじんおかみにしか見えやんくって何だかほっぺたが緩んでしまうんやけど、明智の光秀さんはここにおるってゆうし、俺はお暇やしで「分かったじゃあ行ってきます」ってゆうてお部屋を出た。


「迷子になったら忍を呼びなさい。」
「まいごになんかならへんもん!」


でももしなったらこーちゃん呼ぶから大丈夫!
明智の光秀さんも呼ぶから大丈夫!
「知りませんよ」なんて、振り返ってもくれない明智の光秀さんからはつれないお返事が返って来たけど、でも絶対俺が呼んだら明智の光秀さんきてくれるんやで。
分かってるもん。
近江のお母さん優しいもん。
ぬん!って笑って見せたらため息吐きながら「なるべく聞こえる所からでお願いします。」ってこっちをちらって見てくれた。


ういうい大丈夫!
せいいっぱいおっきな声で呼ぶから大丈夫!
その時はすぐに俺を探しに来てね!


「行ってきます!」


もう一回おっきい声で叫んで、お部屋を飛び出してきょろきょろ。
右にも左にも行けるけどさあどうしよう。
右に行ったら色んなお部屋が続く廊下。
左に行ったらお庭の中を通ってどこかに行っちゃう感じ。
お部屋はずいぶん上にあったみたいで正面の垣根ごしにはあのさめのしっぽが見える。
でもさめに近づいたらあかんってゆわれてるのよねー。
近江のお母さんにゆわれてるのよねー。


「ぬんぬんほんなら左!」


左から冒険の匂いがする。
俺の胸をどきどきさせる予感がする。
そうと決まれば左にまっすぐまっすぐ行きましょかー。


「海賊の兄やんらがおったら色々聞けるのになー。」


全然まったく人っけの無い廊下をてくてく。
きょろきょろしながらてくてく。
ほんまに誰にも会わんくって、お庭の真ん中を通ってる廊下の真ん中でしゃがみこんでお庭を眺めた。


ひろーいお庭は奥州のお城にも甲斐のお屋敷にも負けやんぐらい。
あのでっかい木は桜かなあ?
もうすぐ春やしお花咲くやろうか。
お池には鯉が泳いでるん。
廊下の下にまでお池があって、手を伸ばしたら鯉にも触れそうやねんで。
ちょっと奥まったとこまで続いてるいしだたみの先には小さなお部屋?みたいなんが見える。
ほら、氏政じいちゃんがおるとこみたいな。
庵ってゆうん?
でもちょっとでっぱった感じやからもしかして崖の上に建ってるんかなあ?
じいちゃんのとこよりはでっかい感じやし。
草履あったら見に行ってみるのにな―。



「あれ?」



ぬん?
でも待って。
ちょっと待って。
あそこ廊下からも行けるんちがう?


「ぬん…」


やって、やーって。
ここの廊下を向こうまで渡って右に曲がって。
ほんならあの庵に続いてるんちがう?
ちょっと覗きにいけるんちがう?
中に入ってみたりできるんちがう?


「ぬんぬん。」


ゆっくり立ち上がって廊下を渡る。
きょろっと辺りを見渡して誰もおらん事を確認。
やあ、ああゆう隠れ家的なところは人に見つかったらあかんかんじするやん?
ひっそりしてるからこっそりいかなあかんような気するやん?
やから抜き足差し足しのび足。
そおっと近づいて、おじゃましますーって扉に手をかけようとしたら。



「で?毛利ンとこのがこんな所に何の用だい。」
「!!」



あにき!


扉に伸ばした手をひっこめてそおっと扉に近づいた。
聞こえて来たのはあにきの声で、誰かとお話してるみたい。
毛利ってゆうてたからさっき明智の光秀さんとあにきがゆうてたお客さんやろうか。
ほら使者さんきてるってゆうてたやん?
お耳おっきくしてぬんぬん。
相手の人の声も聞こえやんかなーってぬんぬん。
ちょっと息をころしてぬんぬん。
音を立てやんようにもっと扉に近づいた。


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つづく…!
切りのいいところがここしかなかったのですすみませ(汗)

  

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