「野郎共ォー!上陸だァァァァ!!」
「「「「了解だぜアーニキー!!」」」」


あにきと海賊の兄やんの声が響いてお船が止まった。
おっきい碇がお船から下ろされて海賊の兄やんらが次々にお船を下りて行く。
俺はこーちゃんと明智の光秀さんと一緒に、あにきが降りてもいいよって言うてくれるんをお船の上で待ってたんやけど待ちきれやんくってやっぱりそわそわ。
目の前の大きな島の上に何だかとってもでっかい砦。
それを見上げてどうしてもそわそわ。
やっとお船から降りるお許しもらってやってきたあにきのお家は、鬼ヶ島って言われてるすっごく立派なお屋敷でした。
真樹緒ですよこんにちはー!


ぬん!
すごい。
おにがしますごい。


入り口にさめ…!!


おおお…
何やろうこれ。
このやってきたお客さんを全力でいかくするたたずまい何やろう。

あのさめちょうでかい。


……


さめ。
入り口の上にね、さめおるん。
でっかいの。
口から体からぜんぶがちょうでっかいのん。
あのさめどうやってあの状態になったんやろう。
鎖でぐるんぐるんに縛りあげられて入り口につるされてるけど。
でもあのさめやっぱりちょうでかい。
てゆうかそもそもあのさめどうしたんやろう。
あれかな。
やっぱりあにきが釣り上げたんかな。
さめ信じられへんくらいにちょうでかいんやけど…!


……
………


まじで…!!


「こーちゃん。」
「(?)」


目はでっかいさめのまんまこーちゃんの腕をちょいちょいってひっぱった。

こーちゃん。
なあなあこーちゃん。
後であのさめ見に行こう。
じっくり見に行こう。
こーちゃんやったらしゅたっとあのさめ登って行けると思うん。
さめのお鼻からしっぽまでたたたっと走って行けると思うん。
俺あのしっぽの先に立ってみたい…!


「(……)」
「こーちゃん?」


期待満々で俺こーちゃんを見上げたん。
今はちょっとあにきも忙しそうやしお話できそうにないけど、後でゆうたら大丈夫やと思うんやけどって、やからこーちゃんに連れてって欲しいんやけどって、こーちゃんにお願いしてみたんやけど。

あれ?
こーちゃん?
どうしたん。
いつもやったらすぐにうんって頷いてくれるのに。
俺のお願い聞いてくれるのに。
そんなにしんこくな顔しちゃって。
なぁ、こーちゃんってお名前呼んだらこーちゃんが顔を上げて。


(………ちらり)


ちらっと明智の光秀さんを。


却下です。
ぬーん!!


えええ何で!
あああ明智の光秀さん何で…!
ずっとさめのくだりスルーしてくれてたから俺許してくれるもんやとばっかり…!
ほら普通やったらもう最初のあのさめにびっくりしてる俺につっこんでくれてるやん明智の光秀さん。
でもスルーやったから俺てっきり…!
そんな何でもない顔でいわんとってや俺ちょっと楽しみやってんけどさめに登るの!


「真樹緒。」
「はい。」
「私達が四国に来た目的は何ですか。」
「ぬ?」


もくてき?
ぬ?
あれ?
もくてき?


あれ?
甲斐へ戻る手段を見つけるためです怒りますよ。


鮫に登っている暇などありません。


いたいいたいたいいたいいたい…!


おちゃめやん!
俺ちゃんと分かってたもんおちゃめやん…!
明智の光秀さんと、こーちゃんと俺で甲斐まで戻る方法を見つけるためって知ってたもん!
でもごめんなさい…!
おちゃめごめんなさい…!
やから頭はなして…!


頭をぐりぐりぐりぐりグーの固い所で攻撃してくる明智の光秀さんから逃げようとじたばた。
今日のぐりぐりはいつもよりもちょっぴり力強くってじたばた。
こーちゃんって呼んでみるんやけど最近こーちゃんはめっきり近江のお母さんの味方で、こんな俺らをとっても微笑ましく眺めてるだけで助けてくれへんの。
ひどいこーちゃん。
俺がこんなにじたばたしてるのに!
逃げだそうと頑張ってるのに!
ちょっと切なくなって今度はあにきを探す。
少しだけ遠くにいてたあにきと何だか目が合った気がしたから思いっきり手を振ってみた。


あにき!
あにき!
おれを助けて!
このぐりぐりから俺を助けて!
頭のてっぺんすりきれそう!



「アニキ、坊主と明智光秀の野郎が、」
「あー、ほっとけほっとけじゃれてるだけだろォよ。」


お前ら今まで散々船の上で見て来ただろうが。
馬に蹴られるぜ。
あー、そーッすね。


あにき…!


あにきまで!
あにきまで俺のさめに登るってゆう夢をあきらめろってゆうん!
あの頂上から景色を見下ろしたかったのに!
ひどいー。
あにきこどもごころが分かってないわ…!
こどもはいつだって夢見るいきものやねんで!


「いつの間にそんな話になったんですか。」
「やって俺あのさめ登りたいん。」
「登るだけでは済まないでしょう。」


登ってあわよくば滑り降りる気でしょう。
あなたの考えている事ぐらい分かりますよ。
あなたの願いを叶えた忍を置いて一人あの鮫の背を滑り降りてみる気でしょう。
いい加減にしなさいよ忍の気持ちも酌んでやりなさい。


ばれてた…!
「見知らぬ土地に来てまで心配をかけるんじゃありません。」



頭から離れた明智の光秀さんの手が俺の髪を撫でた。
わさわさ髪の毛をまぜて最後に耳の後ろ。
もう覚えてもうた撫で方はとっても優しくって、ちょっとさめに登りたいなって思ってた気持ちが小さくなった。
こーちゃんと明智の光秀さん心配してくれたんやって。
俺がさめに登るの。


………、ぬん。
ちょっとね、嬉しいね。
俺の事しんぱいしてくれてるん。
ぽかぽかするね。
「分かりましたか」ってため息吐いた明智の光秀さんに頷いてさめに登らへんお約束した。
ほら、危ないから。
さめ。
ゆびきりなん。
明智の光秀さんはちょっと複雑そうな顔やったけど俺お約束はちゃんと守るから安心して!
大丈夫やから!


「お、もう親子喧嘩は終わりかァ?」
「あにき!」
「鬼、」
「待たせたな。」


お前らの部屋へ案内するぜ。
笑いながらやってきたあにきが俺のほっぺたをうりうり撫でた。
俺を見て明智の光秀さんを見て、今度は声を上げて笑う。
俺はずっとほっぺたうりうりされて、こちょばいって逃げたら今度は腰を掴まれて持ちあげられた。
足が浮く感覚に焦って手足をじたばたしたらすぐにしっかりとしたとこに座らされて。
ここは。


「かたぐるま!」


あにきの肩にかたぐるま!
すごい!
あにき背ぇ高いから見晴らしすごい!


「鮫にゃァ叶わねえがこれで我慢しとけ。」
「やあ聞こえてたん?」
「大体な、」


くくくって笑い声が聞こえて来る。
やあそんなら明智の光秀さんから助けてくれたらよかったのに!
言ったらその割には楽しそうだったじゃねえかって更に笑われる。


「ぬう…」
「図星だろう。」
「…のーこめんとー。」
「の?」
「お返事しませんってゆういみー。」
「流石独眼竜んとこの餓鬼は変わった言葉を話しやがる。」


お屋敷の中をずんずん進んでいくあにきはずっとおかしそうに笑ってる。
俺とあにきの後ろを歩いてる明智の光秀さんがちょっぴり難しい顔で首をかしげたのが見えたけど見えやんふりしてあにきの髪の毛にもふっと顔をうずめた。
ほら、恥ずかしいやん。
思ってる事いいあてられてもうて。


「真樹緒は明智が好きで仕方ねェんだもんなァ。」
「…明智の光秀さんも好きやけどこーちゃんも好きやもん。」


あきにかって好きやし。
政宗様やこじゅさん、おシゲちゃん、甲斐の皆も氏政じいちゃんもすきやもん。
かすがちゃんかって大事なお友達!


「そりゃあ光栄だ。」


着いたぜ、ってあにきは俺を下ろしてくれた。


「お部屋ひろい!!」
「暫くはそこで傷を癒せ。」


今後の事もゆっくり考えりゃいい。
だがまずは湯だな。

俺の頭をぐりぐりまぜながらあにきが言う。
案内してもらった部屋はとっても広くって、政宗様のお城にも負けへんかんじ。
畳のいい匂いとちょこんって生けてあるお花が何だかちょう高級旅館―。
ほら、壁のかけじくとかも。
あの黒い刀は本物やろうか。
広いお部屋は襖でかこまれてて、ぬん…何や全部をすっぱーんって開いてみたい気分にさせてくれるん。
……やったら近江のお母さんが怒るからせえへんけど!


「俺は暫く相手をしてやれねえ。」
「ぬ?何で?」
「…毛利と何か?」
「は、耳が早ェな。」


毛利の使者が来てる。
要件は皆目見当もつかねェが、最近あちらさんが静かな理由でも聞かせてくれるんじゃねえか。


「興味があるか。」
「いいえ。」


私達は甲斐へ戻ります。
毛利と長曾我部の問題に関わるつもりはありません。


「言うねェ。」
「ぬ?何?何が?」


明智の光秀さんとあにきが目と目でお話してて俺がちょっとおいてけぼり。
こーちゃんはさっきから鬼ヶ島の様子を見てきますってしゅたっと消えたっきりまだ戻って来てくれないし―。
もー。
ちょっとー。
俺を仲間外れにしないでー。
お話に入れて―。


「真樹緒。」
「なに?あにき。」
「忍が戻ってきたらあいつも湯に入れてやれよ。」
「こーちゃん?」
「ああ、」


夜にはゆっくり話をしようぜ、って言ってあにきがお部屋を出ていった。
背中を見せながら何でか楽しげに手をふってるあにきに俺も分かったばいばい!って手をふってお見送り。
あとでね!ってお見送り。
でもおれはやっぱり何のお話してたか分からんから明智の光秀さんを振り返って。


「毛利さんって誰?」
「…教えて差し上げてもかまいませんが、この問題に関わらないと約束しなさい。」
「問題?何かあるん?」
…藪から蛇が出ましたか…、
「ぬ?へび?」
「何でもありません。」


それよりも湯殿へ参りますよ。


明智の光秀さんがちっちゃいため息を吐きながら話を逸らすん。
なあなあって着物を引っ張っても明智の光秀さんは俺の頭ぽんぽんってするだけで廊下を歩いて行ってしまうん。


ぬう。
これはあれやで。
聞いても教えてくれへん感じやで。
明智の光秀さん教えへんって決めたら絶対教えてくれへんねんもん。
でもええもん。
ええもんね。
夜になったらあにきに聞くもんね。
あにきゆっくりお話しようねってゆうてくれたもん!
明智の光秀さんが秘密にしてもあにきに聞いて教えてもらうんやから…!



「真樹緒、置いて行きますよ。」
「あああーまってまって!俺もいく!」


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四国に辿り着きましたあのサメは結構な衝撃だと思うんだ…!
サメに興味津津のキネマ主でした。
うーん何だかいつものキネマ。
ゆるいいつものキネマ(笑)

小太郎さんはお母さんとならちょっぴり仲良くなるよ。
小太郎さんのお母さんピラミッドはてっぺんにおシゲちゃん、二番目に明智の光秀さん、三番目に佐助さんです。
けっこう明智の光秀さんには一目おいているかんじ。
お母さんとして。

次回はあにきとお話。
毛利さんの事を聞くよ。
そして四国で一休みしたら島津のじっちゃんのところへ繰り出します。

  

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