「あにきー。」
「あァ?何だあ?」
「あにきはこんなとこで何してたん?」


俺が初めて出会ったかいぞくさんは、ちょっと俺の友だちに似てて、政宗様とは反対側の目に眼帯してて、すっごいでっかいイカリを持ってて、船に乗ってる人らから「あにき」って呼ばれてる素敵なイケメンお兄さんでした!
ぬん!
どうしてもかいぞくさんのお名前が言われへんくって、でもとっても俺の友達の鉄平君に似てるから鉄平君って呼ぼうと思ったんやけど「こら」って髪の毛ぐちゃぐちゃっとされてもうてやぁ、「うまく言えねーなら野郎共と同じ様に呼びやがれ」なーんて頭をこづかれてしまった真樹緒です。
こんにちは!


ちょっと説明が長かったかしらー。
でもそこはほら、大事なとこやから。
ちゃんとゆうとかなあかんやん?
やから長くってもゆるしてねー。
ではではもう一回ごあいさつ真樹緒ですこんにちは!


「ぬん。」


あにき。
何かちょっとかっこいい呼び方よね、あにき。
俺、お兄おるけどお兄の事はずーっとお兄やし!
あにきって何かしんせん!

あにき。
ちょっと大人になった気分、あにき。
何回も言ってみたくなるよね、あにき。


……
………
かっこいいあにき…!!


「俺らが落ちるとこ見てたん?」
「落ちたァ?」


船からか?
この頃は波も穏やかだったろうよ。


ぬ?ううん、


ちょっとね、崖に追い詰められちゃって。
蘭丸君のお母さんに。
すっごい物騒な武器持って追い詰められちゃって。
逃げるところが海以外になかったからやぁ、こう三人でどぼんってね。
ほら明智の光秀さんが俺らを逃がしてくれるってゆうたんやけどやっぱりそこは三人で一緒に助かりたいやん?
やからちょうきゅうこうばいな崖からね、えーいや!って飛び込んだん。
俺泳げやんし、海に落ちたあたりから記憶がいっこも無いんやけど、目ぇ覚めた時あにきがおったから、もしかしたらあにきそれ見て俺らを助けにきてくれたんかなぁって思ったんやけど。


「ちがった?」


あにきにだっこされたまんま首を傾げてみたら、あにきが暫く俺をじっと見てからちらっと俺の後ろにおる明智の光秀さんを見た。


………


んな事言ってやがるぞ。


………


ええ、事実ですが何か。


「ぬ?何で二人とも見つめあってるん?」


アイコンタクト?
何でアイコンタクト?
俺ちょっと寂しいやん二人がそんなにアイコンタクトで置いてけぼりやでおれ!
あにき、ってあにきのほっぺたぺちぺちしたら「お前すげーな」って頭を撫でられた。
さっきぐしゃっとされた時よりもちょっぴり優しい手つきで頭を撫でられた。
やぁ、俺は何がすげーんかが分からんくってやっぱり首を傾げてみたんやけど。
あにきは笑ってばっかりで、アイコンタクトの事は教えてくれへんの。


ぬー。
いいもん後で明智光秀さんに聞くもん。
教えてくれやん様な気もするけど!
ぬーん!


「俺達ァ、」
「う?」
「これから国に戻るところでよ。」


ちィと急ぎの用でなァ。
てめェらを見つけたのは偶然だ。
初めはどんな阿呆共がくたばってんのかと思ったけどなァ。
よォーっく見てみりゃこんなとこで見るには珍しい男がいたからよォ、上陸したのよ。
そう言ってあにきが俺の後ろを見た。


ぬん。
俺の後ろ。
明智の光秀さん?
それともこーちゃん?


「二人が珍しいん?」


俺も同じ様に後ろを振り返ってみたら明智の光秀さんがちょびっとご機嫌ななめな顔してため息を吐くん。
ちっちゃい声で「余計な事を」ってゆうたんが聞こえた。
ぬ?
なに?


「くっくっくっ!真樹緒はあいつがどういう男が知らねぇか!」
「?あいつ?どっち?」


明智の光秀さん?
こーちゃん?
どっち?


やぁやぁでも明智の光秀さんもこーちゃんも、俺ちょう知ってるよ。
こーちゃんはお嫁さんやし明智の光秀さんは近江のお母さんやし。
俺らとってもなかよしやねんで。
それに俺、ちょっと前には名探偵真樹緒やったから。
明智の光秀さんの事すっごい調べた事もあったから。


「おや、初耳です。」
「政宗様のためにね、」


調べたん。
でも明智の光秀さんが戦場にやってこなくて役に立たんかったんやけど!
せっかくの名探偵真樹緒がだいなしやってんけど!
最終的には雪崩が全部いいとこ持って行ったってゆうか。
その雪崩もこーちゃんのおかげやから、俺最終的に特に何にもしてへんってゆうか。


「こーちゃんが頑張ってくれたんよね。」
「(ふるふる)」
「またまたごけんそんー。」


こーちゃんの悪いくせやで、それ。
こーちゃんは俺のご自慢のお嫁さんやから、そういう時はじしんまんまんに頷いてくれると旦那さんの俺もちょう嬉しいわ。
鼻たかだかよ!


「あ?何の話だ。」


お前明智の所のもんじゃねぇのか。
政宗ってあれだろう、奥州の独眼竜の事だろう。
伊達政宗。
日の本でその名を知らねぇ奴がいねェ程の有名な猛者だ


「どういう事だァ?」


真樹緒、お前伊達のもんだったのか。
何で明智光秀なんかといやがる。



「ぬ?」



ああ、そう言えばあにきは知らんお話やもんねえ。
ごめんね。
おいてけぼりでごめんね。
でもこのお話すっごい長いん。
ねー、明智の光秀さん。
ちょっと長くなっちゃうよね。
初めっから話しちゃうと。


俺が政宗様の所でお世話になってるってとこからお話ししやなあかんようになるもんね。
それから甲斐の皆ともお友達やってゆうことも外せやんし。
今や懐かしの松永さんとか、かわいいおじいちゃんな氏政じいちゃんの事とかも忘れずにね。
そうなったらこーちゃんとのなれそめとか、お母さんが三人もおるって事とかもじっくりお話したいし。
それぞれのお母さんが優しいんやけど怒ったらすっごい怖い事は絶対にしっかり聞いといて欲しいし。
そこまでお話してやっと明智の光秀さんとの出会いが始まるやん?
出会いが始まっておこしの事とかお習字の事とかを説明して、それから、えーと、蘭丸君のお母さん?やっけ?
あ、ちがうちがう。
その前にさっちゃんとかすがちゃんとこーちゃんがお迎えに来てくれたお話忘れてた。
たいへん。
またさっちゃんとかすがちゃんに怒られてまうやん。


は…!!


あれ、でもちょっと待って。
お話もしやなあかんけど、さっちゃんとかすがちゃんは無事やろうか。
俺ちょっと今まで何やテンション上がってすっかり忘れてたけど。
さっちゃんとかすがちゃんちゃんと逃げ切れたやろうか。
蘭丸君とか蘭丸君のお母さんとかに捕まってたりせえへんやろうか。
俺とこーちゃんと明智の光秀さん先に逃げてきてしまったけど。

ぬん、しんぱい。
さっちゃんもかすがちゃんもお忍びさんやから大丈夫やと思うけどー。
でもー、ぬんー。


明智の光秀さん、さっちゃんとかすがちゃん大丈夫かなあ。



……
………



西海の鬼、事のいきさつは私から説明させていただきます。


あれに任せていては日が暮れても本題に入りません。
よろしいですね。


おうよ、頼んだぜ明智光秀。


おめェの言いたい事はよく分かった。
苦労してんだな。


あれ、俺スルー!?


ぬーん!
ええまじで!
今ちょう俺大事な事聞いたのにスルー!?
あ、あにきもそんなまじがおで!
さっちゃんとかすがちゃんのお話にもっとこう乗っかってきて欲しかったな俺…!
さっちゃんとかすがちゃんがピンチかもしれへんねんやけど!



あれ、でも初めは何のお話やったっけ。



ぬん?
あれ?


「西海の鬼、先だって伊達と織田が戦をしたのはご存知で?」
「あァ、」


勝敗がつかなかったって奴だろう。
旧今川領で。
天候が悪く互いに軍を引く他無かったそうじゃねぇか。


………、それについては何も申し上げる事はありませんが。
「やぁやぁ、やからそれこーちゃん、」
忍。
(しゅた)
もがもがもが!


こーちゃん!
ちょっとこーちゃんおれお口ふさがれたらしゃべれやんのやけどもがもが!
あれでも俺あにきにだっこされてたはずやのに、いつの間にこーちゃんの腕の中へ!
ぬん!
あにき!
俺もあにきにお話したいのにもがもが!!



…いいのか、あれァ。
いいんですよ話が進みませんから。


話を戻しますが、私もその戦場に浅井軍と共に進軍しておりまして。
この子はその時に俘虜として連れ帰ったのですよ。


「俘虜だと?」
「ええ、」


俘虜の自覚も無いそれはそれは図太い子供だった訳ですが。
その辺りは割愛させていただきます色々面倒臭いので。


「その真樹緒ですが、私の謀反と同時に、やって来たあれの迎えと共に甲斐へと発つ予定でした。」


ですが非常に残念な事にその予定が狂ってしまったのですよ。
結果私へと放たれた追手に追い詰められ海に身を投げた訳です。
海に身を投げ運よくここに流れ着き、あなたに発見されました。
事実は以上です。
一言申し上げておく事があるとすれば海へ身を投げると言いだしたのはあれであって私ではありません。
あなたもあれを甘やかし過ぎると痛い目を見ますよ。
何か他に聞きたい事があるならお応えしますが。


「謀反につきましてはあなたがご存知の通りです。」


私は主である信長公を裏切り、その首を取らんと策略を巡らしていました。
まぁ、この子ととある方のおかげでそれを遂げる事は出来ませんでしたが、ね。


「もがもが、」


明智の光秀さんが俺の頭をくしゃくしゃまぜた。
笑いながらため息を吐いて。
でももがもがしてる俺を全然全く助けてくれる様子が無くて俺は更にもがもが。
むしろやっと静かになりました的な。
もう少しそのままでいなさい的な。



もがー…


そりゃあこーちゃんの素敵筋肉はとってもあったかいけどー。
俺としてはうちのお嫁さんのぶゆうでんを語りたいってゆうか。


「そこで一つあなたに頼みがあるのですが。」
「おっと、分かってるぜ船に乗せろってんだろう。」


見た所てめぇらは手負い。
こんな無人島にいたらすぐに野垂れ死にだろうよ。


もが…!


やっぱり俺スルー!!
ぬーん!


こーちゃん、こーちゃん。
見たこーちゃん。
明智の光秀さんとあにき俺をするーするねんで。
ひどいとおもわない!
俺がこーちゃん自慢しようと思ったらするーするねんで!

ぬん。

でも俺がじとっと二人を見ても二人は知らん顔でお話してるん。
俺がもがもがゆうてるのに!
お話聞いてってゆうてるのに!
どうおもう!


「(…)」
「え?」
(しー)
こーちゃんまで…!!


およめさんまで!
ぬん。
俺しょっくよ。
こーちゃんにまで静かにして―ってゆわれるなんてー。
それもこれも明智の光秀さんとあにきが俺を仲間外れにするからー。
スルーするからー。


もー。
ちょっとちゃんと聞いてくれてるんあにきと明智の光秀さん!


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キネマ主がまるで鴨田さんのようだ(笑)

  

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