明智の光秀さんがお仕事に出かけてもうて。
出かけてもうたと思ったらこーちゃんとさっちゃんがやってきて。
先に俺を探しに来てくれてたかすがちゃんと四人で明智の光秀さんが帰ってくるまでおこしでも食べてのほほんと待ってようかと思ったら、今度は蘭丸君ってゆう男の子が明智の光秀さんのお屋敷にやってきちゃって。
何でか分からんけどその蘭丸君にお屋敷燃やされています真樹緒ですこんにちは…!
説明が長くってごめんね…!


ぬーん…


ええ、まじで。
蘭丸君まじで。
さっきの矢の雨だけでもすごいなあとか思ってたのにその矢の先に火つけて射って来たんやで蘭丸君まじで…!
お屋敷の上だけ火の雨やで…!


お屋敷今火事なん。
すごい燃え始めててね。
こーちゃんと俺は先に逃げろって言うさっちゃんとかすがちゃんのお言葉に甘えてお屋敷の裏っかわに逃げてるん。


ぬん、二人は蘭丸君を足止めしてくれてるんやって。
何や蘭丸君俺らを見逃してくれそうにないんやって。


蘭丸君、おともだちになれたらな、って思ってたのに。
せっかく俺よりちっちゃい子見つけてちょっと俺嬉しかったのに。
お話聞いてくれる様子が全然無くって。
俺とこーちゃんは蘭丸君から逃げる為に全力疾走です!


「ぬん…」


お屋敷の裏っかわってね、森なん。
ものすごい森なんよ。
その中をこーちゃんが俺をだっこして駆け抜けてるん。
時々さっちゃんとかすがちゃん大丈夫かなぁって振り返ってみるんやけどそこは真っ赤になった明智の光秀さんのお屋敷が見えるだけで。


「さっちゃん…かすがちゃん…」


しんぱい。
しんぱいやけど、二人ともお忍さんやから大丈夫、やと思う。
逃げるのを優先するからってゆうてたから大丈夫やと思う。
ちゃんと蘭丸君から逃げてくれると思う。
ほんで後で二人と合流して、一緒に政宗様のとこに戻るん。
ゆっきーやおやかた様、こじゅさんおシゲちゃんが待っててくれる甲斐へ戻るん。


明智の光秀さんにご挨拶できひんかったのは…ぬん残念やけど。
かすがちゃんが言うにはここへ明智の光秀さんが戻ってくるかどうかも分からんのやって。
何や大変なんやって。
でも、俺がおるん知ってるし戻って来てくれるん違うかなって思ったんやけどお屋敷も燃えてしまったやろう?
やからね、一回甲斐へ戻ろうってゆう事になったん。
真樹緒には待っててくれる人がいるでしょってさっちゃんもゆうてくれたから。


「だいじょうぶ、だいじょうぶ…」


なぁ、こーちゃん。
戻るんやもんなって凄い速さで森を走ってるこーちゃんにつかまってぎゅうって目を瞑った時。


ドンドンドンドン!


「(!)」
「!?」


森の中やのに銃声が。
体がびくって揺れるぐらいの銃声が。
走ってたこーちゃんがすぐに木の上に飛び上がって辺りを見渡したん。


「…こーちゃん、」


俺もどきどき。
首をきょろきょろ。
耳をすまして。


ばさばさばさって鳥が飛び立つ音が聞こえたん。
周りの木が揺れてるん。
俺もこーちゃんと同じように辺りを見渡すけど、人がおる様子が無くって。
ちょっと遠くに見える向こうの方ではやっぱり明智の光秀さんのお屋敷が火事で。
煙たい臭いはずーっとするけどそれは火事の煙のはずで。


「こーちゃん…」


ちょびっと、何や、心臓がどきどきびっくりしてこーちゃんを呼んだ。
こーちゃんを呼んでぎゅって首に抱きついた。
やって音したはずやのに誰もおらへんねんもん。
鳥の鳴き声とか木が揺れる音とかが大きくって、なんか、理由とか分からんけどどきどきするんやねんもん。
誰かに見られてる気がするねんもん。


「(なでなで)」
「こーちゃん、」


俺がそんな風にどきどきしてたらこーちゃんが頭を撫でてくれる。
大丈夫です、心配ありませんって撫でてくれる。


「ありがとこーちゃん。」


そしたらちょっぴり落ち着いて深呼吸。
冷たい空気をめいっぱい吸い込んでゆっくり吐いた。


ういうい。
俺にはこーちゃんがおるから大丈夫よね。
分かってるよ俺のご自慢のこーちゃんやもん。
心配する事なんてないよね。
分かってるよ!


でも、ほらこーちゃん、まだ病み上がりやん?
ほら俺よりおっきい怪我してたやん?
なんせ斬られて崖から落ちてしまった訳やし…


は…!!
「(?)」


そうやん。
そうやんこーちゃん俺大事な事忘れてた…!
こんなきんちょうした雰囲気の時にあれやけどちょっとこーちゃん、俺こーちゃんに大事なお話あるよ!


「(?)」
「こーちゃん、あの時俺をかばったやろ!」
「(?)」
やぁ、ほら雪崩作戦の時、がけの上で。
「(!こくり、)」
「ぬー!あかんやんー!」


あのね!
こーちゃんちゃんと聞いてね!

たしかに俺とこーちゃんはお嫁さんとお婿さんやで?
とっても仲良しさんでらぶらぶやで?
いっつも一緒におったよ?
ふうふ関係もりょうこうよ?

でもね!
いくら俺がちょびっと危ない場面やったからってそこにこーちゃんがしゅばっと出て来たらあかんやん!


「(………?)」
やぁやぁ、そんな何言ってるんですかーみたいな顔せんとー。


俺絶対今ゆうてる事が正しい自信あるよ!


あのね、聞いてこーちゃん。
こーちゃんは俺が怪我せんようにって庇ってくれたかもしれへんけどね、俺としてはこーちゃんが怪我してしまうんが嫌ってゆうか。
こーちゃんが怪我せんでもええところでね、怪我させてしまったってゆうんがお婿さんとしてどうなんやろうってゆうか。


ぬう、何てゆうたらええんやろ。


助けてもらったのはとってもありがとうなんやけど、こーちゃんが怪我したのを聞いて俺、自分にちょっとむかむかしたってゆうか。
危ない事させてごめんねってゆうか。

ぬん…


「だからね!」


俺を庇ったりなんかしたらあかんの!


俺悲しいやん、こーちゃんが怪我したら。
心配するやん、こーちゃんが怪我したら。

俺こーちゃんの事大好きやで?
すっごい大事やで。
こーちゃんも俺の事好きってゆうてくれるやん?


「(こくり)」
「ありがと!」


やからやぁ怪我とか、その、あんまりして欲しくないん。
こーちゃんは強いお忍びさんやけど、俺と同じで斬られたりしたら血が出てしまうやろう?
斬られたら痛いし、血が出すぎたら死んでしまうんやで。
こーちゃんちゃんと自分を大事にしてや。
俺を大事にしてくれるぐらいこーちゃんのことも大事にしてね。
そうやないと俺とっても悲しい。


「わかった?」
「(………、)」
「こーちゃん。」
「(……、)」
「しんぱいなん、俺。」
「(…)」
「…こーちゃん、」
「(………、こくり)」
「ぬん!」


いい子!
ちゃんと俺の言いたい事伝わった!
さすがこーちゃん俺のご自慢こーちゃんいい子!


「やくそくね!」


はい、ほんならゆびきり。
ゆびきりげんまん、ってするよ。
これ約束する時のおまじないみたいなもんなん。
これやったらもう約束破ったりできひんねんで。

ほら指出して。
こーちゃん、ほら小指。
俺のとつないでね。


「うそついたら針千本のーます。」


ゆびきった!


ぬん!
覚えといてね。
ほんでこれからは二人で怪我しやんようにしようね!



「あらあら可愛らしい主従愛だこと。」



「ぬ!?」
「(!)」


おれがこーちゃんとゆびきりして、ぎゅってして愛をたしかめ合ってたら下から声が。
声と同時にさっきみたいな銃声が。
ガンガンガン!って三回も。


「こーちゃん!?」
「(しゅた)」


木の上におったこーちゃんがばびゅんって下に降りた。
俺は誰がそこにおるんか分からんかったんやけどこーちゃんは分かったみたいで、さっきと同じように森の中を凄いスピードで走るん。
俺の頭をぎゅうって胸にかかえてくれながらこーちゃんが走る。
俺は掴まってるんが精一杯で


「こーちゃ、」
「(しー)」


掴まりながらこーちゃんを見上げたんやけど「しー」って。
静かにじっとしててねって。


「そんな足では追いつかれてよ。」
「(!!)」


ドンドンドン!
ガンガンガン!



「こーちゃん!!」


こーちゃんが走って行った先におったんは女の人。
着物を来て正面から銃で俺らを狙ってきたん。
いつのまにってびっくりする暇も無くて、銃声が聞こえたと思ったら俺とこーちゃんは離れ離れ。
俺は草むらにごろごろごろって転がって、こーちゃんはおっきい手裏剣を構えてその女の人の前で。



「こーちゃん…」



誰やろう。
あのお姉さん誰なんやろう。
何で俺らが狙われてるんやろう。


蘭丸君のお姉さんかなんかやろうか。
……大穴でお母さんとか。
すんごい若いお母さんやけど。
ちょう美人なお母さんやけど。


てゆうかこの森の中あんな着物で走り回ってるあのお姉さんすごい…!
てゆうかかすがちゃんもやけど戦う女の人って何で皆あんなにないすばでーなんすごい…!


「ふふ…上総介様への謀反、その報いを受けるがいいわ。」


光秀の密事、坊やを始末せよとの仰せよ。
あなた達に何も恨みは無いけれど諦めて頂戴。
文句があるなら光秀におっしゃいな。



「へ…?」



お姉さんの持ってる銃が俺の方を向いた。
それと同時にこーちゃんが手裏剣を投げる。
またドン!っておっきな音がしていつの間にか来てくれたこーちゃんが俺をだっこした。


「こーちゃん!」
「(……、)」
「こーちゃん?」
「(    )」
「え?」



に げ て 



こーちゃんが俺をぎゅってしてくれたあと黒い羽に包まれる。
体が急に軽くなって風が吹き抜けた。


「っ何を!」


お姉さんの焦った声も風の音と羽の音でよく聞こえやんくって。
俺はこーちゃんも一緒に、って手を伸ばす。
すぐそこにこーちゃんが見えるのに。
見えるのに全然届かんくって目の前は真っ黒。


「こーちゃん!!」


ばさばさばさばさ。
俺は頭から足の先まで黒い羽に包まれて。




「………ぬ?」




気がつけばどこを見てもこーちゃんやお姉さんがいる気配は無くて。
でもやっぱり森の中。
森の中やのに何かザザーンて波の音みたいなんが聞こえて。
振り返ってみたら海が見えたりして。


え、海?


右を見て、左を見て、後は海。
崖のすぐ奥はざっぱーんって波うってる海。



えー………?



……
………


一体ここどこ…!


こーちゃん…
こーちゃん、俺自分のおる場所も分かれへんくって逃げるどころやないよ…!!



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明智の光秀さんは次回再会予定です。
キネマ主はまだ明智の光秀さんのお屋敷の裏がわの森にいますよ大丈夫!(笑)
久しぶりにキネマ主を書いて、予想外に長くなってしまったのでキリのいいところでアプしました。

  

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