「…結局お前も真樹緒に甘いんじゃないか。」
「えー?俺様締めるところはちゃんと締めてるじゃない。」
「どこがだ。」
「ぬ?」


俺が甲斐のお母さんと仲直りしてたら(やぁ、喧嘩してた訳やないんやけど!)後ろでかすがちゃんが溜息を吐いた。
「呆れた」って声が聞こえてくる。
「何が」って振り返ったら今度は黒い羽に包まれて目の前が真っ黒。
びっくりして俺は首を傾げて瞬きぱちぱち。
気がついたらそこはこーちゃんのお膝でした!
いつの間に!


「あーらら、取られちゃった。」
「こーちゃん!!」


今のこーちゃんがやったん?


「(こくり)」
「すごい!!」


さすがお忍びさんやねー。
瞬間移動も出来るんやねー。
この黒い羽に何や秘密があるんやろうか不思議―。

ひらひら降ってくる黒い羽を捕まえてじっと見てみる。
見れば見るほど黒い普通の羽なんやけど。
ふわふわつやつやの黒い羽。
カラスのカー君とおんなじ。


「って事で真樹緒。」
「う?」
「さっちゃんのお話も済んだし、そろそろここを離れるよ。」


かすがから聞いたかもしれないけどこの屋敷ちょっと様子が変だから。
言いながらさっちゃんが立ち上がる。
きょろきょろ辺りを見回してほら早く、って俺を見て手招きするん。
かすがちゃんも「そら見ろさっき言っただろ」って腕を組んで。


「ぬん…」


やぁやぁ、さっちゃんまでそんな。
せっかくこうやって感動の再会したんやしゆっくりしようやあ。
ほらここにおこしあるん。
明智の光秀さんからのお土産。
さっきはかすがちゃんとおこし食べてたんやけど、よかったらさっちゃんもどお?
おこし。
歯ごたえ抜群でちょうおいしいで!
おこし食べてちょっとまったりしようや。


「はい、こーちゃんもどうぞー。」


おこし。
ほどよい甘さでお茶との相性最高やから。
どうぞ。
たべて。


「(ぺこり)」
「さっちゃんもおこしどうぞ。」


ほら、俺かすがちゃんにも言うたけど明智の光秀さん帰ってくるまではここにおるつもりってゆうか。
急に俺がいなくなったらびっくりしてまうやん明智光秀さん。
やからおこし食べて待ってようかと…


駄目。
ひう…!!


笑いながらおこし差し出したらさっちゃんが怖い甲斐のお母さんに戻ったまじで…!!
おこし怒られたまじで…!



「でも、でも、俺ご挨拶もしてへんし、」
「駄目。」
「勝手におらんようになったら、」
「駄目。」
「さっちゃ」
駄目。
ぬーん!!


あれ、やっぱりさっちゃんが怖い…!
さっきすごいいいお話を二人でしたのにすごい怖い…!!
まじで!

お、俺おこしどうですかってゆうただけやのに!
明智の光秀さんが戻ってくるまで皆でまったりしてようってゆうただけやのに!


「あのねぇ、真樹緒。」


言い忘れてたけど。
さっちゃんが呆れた様な声で溜息を吐いた。
溜息を吐いて頬杖をついて俺を見る。
じーって見てまた溜息を吐いて。


「伊達さんがお待ちだよ。」


……
………


え?
伊達さん。伊達成実さん。


甲斐までいらっしゃってるよ。
凄い勢いで独眼竜に襲いかかってたよ。
尋常じゃないぐらいに怒ってるよ。
これ以上待たせてどうするの。



……
………


ぬーん!!!


えええ…
お、おシゲちゃんまじで。
てゆうか何で甲斐におるんおシゲちゃん。
奥州でお城のお留守を預かってるはずちがうんおシゲちゃん…!!

政宗様に襲いかかってたってどういう事やろう。
怒ってるってどれぐらいやろう。
やぁ、でも尋常やないんやから尋常やないよね。


ぬーん!
俺どうしたらええの!!



「奥州の道場を破壊していらしたらしいよ。」
「まじで…!!」


おシゲちゃんが何や本気!!
本気で怒ってるちょう怖い!
震える手を握り締めながらこーちゃんを振り返った。


こーちゃんこーちゃん。
おシゲちゃんが来てもうたんやって。
めさくさおこってるんやって。
俺どうしたらいいとおもう!


「こーちゃんはおシゲちゃんに会った?」
「(こくり)」
「お、お、怒ってた…?」
(………ふるふる)
「え、」
「あっ、ちょっとこら!何嘘教えてるの!」


あれだけ怒ってたの見たでしょあんたも!


さっちゃんが言うけど、こーちゃんは俺に嘘つかんもん!
おシゲちゃん怒ってへんってゆうてるもん!
一緒にお城から抜け出したこーちゃんが怒られてへんねんやったら俺も大丈夫かも!
すぐにごめんなさいしたら大丈夫かも!!


「そんな訳ないでしょ。」
「ぬ?」
「風魔はあれだよ。」


頑張ったで賞。


「ぬん…」


ほら、無茶言う真樹緒について行って一生懸命頑張ったで賞だよ。


「で、でも、俺もがんばった…」
真樹緒は頑張ったけど裏目に出たで賞。
ぬーん!!


真樹緒は安心なんかしてられないんだからね。
無茶して怪我までして、相当お怒りだよ。
頑張ったかもしれないけどその分裏目に出てるんだよ。
俺様達にどれだけ心配かけたと思ってるの。


さっちゃんがぽん、って俺の頭を撫でる。
覚悟はしておきなよって頭を撫でる。
すっごい良い笑顔で俺をちょう怖がらせるん…!


さ、さっちゃんそれどういう事。
俺も結構頑張ったと思うんやけど…!
そ、そりゃあ雪崩作戦はこーちゃんのおかげやけど、俺も作戦考えたりして参加してるねんで実は!


「その結果がこれだろう。」
「かすがちゃん厳しい…!!」
「私だって怒っているんだ。」
「ぬーん…」


それを言われちゃうとー。
俺は何にも言い返せないってゆうかー。

もう本当にね、今回は俺が悪いんやけどね、叱られても仕方ないんやけどね。
やっぱり怖いん奥州のお母さん…!


「はいはい、行くよ。」
「急げ、気配を探れば探る程不穏だ。」
「(しゅた)」
「あー!こーちゃん待ってー!」


よっこいしょってだっこしないでー!
明智の光秀さん待つんー!
お帰りなさいゆうんー!
かすがちゃんにもさっちゃんにもお願いしたのにー!


やぁ、これはおシゲちゃんに会うんが怖いからやないねんで。
それは全然違うねんで。
かんちがいしないでね。
あれだけお世話になったのにご挨拶も無しに勝手に帰るんとかあかんと思うん俺!
やから待って、ってこーちゃんの髪の毛引っ張ってみるんやけどこーちゃんはもうしゅたってお屋敷の屋根の上やし。
かすがちゃんもお隣で何や難しい顔やし。
さっちゃんはお忍びさんの顔で辺りをきょろきょろしてるし。


「俺のお話聞いて…!」
「(しー)」
「ぬ?こーちゃん?」


俺が切実にお願いしようと思ったらこーちゃんが人差し指立てて「しー」ってゆうん。
静かにしててねってゆうん。
それからさっちゃんが突然武器を構えてかすがちゃんが綺麗なピンク色の糸?を出して俺らを包む。


そしたら。
そしたら!!


ヒュンヒュンヒュン!


「!!!」
「やーっぱり来たか。」


屋根に弓矢の雨が…!!
突然大量の弓矢が俺らめがけて…!


ええええ…!
何この弓矢!
何この量!
どっから降って来てるんまじで…!
ってゆうかこの弓矢をはじいてるかすがちゃんすごい!!


「……織田軍か。」
「かすがちゃん?」
「真樹緒、じっとしてるんだよ。」
「さっちゃん、」
「(こ わ く な い か ら)」
「こーちゃん。」


ずっと降り続いてた弓矢の雨が止んで、さっちゃんとこーちゃんが武器を構えて屋根の下を睨んだん。
俺はかすがちゃんのピンクの糸の中でそれを見てて。
一体何が起こったんやろうってちょっとどきどきしてて。
かすがちゃんに「動くな!」って怒られて。


「あれ?何だお前ら。光秀はどこだよ。」


蘭丸は光秀を倒しに来たんだぞ!


見つけたのはちっちゃい男の子。
前髪をちょんまげにした、俺よりちっちゃい男の子(たぶん!)


「おお…」


やぁ、あれは結構ちっちゃいよ
背とかきっと俺の肩ぐらいやと思うよ。
何だか多分歳も年下やと思うよ。
ぬーん!!
かんげき…!


「感激してる場合じゃないでしょ。」
「ぬ?」
「あれは織田軍の森蘭丸だ。」
「蘭丸くん…!」


俺よりちっちゃい蘭丸君!
ミニマム蘭丸君!!


「ぬ、」


あれ、でも織田軍って。
織田軍って明智の光秀さんがおるところやろう?
やってこの間の戦も明智の光秀さんは織田軍代表でやってきたんやんなぁ?

あれ?
何で蘭丸君が明智の光秀さんを倒すん?
仲間や無いん?
かすがちゃんに聞いてみたら視線は蘭丸君のまんま答えてくれる。


「明智光秀が何を企んでいるかは知らないが、」


奴は織田軍が己の屋敷を攻めて来る事を見越していたんじゃないか。
この屋敷に人気が無いのも私を捕えたにも関わらず殺さなかったのもそれならば頷ける。


「お前がこの屋敷を無事に脱出できる様に明智光秀が計ったんだ。」


明智光秀は本能寺に向かった。
織田信長も本能寺だ。
そこで何があるかは私には分からない。

だが。


「明智と織田は袂を分かったのだろう。」


かすがちゃんは蘭丸君を見ながら厳しい顔をしてる。
俺も同じように見たんやけど蘭丸君は見れば見るほどかわいらしー男の子で、さっきあれだけ弓矢を降らせたとかそんな風に全然見えやんの。
弓持ってるけど、俺とそう変わらん感じの男の子やで。
ちょっと年下の中学生ぐらいに見える男の子やで。


「光秀がいないならお前らをやっつけてやるよ!」


信長様のご命令だからな。
光秀の屋敷を燃やして来いって!
邪魔するなら容赦しないぞ。



ぬん……



ぶっそうな事ゆうてるけど見た感じは普通の男の子なんやで蘭丸君…!!



「ちょっと真樹緒!そこ動くんじゃないよ!」
「(じ っ と し て て)」
「分かってるけどー!」


ちょっと蘭丸君とお友達になってみたいってゆうか!


---------------

これにておこしいかがですかは終わりです。
何とも中途半端ですが、次からはちょっと場面が変わって明智の光秀さんや政宗様のところにゆきまする。
蘭丸君の事をちっさいちっさい言っているけれど、多分そんなに大きさは変わらないと思いますぬん!

  

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