俺が怪我して運ばれた明智の光秀さんのお屋敷に、かすがちゃんがやってきて。
その後すぐにこーちゃんもやってきて、最後にさっちゃんが畳からひょっこり現れて。
お久しぶりの皆に会えたのはとっても嬉しかったんやけど感動の再会もそこそこに、甲斐のお母さんに睨まれてとっても緊張感に包まれています。
真樹緒ですこんにちは…!!
「ぬん…」
さっきまでこーちゃんのお膝に乗って、甲斐のお母さんの視線から逃げようとしてたんやけど、甲斐のお母さんは甲斐のお母さんでもやっぱり忍びさんで。
さっちゃんが伸ばした手をぎゅって握ったらあら不思議、黒い煙に包まれていつの間にかさっちゃんのお膝に瞬間移動。
捕まえた、ってにっこり笑ったさっちゃんが笑ってへんくって俺の胸はドキドキしっぱなしですどうしよう誰か助けて…!
ちら、って後ろを振り返ったらかすがちゃんが小さく首を振る。
こーちゃんが「がんばって!」って拳をぐっと握って応援してくれる。
ぬん…
その応援はとっても可愛いんやけど俺これからどうやって頑張ったらええんかよく分かって無いってゆうか…!
胸が張り裂けそうなんやけどどうしよう俺…!
そおっとさっちゃんに目を戻したらさっき頭突きをされたところにこつん、ってまたおでこをくっつけられた。
ひりひりしてるそこにもう一回あの強烈なんが来たらどうしようってびく、って肩が揺れたんやけどさっちゃんはそのまま止まって。
「真樹緒。」
「…はい、」
「俺様に言う事は?」
さっちゃんの目がすごく近い。
じっと俺を見て、俺を見て。
まっすぐな目はとっても力強くて逸らしたりできやんの。
さっちゃん怒ってるん。
でも、さっきみたいにおっきい声で怒ってるんと違うくって、静かに静かに怒ってるん。
腰に回ってる腕は俺が逃げようと思ったらすぐに逃げれるぐらい優しく俺を捕まえてて、それが逆に何や胸がきゅっとする。
多分、俺今まゆげが下がってると思う。
すごく情けない顔してると思う。
やって、やって。
「……ごめんなさい。」
さっちゃんのポンチョを持ってごめんなさい。
目はちゃんとさっちゃんを見てごめんなさい。
「真樹緒のそれは、何にごめんなさいなの。」
「俺…」
優しくさっちゃんが頭を撫でてくれる。
顔はね、まだちょっぴり怖いんやけどさっちゃんの手はとっても優しくてあったかい。
耳の後ろ、えりあし、あたまのてっぺん。
俺の力を抜くようにさっちゃんの手が俺に触れる。
「俺ね、」
「うん。」
「待っててねってゆわれたのに戦場に来てね、」
「うん。」
「戦場は危ないとこやって分かってたつもりやけど分かってなくてね、」
「うん。」
「皆にいっぱい心配かけてね。」
「うん。」
「………ごめんなさい。」
さっちゃんや、政宗様、ゆっきーにこじゅさんの目の前で倒れてもうてごめんなさい。
びっくりさせてごめんなさい。
俺考えたん。
もしな、俺の目の前で政宗様が斬られたりしたらって。
こじゅさんやさっちゃん、ゆっきーが倒れたりしたらって。
こーちゃんが、ぬう、こーちゃんは今回俺と一緒に斬られてもうたんやけど。
…は!
そうや、こーちゃんちょっと後で俺からお話あるよ!
俺が怒られてて忘れてたけど大事なお話あるよ!
危ない危ない、うっかりスルーしてまうとこやったー。
もー。
いくらお嫁さんでも大事な事はしっかり伝えやんとね!
「(?)」
「今はさっちゃんとお話中やからあとでね。」
「(こくり)」
でね!さっちゃん!
ちょっと話がそれてごめんね。
あのね。
「うん?」
「俺がもし、政宗様やこじゅさんや、さっちゃんゆっきーが斬られてしまうところ見たらね。」
泣いてしまうと思うん。
泣いて、泣いて、暴れてしまうと思うん。
誰の言う事もきかんくって、斬った人の所に走っていくと思うん。
腹が立って悲しくてどうしようも無くて皆を困らせると思うん。
「やから、ごめんなさい。」
さっちゃんの首にぎゅうって抱きついた。
かすがちゃんが教えてくれたん。
皆が俺の事を心配してるでって。
その時に俺分かったん。
俺はすごくすごく皆に大事にされてて、すごくすごく大切にされてるなぁって。
俺は俺が思ってるよりずっとずーっと皆に守られてたんやなぁって。
さっちゃんに抱きついたら背中をゆっくり撫でてくれる。
ぽんぽん、って頭を撫でてくれた時みたいにとっても優しい手つきで。
俺はそれが嬉しくてもっとさっちゃんにくっついた。
お久しぶりのお母さんの匂いに顔が緩んでしまうん。
「真樹緒。」
「はい?」
「さっちゃんさー、とっても心配したよ。」
心配で心配で、あの時何もできなかった自分が不甲斐無くてしょうがなかった。
俺だって体ごと崩れ落ちてしまいたかった。
手が震えたのは本当なんだ。
今だって少し揺れているんだから。
真樹緒に、絶対「ごめんなさい」を言わせようと思ってきたよ。
でもさ。
「さっちゃ…」
「真樹緒は俺達の事を思って、あそこに来てくれたんだってね。」
大将から聞いたんだ。
真樹緒が俺達のために何が出来るかって考えてくれたって事。
俺が思ってる以上に真樹緒は俺達の事を思ってくれてたって事。
さっちゃんが俺の顔を覗き込んで笑う。
いつもの、優しい顔で笑う。
ふんわり、俺がとろけてしまいそうな顔で笑う。
「ありがと。」
俺様怒ってるよ。
すっごく怒ってる。
でもそれ以上に真樹緒の気持ちを嬉しく思うよ。
「さっちゃん…」
「だからありがと。」
こつん、ってさっちゃんがまた俺とおでこをくっつける。
今度は笑いながら。
ぐりぐりぐりぐり擦りつけられて、「ごめんねさっき痛かった?」って聞いてくれる。
俺はそれに首を振って大丈夫!って笑って、もう一回さっちゃんにぎゅう。
ありがとうって、ありがとうって、それは俺のせりふなん。
雪崩作戦本当は浅井長政さんや明智の光秀さんをびっくりさせようって作戦やったんやけど、政宗様らまでびっくりさせちゃって。
結局まきこんじゃって。
心配かけて。
それやのにお迎えに来てくれてありがとう。
俺を怒ってくれてありがとう。
さっちゃんも、こーちゃんも、かすがちゃんも、ほんまにありがとう!
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長くなったのできりの良いところで一端アップ。
もう少し続きます。
それにしも言う程甲斐のお母さんが怒らなかったよぬん!
怒ってるんだけど多分顔を見たらいっぱいいっぱいになったのですきっと。
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