と、言うわけで。
お馬探してます。
真樹緒です。
森の中をてくてくずんずん歩いて片倉さんのお馬探してます真樹緒です。
「おーうーまーのおやーこーはー」
その格好やったら寒いだろうって片倉さんはマントみたいな上着を貸してくれました。
俺が羽織るとまるでロングスカートで、ひらひらふわふわロングスカート初体験な真樹緒です三回目ですこんにちは!
でもそうしたら片倉さんの方が寒いやん?
やって普通に服着てても息が白くなるぐらいの寒さやのに。
俺がそう言うたら片倉さんはそこらへんから枝をいっぱい取ってきてものの数分で焚き火を焚いてしまって。
石をカンカンってたたいただけで簡単に火をおこしてしまって。
怪我してるのになあ。
何でも出来るんやなあイケメンは。
なんて感心しながら俺は森に繰り出したわけです。
「なぁーかぁーよーしぃこーよーしぃー」
やから俺は心置きなく片倉さんの馬探してるんやけど。
黒い馬でー。
鞍に錦の文様でー。
文様でー……
……、
ていうか錦の文様ってどんな文様?
錦っていうぐらいやからコイとか?
錦鯉。
…鞍にコイかぁ…
うーんスタイリッシュ。
「いーつーでもいーっしょにー」
や、やからポジティブにいかな。
うん。
森の中を「お馬の親子」を軽快に歌いながらてくてく歩いて数分。
多分ここらが片倉さんが倒れてたとこやと思うんやけどー。
まだ矢とか刺さってるし、木とか倒れてるし。
前と同じように、人っ子一人いてへんそこをきょろきょろ辺りを見渡した。
「ぽっくりぽっくりあーるーくー。」
「お馬の親子」も結構佳境に入ったけど、黒い馬は見つかれへんくって。
これはもう二番にいくしかないんかなーってまた歩くけど俺実は二番知らんねんよ。
あかんやん。
このまま片倉さんの馬見つからんかったら一番をエンドレスやであかんやん。
俺がちょっと痛いやん…!
「……ぽっくりぽっくりあーるーくー…」
しゃあないからちょっとサビっぽいとこをもっかい繰り返して森の中を睨み付ける。
片倉さんのお馬やーいって呼んでみたんやけど。
「ヒヒン」
「うお!」
おった。
お馬おった。
「おおー!」
馬やで!
なま馬!
色も黒いし、何かキリッとしてるし、鞍ついてるし。
多分この子やんなあ?片倉さんのお馬。
コイの模様はどこにも無いけど。
「お前、どっから来たんー…」
まさかお馬の親子におびき出されたんやろうか。
森の熊さんの時もそうやったし。
歌ったらひょっこりくま顔出したし。
片倉さんのお馬もそうなんやろうか。
ぬん。
俺ちょっとすごい。
「ぶるる」
「ぬん、くすぐったいー。」
俺の髪の毛をもふっと食べてる人懐っこい黒い馬のたてがみをわさわさ撫でてみた。
顔をうずめるかんじでわさわさ撫でてみた。
何なんお前、俺のこと怖ないん。
かえらしいなぁ。
しかも毛がやーらかいわー。
さわり心地抜群やでー。
「黒いお馬は片倉さんのお馬ー?」
「ヒヒン」
「あ、やっぱり。」
さすが片倉さんの乗るお馬やねえ。
男前やで。
「ぶる、」
「あれ、男前違うん?」
「ぶるる、」
「あ、美人さんなん。」
「ヒン」
女の子でした!
片倉さんのお馬は黒毛美人な女の子でした!!
ああ、ごめんな髪の毛食べやんといて。
それ草違うよ。
「あんな、お馬が乗せてた人な、怪我してるんよ。」
「ブルル…」
「やから一緒に来てくれる?」
「ブル、」
もっしゃもっしゃ俺の髪の毛を食べてた美人さんは俺が言うてる事分かってくれたみたいで、髪の毛を離してくれた。
綺麗な毛並みのほっぺたを撫でておおきにって顔をすり付ける。
まつげの長い美人さんは小さく鳴いた後顔をすり返してくれた。
ぬん!
仲直り!
「ほんなら行きましょかー。」
ぽっくりぽっくり行きましょか。
片倉さん待ってるよ。
心配してたよ。
矢に当たったりしてへんか。
怪我とかしてへんか。
大事にされてるんやねぇ。
へへ、って笑いながら美人さんの手綱を取った。
「こっちやでー。」
真っ直ぐ行ってちょっと細い山道下ったら洞窟があるん。
多分お馬でも下りられる道幅やから平気やと思う。
すぐそこやからって緩く引っ張ったんやけど。
「お?」
美人さんが動かへん。
あれ。
どないしたん。
うん?って首を傾げて見せたら美人さんが片倉さんにかけてもらった上着を引っ張った。
「うおう!」
「ヒヒン。」
「うん?」
伸びる伸びる。
お馬のご主人から借りたもんやねんで。
食べたらあかんよ。
意外に力が強かった美人さんは上着を引っ張って足でカリカリ音を立てた。
ひづめでトントン地面を叩いて。
おん?
どういう事やろう。
「どないしたん?」
「ヒン」
「うん?」
ぶるる、と美人さんは首を振って背中を指す。
ううん…
これは乗れって事やろうか。
「ヒヒン」
「えぇ、俺乗ったことないよ。」
美人さんのお腹をさすって無理やって、って宥めてみた。
俺は歩きで大丈夫やから。
はよういこう?
そうやってもう一回美人さんの手綱を引っ張ってたんやけど。
「Ah―?」
「ぬ?」
ガサッってな。
後ろの草むらが揺れたん。
ガサッって揺れたん。
そんでもって揺れた音はちっちゃい音やったのに、でっかい馬が出てきたん。
しかもその馬の上に人が乗ってたん。
「――っ―!!!」
「…てめぇ、その上着は、」
しかも何か恐ろしい顔でこっち見てるん。
初対面にも関わらずものすごい睨みつけられてるん。
ピンチ!
俺ピンチ!
「あわわ…」
はいここで!
片倉さんとの大事なお約束その2!!!
面構えの悪い奴と目が会ったらすぐに逃げろ!
がってんしょうちのすけ…!
「っはいよー!!」
死ぬ気になったら人間なんでも出来る…!
俺は目の前の美人さんの上にまたがった。
ごめん、美人さんのたてがみちょっと引っ張ってもうた。
でも俺今めっさまじやねん許してんか。
そして手綱を持って「お願いやから走ってぇな!」って美人さんの首を叩く。
「ヒヒン!」
美人さんは空気の読めるお馬さんでしたすごい!
俺が乗った瞬間に走り出した美人さんは猛スピードで森を走ってくれる。
流石お馬ってゆう速さで走ってくれる。
そうほんまにめっさ早いんです。
「きゃぁぁぁ!落ちるぅぅぅ!!」
そして何気にお馬さんって高い…!!
怖い!!
振り落とされんようにしがみつくのが精一杯なんやけど誰かたすけて!
こんなスピードで片倉さんのお馬が走るもんやから逃げ切れるかと思ったのに。
「っ逃げんじゃねぇそこの餓鬼!!!」
「いややぁぁぁぁ!!」
後ろから変な兜かぶった目つきの悪い怖い人が追いかけてくるもんやから生きた心地がしません!!
サバンナでチーターに狙われるトムソンガゼルの気分です!
あの子ほんま毎回チーターに狙われて大変やんな。
今やったらあの子の気持ちが分かる…!
「チ、てめぇ止まらねぇなら力ずくで止めるぞ!」
「目がまじやしいいいいい!」
あの恐ろしいお兄さんが何かふりかぶりました。
ちょっとあれ刀やないん。
背中がぞっとして美人さんにつかまる。
多分聞こえやんやろうけど思いっきり「片倉さぁぁぁぁぁん!!!」って叫んで俺と美人さんは森を駆け抜けた。
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やっとこ筆頭が出せました。
キネマ主は別に動物と話が出来るわけではなく、エアーが読めるのだと思います。
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