片倉さんはとっても優しいお兄さんでした。
何か色々よう分からんようになった俺が落ち着くまで、ずっとぎゅーってしててくれたん。
おっきい腕とあったかい胸は俺の力をすうーっと抜いてしまって。
お腹に中にあったもやもやまでどこかに吹き飛んで行ってしまいました真樹緒ですこんにちは!
ぬんぬん。
素敵筋肉は相変わらずぬくぬくなん。
思わずまた寝てしまいそうになったんやけど、あかんあかん。
片倉さんはな、「政宗様」を探さなあかんねんて。
どうやら片倉さんが倒れる前に別れたらしいん。
一緒に探そうにも俺はここらへんよう知らんし、でも片倉さんも怪我してるし。
で、どうしようって首を捻ってたらやあ。
「俺の馬がいるはずなんだが…」
「うま…」
馬やって!
馬!
しかも片倉さんが乗ってたってゆう本格的な馬…!
俺、馬ってポニーしか見た事ない!
中学の遠足で行った牧場でポニーしか見た事ない!
ちっちゃいポニーしか見た事ない!
でもそのポニー、とっても可愛いポニーでやあ、栗色のたてがみはサラサラで触り心地がめっちゃ気持ちよかったんやで。
「錦の文様がある鞍を乗せた黒馬だ。」
「はい!俺さがしてきます!」
はいはいはい!
正座をしながらびしっと右手を挙げた。
片倉さんびっくりして目をぐぐっと大きくしたけどこれは譲れやんよ。
俺探す!
馬探す!!
本物の馬見たい!!
「だが…」
「やって、片倉さんあんまり動いたらあかんと思うん。」
この洞窟にやったら俺、うろうろしてもちゃんと戻ってこれるし。
もうここで戦はやってへんのやろう?
国境やいうても片倉さんのご主人「政宗様」の領地らしいし。
「だいじょうぶ。」
「真樹緒…」
「ね?」
へらってわらって片倉さんを見た。
やっぱり何や難しい顔して目を逸らされたんやけど、そんな顔したら折角の男前が台無しやで。
うんうん唸って「危険じゃねぇか」とか「やっぱり俺が」とか言うてる片倉さんの皺寄ってる眉間に人差し指をビシリ。
「真樹緒?」
「何かあったらすぐに戻ってくるから。」
俺ちゃんとお約束するよ?
そのままぐりぐりと眉間をほぐす。
な?ってもう一回首を傾けたら思いっきりため息を吐かれてしまったん。
あれ?
そんな心配?
大丈夫やで?
俺、結構慎重派やから無茶とかせえへんって。
うん?
信用できひん?
そこはポジティブにいこうや。
「真樹緒。」
「はい。」
今から言うことを覚えろ、って片倉さんが覚悟を決めたような顔で俺を見た。
とっても真剣な顔で俺を見た。
あら、また眉間に皺寄ってしまったねえ。
後でぐりぐりしにいこう。
狙いにいこう。
「誰か人を見つけても無闇に声をかけるな。」
「はい。」
「もし面構えの悪い奴と目が合ったらすぐに逃げろ。」
「…はい。」
「いざとなったら俺の名を呼べ。叫べ。駆けつける。」
「…はーい。」
うーん…
片倉さん、お兄みたいやで。
大丈夫やってゆうてるのに。
お馬探すだけなんやからきっと何もないのに。
もー。
心配しょうなんだからー。
「分かったのか?」
「はぁーい。」
お耳にたこが出来てしまいそう。
痺れてきた足をさする。
その後同じ事を三回復唱させられてやっとこ馬探しに洞窟を出させてもらいました!
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