「Shit!!」
何だって明智の野郎が出てこねぇ!
どいつもこいつも浅井の兵ばかりじゃねぇか!
「政宗様!油断なさいますな!」
「Ha!誰に言ってやがる!」
お前こそ、気合いが入ってんなァ小十郎。
「無論、」
浅井長政の目的は恐らく我ら東国との連結に揺さぶられている徳川への牽制。
我らの進軍は耳に入っておりましょうが片手間で相手をされては。
奥州の竜は中々の荒者故。
侮られるなど、この小十郎の気が済みません。
不敵に笑う小十郎に満足して前を見据えた。
「はん…」
己の首を取ろうとやってくるのは浅井の兵ばかりで依然目指す明智の姿は見えない。
土煙りけぶる中、浅井の大将を探すがその姿さえも。
「全く…性に合わねぇぜ…!」
じわじわと勢力を削ぎ落としていくような戦い方は柄では無い。
正面から突き進み、突き進み食らいつく、それが奥州の竜だ。
雑魚はお呼びじゃねぇんだよ。
洒落臭ぇ!
「筆頭!浅井の軍が動き出しましたぜ!」
「俺達誘い出されてるんじゃねぇですか!?」
「チ、」
出端を挫かれるとはこの事だ。
揚々と今川にやってきてみれば目途の明智光秀の姿は見えず、明智軍も見えず、まみえたのは浅井の軍勢で。
苛立つ己を諌める小十郎の声を聞き流し、駆けた戦場に大将はいない。
始めから大将と撃ちあえるとは思ってはいなかったがこれでは舐められているようで気に食わない。
俺達がここに来ることはとうに分かっていた事だろうに。
これを機に伊達を落としに来るぐらいの意気はねぇのか。
叫んだところでわらわらと己に立ち向かってくる雑魚が減る訳も無い。
「MAGNAM STEP!!」
いい加減疼く腕を振りかぶり、何人目か分からぬ浅井の兵を斬った。
小さく息を吐けばすぐ傍に小十郎の背が見える。
心中穏やかでないのはその背も同じだろう。
相手方の本意を計りかねている。
確かに浅井軍は動き出した。
誘い出されている様な節もある。
だが奴らがこのまま引いて策はあるのか。
考えられるのは姿を見せない明智の野郎だが、背後を取られるような馬鹿な事をするつもりはない。
奇襲に備え半数の兵は未だ前線にやらせてはいないのだ。
「政宗様、」
誘いに乗るおつもりで。
「当たり前だろうが。」
Ha!
上等上等。
こっちが大将を誘い出してやるぜ…!
六爪を抜き握り締めれば刀身に雷が走る。
奮うのは血、背が戦慄いた。
竜を囲い込もうなんざ身の程を知れ。
誘い出したが最後、全てを食らい尽くしてやる。
「Are you ready guys!?」
「「「Yeah―!!!」」」
独眼竜は伊達じゃねぇ。
奥州筆頭伊達政宗、推して参る。
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短いですがいくさばの政宗様でした。
いらいらいらいら。
意気込んでやってきたものの、どちらの大将もいないので腸にえくりかえっています。
次からはまたキネマ主サイド。
多分今頃は甲斐めいぶつの蕎麦でも食べてるんじゃないでしょうか。
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