「こーちゃーん、ゆっきーら元気かなー。」
「(こくこく)」
「よもぎ餅喜んでくれるかなー。」
「(こくこく)」


政宗様とこじゅさんがお城を出て三日。
そろそろ今川さんちに政宗さまらが到着したくらいなんやって。
鬼さんがお馬の毛並み整えながら教えてくれてやぁ。
俺はそれを飼い葉運びながら聞いててな、グッドなタイミングに思わず顔がにやけてもうたん。

こーちゃんと二人、まだ雪が残る森の上をさっそうと飛んでます真樹緒ですこんにちは!
やぁ飛んでるんはこーちゃんなんやけど!

ぬー。
やっぱり春ってゆうてもまだまだ寒いやんなぁ。
ちゃんちゃんこ着てきて正解なん。
こーちゃんと二人お揃いのちゃんちゃんこでもう一回こんにちは!


「ほんならこーちゃんもごあいさつー。」
「(?)」
「こんにちはーって、」


ごあいさつ。
ほら、お揃いちゃんちゃんこやから。
恥ずかしがらずにどうぞー。


「(ぺこり)」
「いい子!」


よくできましたー。

ぬふー。
流石おれのこーちゃん。
ごあいさつも板についてきましたねー。
これでどこに行っても恥ずかしくないねー。
今川さんとこ行っても大丈夫ねー。


やぁ、俺な、はじめっから政宗様らが今川さんとこに着いたらこーちゃんに頼んでこっそり見に行こうって思ってたん。
結構前から計画立ててたんやで。
やってな、今川さんとこってゆっきーらがおるとこの近くらしいし。
こーちゃんに聞いたらお忍びさんやったら一日もかからんと着くってゆうし。

やぁ、行って別に政宗様のお邪魔するつもりは全然無いねんで。
ただちょっと見に行くだけやで。
ほらゆっきーやさっちゃん、おやかた様にも会えるしねー。


「でも後でこっそり政宗様らも見に行こうね。」
「(こくこく)」


前みたいな非常事態違うから、今回はこっそりのぞいてこっそり帰ってくるつもり。
危ないから戦場には近づきませんよーってゆわれてるから陣営?しか行けやんけど。
そういうお話でこーちゃんにもおっけー貰ったん。

ういういもちろん。
戦場なんて行って政宗様やこじゅさんに見つかったりなんかしたら絶対怒られるもんねー。


「あ、こーちゃん金平糖食べる?」
「(?)」
「女中さんがな、遊びに行くってゆうたらおやつにくれたん。」


はいどうぞ。
こーちゃんずっと走りっぱなしやし、甘いものは体力回復にええねんで。
やからどうぞー。


「(こくり)」


ありがとうございます、って頭をぺこっと下げてくれたこーちゃんのお口に金平糖を入れた。
やぁやぁそんな、こちらこそー。
いっつも俺のお願い聞いてくれてありがとうなーこーちゃん。
俺をだっこしてくれてありがとうなー。


「(ふるふる)」
「またまたごけんそんー。」


俺のありがとうは「大好き」ってゆう意味やから素直に受け取ってくれるとうれしいわー。

言うたらこーちゃんがちょっと照れながらうなづいてくれて、ほっぺたが緩む。
自分の口にも一粒入れてこーちゃんの背中にぎゅっとつかまりながら森を見降ろした。

白い息の向こうに更に白い森が見える。
今日は晴れてるからその雪がきらきら光ってすごい綺麗なん。
こーちゃんが飛んでるのがめさくさ早いから、景色はびゅびゅんと変わるんやけどね。
やっぱり綺麗。
たまにほっぺに雪の粒があたって冷たいけどそこはごあいきょうー。

しっかり目を開けて前を見てたんやけど、急に勢いよく風が吹いたと思ったら目の前が真っ白。
眩しくって思わず目を瞑ってしまったん。


「わぁ…!」


ほんなら体がふわって。
こーちゃんがだっこしてくれてるはずやのに何や空に浮かんでいくみたいにふわって。

あれ、でもちょっと待って。
ちょっと待って。
この感じ俺知ってる。
何この懐かしい感じ。


ぬん…


これあれやで。
俺が一番初めに甲斐に行った時のやぁ。
ほら、さっちゃんにだっこしてもらってたやん俺。
ほんでおやかた様のお屋敷に着いた時さっちゃんが思いっきり急降下したやん。
その時のふわっに似てるあのエレベーター的な。


「ぬーん…」


そおっと目を開いて見た。
恐る恐る開いて見た。
やってさっきから体は浮いた感じのまんまやし。
びゅううううって耳元ですごい音するし。
もしかしてこーちゃんが急降下でもしてるんやろうかってゆっくり目を開いたん。
顔に当たる風がちょう強くてよう見えやんかったんやけど。


………ぬ?


目の前に広がったんは青空。
その青空の下に見えるんは大きな川と一面の雪。
え、何でお空と川が一緒に見えるんここどここーちゃん…!
てゆうか何で森ぬけたらこんな高いとこを飛んでるん。
飛んでるってゆうか落ちてるん…!!


にょぉぉぉぉぉ!!!


こーちゃんに抱きついてる腕に力を込めた。
やって腕の力抜いたらそのままお空に放り出されそうなんやもん…!
こーちゃんはしっかりだっこしててくれてるんやけどほら俺小さいからすぽん、って抜け出そうなんやもん…!
やぁ、でもそんな事よりこんな勢いよく地上に向かって落ちてるけど着地とか大丈夫なんこーちゃん!!


「(?)」


ま か せ て


「(ぐっ)」

やぁその顔ちょう可愛いけど今はちょっぴりせちがらいー!!


俺を振り返って親指を立てたこーちゃんは胸を張ってて得意げで、やっぱりちょう可愛いんやけど、落ちる勢いがはんぱないのでうかうかときめいてられません…!
こーちゃんこーちゃん、もうちょいスローペースで甲斐まで向かいたいわ俺!
さっき食べたよもぎ餅が逆流してきそうよ!



「あれ、」
「どうした佐助。」
「いや、何か森から知った様な気配が…」


物凄い勢いでこっちに近づいてきてる気がするんだけど。
…するんだけど。
まさかねー。
森には四人程うちの忍隊やってるし。
………まさかねー。


「やぁ、さっちゃんまさかちがうよー!」
「えっ真樹緒!?」
「!何と!」


真樹緒殿ではござらんか!!


こーちゃんが胸張って着地した先はもう甲斐の森で。
森に降りたら素敵脚力のこーちゃんがすぐさま猛ダッシュ。
何や後ろから誰かが追いかけてきてたらしいけれどこーちゃんはおやかた様のお屋敷まで一目散に走ってくれて。
すぐに懐かしのつつじがさきやかたに到着したん。
お堀を飛び越えて塀も飛び越えて石垣も登って、ひょーいってこーちゃんが飛んだ先におったのはゆっきーとさっちゃんでした!


こんなところからごめんねー。
何やこーちゃんが誰かに追われてるみたいだからー。
ほら、俺背中乗ってるからこーちゃん武器使えなくてー。
ずっとクナイとかちっちゃい爆弾?で戦ってたん。


「長!申し訳ありません曲者の侵入を許しました…!!」

ちょ!うちの忍隊に何してくれてんのあんた!!


「(ぷーい)」
「ぬ?」


あれ?
さっちゃんのお忍びさん?
あれ?
ってゆう事は甲斐のお忍びさん?
あれ?
俺ら何ややってもうた感じ?


「おお!真樹緒殿!よう来られました!」
「あ、ゆっきーお久しぶり!!」


ぬ?
でもゆっきーが素敵なイケメン笑顔やから大丈夫、っぽい?


……
………


ぬんぬん。
ではでは。
大丈夫という事で!!
お忍びさんがところどころ焦げてるけど元気そうやから大丈夫という事で!!


「ゆっきーもさっちゃんもお久しぶり!」


やぁやぁ、約束してたんやけどちょっと事情が変わってもてー。
俺から遊びに来ましたよ!
急に来てごめんやでー。
でも、ちゃんとお土産も持って来たから中に入れてもらえると嬉しいわ!
そんでもって俺がお空飛んだ話も聞いてくれると嬉しいわ!
実はここまで結構なサバイバルやってんで!


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さくっと二話目。
小太郎さんは優秀だから一日ぐらいで甲斐までいけると信じてる。
次は幸村さん達か、政宗様達の様子を書けるといいな。

  

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