政宗様のお部屋はこじゅさんのお部屋から渡り廊下を渡ってすぐの所にあるん。
さっきのこじゅさんの顔を思い出しながら廊下を走って、まだちょっと顔のによによが直らん真樹緒です。
こんにちは!


ぬー。
こじゅさんかえらしかったよねー。
真っ赤な顔でびっくりしちゃって。
すぐばいばいしたからあの後の事は分からんけど、今ごろはおっきなため息吐いてるかもね!
俺は言いたい事言えてすっきりやけど。
やってこじゅさんも政宗様も大好きやもん!


「政宗様ー!」


叫びながら渡り廊下を曲がってもう政宗様のお部屋はすぐそこ。
かけ足を止めてゆっくり障子のとこまで歩いて行く。
息を落ち着かせて政宗様って呼んで、俺はちょっぴりどきどき。

やぁ、ほら。
今日政宗様と会うん初めてやから。
朝から全然お顔見てへんから。
政宗様に会いたいなーってゆうのん我慢しての名探偵真樹緒やったから。


ぬんぬん。
どきどき。
やっと政宗様に会えると思ったらやっぱりどきどきなん。


「政宗様。」


入ってもええ?
扉を少し開いてお部屋を覗く。
中がよく見えやんくてもうちょっと扉を右にずらしたら、突然その扉がすぱんと開いた。


「ぬっ!?」


すぱんと開いて腕を引っ張られて、体が傾いたと思ったらぼふっと何や固いものにぶつかる。
あれ何!?
じたばたしたら耳元で聞こえる笑い声。
くくく、って息を殺したようなこの笑い方は。


「政宗様!!」
「Hey sweet!」


あんまりお前がいじらしく俺を呼ぶものだから、いてもたってもいられなくなったじゃねえか。
どうしてくれる。
溜まりに溜まった政務を半ばもこなしていないというのに。


笑いながら政宗様はぎゅうって俺を抱きしめる。
腕の力がとっても強いからほんのちょっと苦しくなって頭をもぞもぞ。
動かしてたら意外に近くにおった政宗様と目があった。


「また小十郎の小言を聞く羽目になるじゃねぇか。」
「ぬ?でもこじゅさん政宗様のお相手して来いってゆうてたよ?」
「Really?」
「やあ!」


そうなん。
実はグッドタイミングなんやで。
休憩しましょー政宗様。
そんで名探偵真樹緒の調査報告聞いてやー。
聞いて欲しい事いっぱいあるんやから。

政宗様の腰に腕を回しておでことおでこをごつん。


「めいたんてい真樹緒?」
「そう、名探偵真樹緒。」


首を傾げた政宗様に笑う。
見かけは子供、頭脳は大人、みたいなノリで。
や、頭脳も普通に子供やけど。
そこは聞き流してちょうだいな。


ほらほら政宗様、って腕を引っ張って窓際へ。
今日はお日さまぽかぽかやからね、ひなたぼっこしながらお話ししましょ!


「はいはいこっちやで。」


俺に引っ張られるまま政宗様は窓辺に座ってくれた。

やぁ、ほんまにええお天気ー。
ちらっとお仕事山盛りの机が見えたけど気にしない。
こじゅさんにお許しもらってるもん!


「真樹緒?」


やっぱり首を傾げたまんまの政宗様の頭をなでなで。
相変わらず素敵なさらさらストレートですねー。
その頭にはてなマーク一杯飛ばしてるんはとっても可愛いんやけど、政宗様ちょっと俺もそこのお膝にお邪魔したいん。
政宗様とくっつけるベストなポジションを確保したいん。


とゆう事で。


「あぐらの上失礼しますー。」


のそっと政宗様のお膝に座ったら、喉を鳴らした政宗様に頭なでられて俺のとは比べ物にならんぐらいのたくましー腕がお腹に回る。
背中もほかほか、ちょっぴり墨の匂いの政宗様に包まれてやっと落ち着いたかんじ。


「…ぬーん。」
「真樹緒?」
「へへー。」


やっぱり政宗様の側が一番落ち着くよね。
気が抜けてしまうよね。
やぁ、こじゅさんやこーちゃん、おシゲちゃんに鬼さんも確かに捨てがたいんやけど!
政宗様はちょっと別ってゆうか!

ゆっくり体重を政宗様の胸の方に倒して息を吐いた。
はーって吐ききったら目をつぶって耳をすます。
鳥の声とか、風の音とか、外でお仕事してる人の足音なんかが聞こえて思わずほっぺたが緩んだ。
ほら、何か幸せやなーって思って。


「ではでは、本日のメインイベントー。」


頭とかほっぺたとかを撫でてくる政宗様はそのまんまにして懐から名探偵真樹緒のマル秘メモを取り出す。
幸せなまんまやからちょっと緊張感にかけるけどー許してねー。
これ苦労の結晶やねんで!


「何だ?」
「ちょうさほうこくなん。」
「調査報告?」


やぁ、俺な。
政宗様に内緒で明智の光秀さんの事調べてたん。
おシゲちゃんやこーちゃん、鬼さんこじゅさんに聞き込みしたんやで。
政宗様春先にお城を出発するんやろう?
それまでに参考になったらなーって思って。
ちょっとでも役に立ったらなーって思って。


「はい、プレゼントー。」


どうぞー。
そのメモにな、明智の光秀さんの全てが書いてあるんやで。
俺聞き込み頑張ったん。
政宗様の顔の前でメモを振る。


政宗様受け取ってくれるかなーって、喜んでくれるかなーって、考えながらメモ振ってたんやけど、全然全く受け取ってくれる様子が無くって思わず政宗様を見上げた。


「政宗様?」


あれ?
ぬん?


なあなあ政宗様。
どないしたんそんなびっくりした顔して。
俺が名探偵で驚いた?

やぁ、でも。
政宗様にびっくりして貰うんも嬉しいけど、俺としてはいつもみたいにめいっぱいイケメンな笑顔を見せて喜んでくれた方がもっと嬉しいわ!
ちょっとそれが楽しみなところもあったしやぁ。

目をおっきく見開いたまま俺のおでこあたりを見てる政宗様のほっぺをぺちぺち。
聞いてってぺちぺち。


「…真樹緒。」
「ぬ?」
「お前が…調べたのか…?」
「うん。」
「…俺の為に…、」
「政宗様のために!」


やってほら心配やん。
何や危なそうな明智の光秀さんやからね。
そう笑ったら、はっと肩を揺らした政宗様にお部屋に入って来た時と同じくらいの力でぎゅうされた。

ちょっと苦しいで政宗様…!


「お前は…」
「ぬ?」
「お前って奴は…」


ぎゅうぎゅうぎゅう。
いつの間にか腕と足とで政宗様にしっかり捕まってしまってて、俺は身動きとれやんの。
政宗様の頭は俺の肩にぐりぐり押し付けられるしやぁ。

ぬん…
どうしたん政宗様…!
ちょびっと苦しい!



「ぬー…」


それに何やちっちゃい子みたいやで。
可愛いけどやー。

すぐ横に見えるキュートなつむじをぐりぐり撫でて政宗様って呼んでみる。
ちょっと力が緩んだけど足も手もそのまんま。
やっぱり可愛くってもう一回つむじを撫でた。


「………、」


むん。
もしかしてこれは。


「…政宗様政宗様。」
「…何だ。」


離さねえぞ。


ぬー。
違うん違うん。
政宗様聞いて。
俺嬉しくって。

政宗様がこんな風にぎゅうってしてくれてるんは俺のマル秘メモ喜んでくれたって事やろう?
びっくりしてくれたって事やろう?
名探偵真樹緒はとっても幸せよ!
やからね、そのまんまでええからね、俺の調査報告聞いてな。


「明智の光秀さんの武器はでっかい鎌やねんて。」

これは鬼さん情報なん。

「ほんで明智の光秀さんはちょっと気味悪い人なんやで。」

おシゲちゃんが爽やかな笑顔でゆうてたよ。

「従兄弟に魔王のお嫁さんがおるん。」

こーちゃんが知ってたんやで。
やっぱりお忍びさんは物知りやんね。

「いくさばではな、明智の光秀さんを引っ張り出さなあかんよ、って。」

こじゅさんがゆうてたん。


「……正面突破だ。」
「う?」


そんなもん。
大将が出てくるまで待ってられるか。


「…ふふー。」
「……真樹緒?」
「俺も政宗様はそうやと思った!」


やぁ、こじゅさんもゆうてたけどね。

俺が笑ったら政宗様が顔を上げてくれた。
目と目が合って「やっと政宗様の顔見れた」ってゆうたらおでこにちゅうをしてくれる。

ぬん、こちょばい。


「真樹緒。」
「なん?」


俺のおでこにちゅうをしながら政宗様は耳元で名前を呼ぶん。
俺はちゃんとお返事したのに、政宗様はずっと黙ったまんま。
どうしたん?って振り返ろうとしたらその耳にまたちゅっ、って。


「政宗様?」
「…Thanks 真樹緒。」


お前のその気持ち、震える程嬉しく思う。
俺の為だと言うお前を心から愛しく思う。

どうしたらいい。
もっとこの胸の内をお前に伝えたいのに、相応しい言葉が見つからずもどかしい。
ただただ温かいものが溢れるばかりで。


「Thanks 真樹緒。」


俺のsweet。


耳を押さえて政宗様を見たら、俺が見たかった笑顔で笑ってくれた。
素敵な笑顔の効果は絶大で、俺の心臓がずきゅんと撃ち抜かれてしまう。
撃ち抜かれてどきどきが止まらんようになる。


「…政宗様嬉しい?」
「ああ。」
「俺、力になれた?」
「Of course、」


「…ほんまに嬉しい?」
「伝わらねぇか?」
「ぬう、ほんなら、」


どれくらい?


「くくっ…」


お前のそのcuteな顔中にkissしたくてたまらねぇぐらいな!


「ぬん!」


ばっちり名探偵真樹緒の役目を果たせた俺はとーっても嬉しくって、ゆうた通り顔中にちゅうをする政宗様に今度は俺から抱きついた。

もー、政宗様。
俺くすぐったいっていうてるのに。
でも、気持ちがいいからそれはもうちょい内緒にしとこうと思います!


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政宗様に調査報告が終わりました。
政宗様はキネマ主が調べてきた事は既に知っていましたが、自分の為にキネマ主が動いてくれた事が嬉しかったのです。

名探偵真樹緒はこれにて終わりますが、「明智の光秀さん」はもう一回続きます。
次は政宗様視点で。
キネマ主と現代についてお話。

  

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