という事でー。
こじゅさんに明智の光秀さんの事を聞こうと思ってたんやけどー。


何かもう聞く事残って無い…?


やって性格は聞いたしー。
武器も聞いたしー。
家族構成も聞いたしー。
結構大事な事はもう聞いてもうてるからいざこじゅさんに調査協力お願いしようにも何を聞いてよいのやらー。

ぬん、俺とした事が一生の不覚!
見えない大きな壁にぶち当たりました名探偵真樹緒ですこんにちは!


「うーん…」
「どうした。」


やぁ、うん。
こじゅさんちょっと待ってや。
今緊急事態なん。

俺は何を話せばいい、ってこっち見てくれてるこじゅさんにえーっとねぇって相槌を打って、聞く事残ってたかなぁって考える。

ぬーん。
ぬーん。

明智の光秀さんと戦うんやろー?
今川さんとこで。
ほんなら何が分かってたら政宗様が戦うのに便利かなー。
今川さんとこがどんなとこかはもうきっと知ってるやろうし。
ほら立地条件ってゆうん?
う?
違う?
やぁ、戦って場所とかも大事やん?
でもそこは戦う前から政宗様がもう調べてると思うんよねー。

やからこじゅさんに聞くんやったらそれよりも。


「なあ、なあこじゅさん。」
「ああ、」
明智の光秀さんどんな作戦練ってると思う?


………
…………



「ぬ?こじゅさん?」
「いや、意外に的を射た問いだと。
ぬーん。


こじゅさん俺を何だと思ってるんー。
名探偵真樹緒はちゃんと調査する内容もしっかり考えてるねんで!
さっきはちょっと焦ってたからこう何を聞こうか迷ってもうたけど。
壁にぶち当たってもうたけど。


ウサギのシャーペンをふりふり。
こじゅさんを「もー」って睨む。

ほらほらこじゅさん。
作戦作戦。
明智の光秀さんどんな風にやってくると思う?


「そうだな…」


メモをしっかり握って聞き込み。
口元に手をあてて考え込んだこじゅさん見上げて名探偵真樹緒緊張の一瞬です!


「真樹緒。」
「う?」
「俺達が奥州を発つのは春先だ。」
「うん。」


と言っても恐らく山肌には残雪残る時期で。
こじゅさんが俺の目をじっと見る。
じっと見ながらゆっくり話してくれた。


「明智は自軍の他、織田の一党を率いて出陣するはずだ。」


奴らの狙いが一体どこにあるかは分からないが、政宗様は正面から殴り込んで行かれるだろう。
戦場は山と森に囲まれた盆地だ。
左右背後頭上、全てにおいて油断は出来ない。


なぐりこみ…


ぬう。
やりそう。
政宗様やったら殴り込んで行きそう。
ほら、政宗様いつでも最初からクライマックスやから。
まじやから。


「明智光秀は第六天魔王織田信長と並ぶ程非道残虐だと聞く。」


楽に戦わせてくれる相手じゃねぇ。
常に奇襲、搦め手攻めの想定をしていなければならないだろう。
明智光秀が大将なのは明確だが、恐らく明智本人は戦が始まっても高みの見物だ。


「明智の光秀さん見てるだけ?」
「大将はそういうもんだ。」


その明智光秀をどれだけ早く戦場に引っ張り出せるかが勝鬨を決める事になるだろう。
何にせよ、一筋縄では行きそうには無いな。


ちょっと困った顔でこじゅさんが笑う。
手強い相手だな、ってため息吐いて笑う。

あんな強いこじゅさんがこんな事ゆうんやから明智の光秀さんってほんまに大変な相手なんやなぁって俺はカチッとシャーペンの芯出してメモにぐりぐり。
意味の無い黒丸をどんどん大きくしていったりして。


「ぬう…」


やって、何か、ちょっと、不安やないけど。
政宗様が負けるとか思って無いけど、ぬう、もやもやするんやもん。
………怖なってんもん。


メモの端に明智の光秀さん要注意かっここじゅさんかっこ閉じって書いて、更に要注意の下に線を引いた。
でも俺のもやもやは全然無くならんくって眉間にシワが寄るん。
唇をきゅって結んでメモを睨んでたらシャーペンの芯が折れた。


むう、ふきつ。
………やなかんじ。


「真樹緒。」
「ぬ?」


折れたシャー芯のくずを集めてたら頭があったかいもんに包まれた。
ゆるゆるかき混ぜるそれはこじゅさんの手で、優しくあやすように俺の頭を撫でる。

大丈夫だ、安心しろ。

いつものこじゅさんの声がすとん、ってお腹の中に入ってきてもやもやしてたんがちょっと薄れた。


「……ぬん…」


お腹をさすさす。
お腹をぽんぽん。

こじゅさんの声ってふしぎ。
もやもやちくちくしてたんが、知らん間にほっこりしてしまう。

ふしぎ。
ちら、って見上げたらこじゅさんが笑った。


「政宗様の背中は俺が守る。」


傷一つどころか一歩たりとも敵兵を近づけはしない。
だからお前は心配などしてくれるな。
そんな痛々しい顔をしてくれるな。
真樹緒がそんな顔をしていると俺も政宗様も落ち着いて刀も振るえやしねぇ。

出来ることならいつもの様に。
あの花咲かんばかりの笑顔で「行ってらっしゃい」と送り出して欲しい。
それを見てやっと帰ってこなければと身が奮い立つのだ。


ぽんぽん俺の頭を撫でながらこじゅさんが言うた。


「頼む。」
「こじゅさん…」


それを聞いた俺のお腹はさっきまでのもやもやなんか嘘みたいに無くなってほっこり。
じんわりぬくぬく体があったまるん。
やっぱりやっぱりふしぎ。

あんなにお腹ぐるぐるしてたのに。
眉間のシワもいつのまにか無くなってたんやで!

ぬん…


「こじゅさんが、そう言うんやったら、おれ…大丈夫。」


不安とか、心配とか、怖いんとか、全部。
…うん、大丈夫。
すうって大きく深呼吸。
ゆっくり息を吐いたら落ち着いた。


「政宗様とこじゅさんが俺にはついてるもん。」


へへ、って笑って起立。
こじゅさんも政宗様も頑張ってるのに俺がしょんぼりしてたらあかんやんね。

ぬうぬう。
俺としたことが!
ごめんねこじゅさん心配かけちゃって!
俺もう大丈夫。

メモとシャーペンを懐に入れて笑う。
ちゃんとこじゅさんが言う顔で笑ってるかなぁ。
そんなん気にした事なかったからやぁ。
いつもと一緒なんやけどね!


「俺、政宗様のとこ行ってくる。」
「そうか。」


そろそろ政務に飽きられておられる頃だろう。
十分に相手をして差し上げて来い。


「はい!」


政宗様の事を何でもお見通しなこじゅさんが呆れた様に目を細めた。

やぁ、そんな顔して。
本当は最近政宗様が働き過ぎやってこじゅさん心配してたくせにー。
俺はこじゅさんの事お見通しよ!

でもそれは秘密なん。
こじゅさんが照れてしまうから。


「ではでは行ってきますー。」


失礼しました、ってお部屋を出ようとしたんやけど。
やぁ、そうや。
忘れるとこやった!
ちょっとこじゅさんに言うとかなあかん事あったん。


「どうした。」
「あのね、こじゅさん。」
「?ああ、」
「俺、こじゅさんの背中も怪我するん嫌やで。」


こじゅさんの広くて大きくて大人の男な背中は俺が飛び込んでいかなあかんねんから。

怪我とかしたらあかんよ。
ちゃんと自分の事も大事にしてね。
無理しやんといてね。


「な、」
「ほんなら今度こそ行ってきます!」
「真樹緒!」


待て!

障子を閉める隙に言うたらこじゅさんがびっくりして湯のみを揺らすのが見えた。

ぬー。
何やちょっと恥ずかしいから待ちませんー。

でもねちゃんとゆうときたかったん。
俺、政宗様の背中もこじゅさんの背中もおんなじぐらい大切なんやで!


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次回は政宗様。
キネマ主はこじゅさんも政宗様も大好きです。


  

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