「ごちそうさまでした!」
「よく食ったな。」


両手をぱんっと合わせてすっかり空になったぼうろの小皿にぺこっと一礼。
お茶をずずーっと飲み干して一息ついたら、目の前のこじゅさんに笑われてしまいました。
そろそろ名探偵真樹緒の出番なんやけど、お腹いっぱいで何だか動くのがとっても面倒くさくなってる真樹緒ですこんにちは!


ぬー…
もうこのままごろんと寝転んでしまいたい気分俺。
満腹幸せのまんま転がってしまいたい気分俺。
でも今寝転んだら確実に寝てしまうよね。
ほんでもって寝てもうたら晩ごはんまで起きられへんよね。
名探偵真樹緒どころやないよね。


………
…………


おれがんばる…!


「こじゅさーん。」
「あぁ?」
「あんな、あんな、」


ぼうろを食べ終わってまた机に戻ってしまいそうやったこじゅさんの袖を引っ張る。

やぁやぁ、こじゅさん。
お仕事いっぱいあるとこごめんなんやけど、ちょっとお話聞いてくれないかしらー。


「どうした。」


あんな、俺実は名探偵真樹緒やねん。
こじゅさんに明智の光秀さんの事を聞き込みするってゆう大きなお仕事があるん。
ここでうっかり寝てもうたら政宗様に調査報告ができやんからね。

やからやぁ。


「明智の光秀さんの事教えて欲しいん。」


袖を引っ張ったまんまこじゅさんにお願い。
びっくりして目を見開いてもうたこじゅさんを覗き込んでここに来るまでの事を話してみる。

鬼さんとかな、おシゲちゃんこーちゃんのとこにも行ってな、お話聞いてきたんやで。
今度の戦の事で。
明智の光秀さんがお相手なんやろう?
今川さんちで。
やからどんな人なんかな、って調べてるん俺。
調べて政宗様へ教えてあげるん。
政宗様、明智の光秀さんの事あんまり知らんみたいやから!


「…政宗様にか?」
「ぬん!」


ほら見て。
これ、その時のメモなん。
ぺら、って懐に入れてあったメモを取り出してこじゅさんに見せる。
シャーペンやし、こっちの字とはちょっと違うけど、明智の光秀さんの武器とか性格とか家族構成とかが書いてあるねんで。

ぬー。
名探偵真樹緒の秘密メモ!
これで政宗様をびっくりさせるん。
ほんでびっくりした後は政宗様がめさめさ喜んでくれる予定なん。
この秘密計画はおシゲちゃんからもお墨付き!


「やからね、こじゅさんにもお話聞かせて欲しいん。」


へへ、って笑ったらびっくりしたまんまのこじゅさんが目をぱちぱち。
ぱちぱちをいっぱいして暫く、じっと見てたら急にその目がふって柔らかくなって。


「…わぁ、」


こじゅさんが。
こじゅさんが笑った…!


やぁ、ここだけの秘密なんやけどな、こじゅさんの笑顔ってな、すっごい優しいんやで。
目尻がきゅって下がって眉間のシワも無くなってもうて、頬っぺたの上の方をちょっと赤くして笑ってくれるん。
そんな時は口元も気持ち上に上がってて俺はどきどき。
そのままぽふぽふ頭とか撫でられたら何や俺がじわじわ恥ずかしいん…!


「ぬーん…」


やー、イケメンの笑顔って最強よね!
それが無意識やから見せられた方はたまったもんやないよね!


「真樹緒。」
「…なぁに。」


なぁにこじゅさん。
俺今ちょっと照れくさいんやけど。
こじゅさんの笑顔が近くて。
こじゅさんの手があったかくて。

こじゅさんがイケメンとかずーっと前から知ってたけど、こればっかりは慣れへんのよね。
ちらって見上げたらこじゅさんがくしゃって笑ってまたどきどき。


もう何こじゅさん!
俺何か背中がむずむずしてくすぐったい!


「お前は、」
「ぬ?」
「お前は本当に、」
「…う?」


ほんなら俺が照れてるなんていっこも気付いてないこじゅさんが、俺を撫でてるんとは反対の手で顔を覆ってうつむくん。

ぬん?
どないしたんこじゅさん。
今度は俺が目ぇぱちぱちする番やで。

大概こじゅさんが顔を隠してしまう時は何か呆れたりため息吐いたりしてるんやけど、今のこじゅさんは顔隠してても笑ったまんまやし。


「こじゅさん?」


なぁ、なぁ、こじゅさん。
どうしたん。
いつものこじゅさん違うよ。
あんまり頭ぐしぐししたら俺の無造作ヘアーが天パみたいになってしまうやん。
いつもやったら二、三回撫でて終わりやのに。
そろそろ離して欲しいんやけど!


こじゅさんの袖を引っ張って名前を呼んで。
大きい手から逃げるように頭を振ったら何や簡単にその手が離れたん。
あれ、さっきはしっかりぐりぐりされてたのに。


「参った…」
「ぬ?」
「いや、」


参った参った、って言いながらこじゅさんは又あの顔で笑う。
目を細めて、俺の胸がきゅってなる顔で笑う。


「まいった?」


何が?
うん?
何に参った?

何の事か分からん俺は首を傾げるしかできひんくて。


「真樹緒。」
「はい?」
「明智光秀の話だろう?」
「!!」


何が聞きたいんだって言うこじゅさんにやっぱりちょっと首をかしげたけど、こじゅさんはずーっと笑うだけ。
それが何でか分からんかったりするんやけど、そろそろほんまに名探偵真樹緒のお仕事しやなあかんからご機嫌なこじゅさんに甘える事にしました!


ぬう。
ちょっぴり照れくさくて、顔が赤い俺やけど、そこは大目に見てくれると嬉しいわ!
ほら。
名探偵真樹緒の威厳に関わるから!


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政宗様のためにちょこまかと動いているキネマ主が愛しくて辛抱たまらんこじゅさんで一つ。
まだ名探偵真樹緒まで行きませんでしたすみません…!

  

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