「そろそろ俺もいいか、」
「ぬ?」
「お前に聞きたい事がある。」
「?はい。」


俺がしょうげきのじじつに内心ちょう焦ってたら片倉さんがまだお腹も痛いやろうに正座で俺の前に座った。
真面目な顔をする片倉さんはちょびっとためらってから俺をじっと見る。
まっすぐな目で俺を見る。


おぉ…
なんて威圧感のある人かしらー。
お兄に怒られてるのとはまた違った感じでちょっと怖いやんー。
もじっとしながら俺も背筋をぴん!
どうぞ何でも聞いてやーって正座で背筋をぴん!
片倉さん何を聞きたいん?
俺の答えられる範囲でお答えするわ!


「お前の名前は。」
「真樹緒ともうしますー。」
「そうか真樹緒。」


そわそわする俺を気にも留めず片倉さんがじっと俺を見る。
ぬん。
そらせやん!


「はい?」
「俺はどうしてここにいる。」


えーと、どうしてって。
俺が運んだんやけど。
倒れてた片倉さんを運んだんやけど。
かなりご無体な方法で。
足をひきずるってゆう結構なご無体な方法で運んだからやけど。

ぬん。


「…向こうの矢まみれの道で倒れてた片倉さんを俺がここまで運んできたん。」
「手当てもお前か。」
「うん。」


水で怪我洗ってばんそうこう貼っただけやけどねえ。
消毒液とかは無いけど、あれ使わん方が良かったって聞いたことあるような気するし。
問題なし!
多分!
ものすごい痛いと思うけど片倉さん起き上がってるもん。
間違って無いとおもう!


「礼を言う。」
「へ?」
「血が止まっている。」


まじで!?


おお…
やるやんばんそうこう…!
まさかあの大怪我にばんそうこうがそこまで力を発揮するなんてー。
こんなに早く傷をなおしちゃうなんてー。
今なら二枚増量中のお徳用ばんそうこうやったのに。


「やぁ、でもよかったん。」
「あぁ、」


ほーって息をついて笑ったら片倉さんのほっぺたもちょっと緩んだ。

あ、笑うと案外可愛らしい顔なんやねぇ。
コワモテさんが笑ったら可愛いんやなぁ。
ほーほー、発見発見。


「それで真樹緒。」
「ぬ?」
「お前は何者だ。」
「へ…?」


へらっと笑ってた俺の前で、笑った顔はそのままの片倉さんがちょっと眉を曲げて困ったような顔をする。


ああ、そうか俺!
名前しか言うてないやんねえ。
おもいっきり変な子供やんねえ。
えーっと自己紹介するとね。


「加藤真樹緒16歳です。可愛い妹と怖い兄がいます。」


ひまちゃんは可愛いし、お兄は怖いし間違いないよ。
やあ、怖いってゆうても怒った時だけやけど。
いつもは優しいお兄やけど。
お弁当作るんとかちょうはりきっちゃう可愛いお兄やけど。
二人とも大事なきょうだいなんやで!


後はーえーと。


「好きなものはお米で、髪の毛は湿気るとくるくるになるくせ毛です。」


嫌いなもんは椎茸なんやけど、これは言わんでもええかなぁ?
椎茸のあの感触があかんの。
ぶにゅってなるやんぶにゅって。
においもどくとくやしー。
口に入れた瞬間すごい存在感で俺を攻撃するにくい奴なんしいたけ。


「住んでるとこは関西の田舎です。」
「関西?」
「ぬ?」


そう関西。
しかもちょう田舎でやあ。
お山の桜がめっさ綺麗で今やったら多分桜祭りの時期やけど。

首かかしげてちょっと難しい顔をした小十郎さんに俺も首を傾げる。
真面目な顔もやっぱり男前がすると一味違うなぁなんてちょっぴり的外れな事を考えながら俺はじっと小十郎さんを見た。


  

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