「はい、もう皆ちょっとそこに座り…!」


ちゃんと正座やで!
俺怒ってるんやから。
もう、ほんまにぷんぷんやねんから。
おやかた様の肩から人差し指をびしっとね。
ほんまは指で人を差したらあかんねんけど、俺今怒ってるから大目に見てや。


真樹緒です!
こんにちは!!
怒りながらごめんやで。
こんにちは!


「Hey真樹緒、どうした。」


そんなに目の色を変えて。


ぬー…政宗さま…


刀を肩に担ぎながら俺を見上げても政宗様結構ぼろぼろやからね。
ゆっきーとおんなじぐらい黒こげやからね。
そんな何でも無いような顔で見やんといてんかー。
胸に手ぇあてて考えてみてちょうだいー。


「俺、怒ってんのー。」
「なっ!真樹緒殿、いかがされた…!」


は!
もしや佐助が何か失礼を…!?
先程は佐助に貰ったという面をつけておられた事ですし。


何と…!


ゆっきー…


何や髪の毛からぷすぷす煙出てるよ。
ふわふわな俺のお気に入りな髪の毛のキューティクルがだいなし。
そして人のせいにしないー。


「そこにさっちゃんは関係無いんー。」
「むっ!」
「俺様が真樹緒に何かする訳無いでしょ。」


さっちゃん。
こらこらさっちゃん。
そんなおすまし顔してもあかんの。


一緒に暴れてたんはちょっと怒ってるよ、俺。


知ってるんやから。
こじゅさんと素敵なバトルを繰り広げてたやろう。


「あらら、ばれてるの。」
「ぬん。」


あ、さっちゃんは無事に斧の下から避難してるよ。
斧はちゃんとおやかた様お隣に刺さってるし。


おやかた様の肩に乗ってるんは俺とこーちゃん。
俺はこーちゃんの背中にへばりついてるん。
何やこーちゃんちょっとこの位置気に入っちゃって。
さっきからこのままなん。
俺は皆を見下ろせて結構いい感じなんやけどね!


ほら、俺怒ってるから!


「真樹緒…」
「ぬー、こじゅさんも。」


いつもは止めてくれるこじゅさんも今日はどうしてしまったん。
俺びっくりしてもうたよ。


じぃーってちょっと高いおやかた様の肩から皆を睨む。


「もう…、」


なぁ、なぁ、ちょっと皆落ち着いて欲しいん。
ほんで俺のお話聞いて欲しいん。


「こーちゃん、ちょっと降りてくれる?」
「(こくり)」


大事なお話あるから、っていうたらこーちゃんはしゅたっとおやかた様の肩から降りてくれた。
俺もこーちゃんからよじっと降りたよ。
ほら大事なお話やから!


「ぬー…」


足元の地面ががぬくいんはやっぱりマグマやからやろうか。
そんな事思いながらすうって息を吸い込んで。


「さっちゃん、ゆっきー。」
「何でござろう。」
「どうしたの?」


はいはい、こっちきて。
三人でお話やで。
政宗様らがちょっと首傾げて変な顔してるけどええからこっち。


ほら早く。
手でちょいちょいって呼んだら二人はすぐに近づいて来てくれる。


「真樹緒殿?」
「あのね、」
「うん?」


ちゃんと聞いてな。
大事な事やから。


「俺、奥州に帰るん。」


ゆうたらさっちゃんとゆっきーの目がきょろってなった。
顔がくしゃってなった。
でも聞いて。


さっちゃんとかゆっきーと友達になれた事はとっても嬉しいし、一緒におりたいって思うけど。
俺のおうちは奥州なん。


待っててくれる人がおるん。
おシゲちゃんってゆうてな。
すーっごく怖くて、すーっごく優しい大事な人やねんよ。
やぁ、内緒でこっちに来てもうたから帰ったら絶対に怒られると思うんやけど。


会いたいん。


「へへ…」
「真樹緒…」
「真樹緒殿…」


さっちゃんは知ってるやんなぁ、って聞いたら「うん」ってちょっと眉毛への字にして笑われた。


やあやあ。
さっちゃんそんな顔せんとってや。
ほらほらゆっきーも。


ゆっきーは笑ってる顔が一番イケメンよ!
そんなしょぼんとした顔似合わないわ!
何や寂しくなるやん。


「また遊びに来るよ?」


ぬふー。
こーちゃんや政宗様に連れてきてもらうよ。
ほんでほんで二人も遊びに来てや。
今度は俺が歓迎するで!!


一緒にお風呂入ってやぁ、ご飯食べて、お庭で遊ぼう?
政宗様んとこ凄いねんで。
火ぃぼーって吹く竜とかおるん。
ゆっきーもさっちゃんもびっくりすると思う。
お城もね、おっきいんやで青葉城。


「やから、ね?」


今はこれでばいばい。
さっちゃんとゆっきーの手をぎゅうって握って笑う。
ずうっとお別れやないねんで、って笑う。
寂しいとか思う前にまた会おう?


「…真樹緒。」
「うい?」
「絶対だからね。」
「うん。」
「嘘つかないでよ。」
「うん。」
「さっちゃんお忍びさんなんだから奥州なんてひとっ飛びなんだからね。」


うん。


もう、さっちゃん。
分かってるん。
優しい優しいさっちゃん。
大好きよ。


ほら、そんな頬っぺた膨らませやんとって?
いつものさっちゃんみたいに笑ってぇや。


「真樹緒殿、」
「うん?」
「某、」
「うぃ、」


上田にお館様より土地を頂き、そこに城を構えておりまする。
もし真樹緒殿さえよろしければ奥州に戻られてからでも、どうぞ一度。
お招きさせて頂きたく。


「やぁ、ほんまに。」
「是非、」


おおきに。
おおきにゆっきー。
嬉しい。


絶対遊びに行くからな。
上田ってどこか分からへんから、ゆっきーが迎えに来てくれやなあかんで。


「心して。」
「ぬふー。」


楽しみね!
やっぱりゆっきーは笑った顔が一番男前。
俺のお気に入り。


ふふふー。
いっつもいっつも可愛いんやけど、たまに男前になってしまうゆっきーも大好きやで!


握った手ぇをもう一回ぎゅう。
二人を見上げたら今度は笑ってくれてて俺も思わず頬っぺたが緩んでしまいました!
やって嬉しいんやもん。


「おやかた様。」
「うむ。」


ほんでほんで次はおやかた様。
甲斐で一番偉い人やからちゃんとご挨拶しなくちゃね。
ぐん、って見上げて背筋ぴん。


なぁ、なぁ、おやかた様。


「お世話になりましたー。」


もうほんっとおやかた様にはお世話になりっぱなしで俺。
何回お礼を言ってもたりへんぐらい。
俺を甲斐においてくれてありがとう。
政宗様やこじゅさん、リーゼントの兄やんらを助けてくれてありがとう。
楽しい宴会も(やぁ、俺半分ぐらい覚えて無いんやけど)ありがとう。


ありがとうがいっぱい、いっぱい、なん。


「ありがとう、おやかた様。」
「なんの。」


真樹緒、お主と知りおうた事嬉しく思う。
どれほどこの甲斐が繁華した事か。
どれほど幸村、佐助の本領を見れた事か。
意義な時であった。
この信玄、いつでもお前の帰りを待っておる。


健やかにあれ。


「はい。」


頭に乗せられたおやかた様の手ぇはおっきくて、首と頭がぐらぐら。
すっぽり俺の頭が納まってもうてぐらぐら。
おやかた様、ちょっとこしょばいよってもぞもぞしてたら後ろから「真樹緒!」って。


「政宗様!!」


この声は政宗様!
でもちょっといつもより低い声!
どうしたんやろうって振り返ったら政宗様がご機嫌斜めな顔でこっちを見てた。


あれやぁ。
イケメンな顔が台無しよ!


「あらやだ分かりやすい。」
「独眼竜が形無しでござるな。」
「ぬふー。そんなとこも格好ええよねー。」


なんと、真樹緒殿はあのようにされるのがお好みか。
ならば某も。

ぬ?やぁ、いっつも笑顔のゆっきーも好きよ?

ちょっと真樹緒俺様は。

さっちゃんも好きってゆうてるやん。
あれだけ言うてるのに俺の愛が伝わってないだなんてやだわ!


「真樹緒!!」


さっちゃんとゆっきーとアイコンタクトでお話してたら、さっきよりもおっきな声で名前を呼ばれてしまって。
そんな政宗様を見て、お隣のこじゅさんはため息ついてるん。


もー。
政宗様、俺すぐ行くのに。
奥州かえるのに。


「政宗様呼んでるん。」
「はいはい、仕方ないね。」
「行って下され。」


二人に頭撫でられてちょっと恥ずかしくって。
へへ、って笑って政宗様の方へくるんとね。


「やぁやぁ政宗さまそんな怒らんとってー!!」


奥州へ帰るよ!
おシゲちゃん待ってるもん。
もちろんこじゅさんもこーちゃんも一緒にね!
さぁ準備はおっけー。
全力で走っていくからちゃんと俺を受け止めて!



「とおっ!!」
「What!!」


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お稽古これにて終了です!
後はきちんとお見送りされて鬼庭さんがやってきて間章終幕にございます!
長い長いお稽古(後でタイトル武田道場に変える予定ですが)にお付き合いありがとうございました!

  

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