おやかた様が斧で地面をどしんとしたらリングの床が抜けてしまって。
さっきまで騒がしかったリングが途端に寂しくしーんとして、何でか俺がとてつもなくやるせなさを噛み締めています。
真樹緒です。
こんにちは。
「こーちゃーん。」
「(ふるふる)」
「えー、でもー…」
ちょっと聞いて欲しいん。
政宗様とこじゅさんと、ゆっきーとさっちゃんとおやかた様がさっきまで暴れてたやん?
暴れすぎてテンション上がってリング底抜けてもうたやん?
(やぁ、おやかた様の斧が多分原因なんやろうけど)
みんなそこに落ちたっきり何の音沙汰も無いん。
もう、うんともすんとも。
こーちゃんにちょっと行ってみようやぁってゆうたんやけど「危ないからだめ」って首を振られてしまって俺はさびしくまちぼうけ。
もーう。
こーちゃん。
そんないじわる言わんと行こうやー。
気になる。
あの下気になる。
こーちゃんの首に巻きついてお願い。
「こーちゃーん。」
俺も行きたいあそこ。
なぁなぁ、こーちゃん。
政宗様もこじゅさんも大変やと思うん。
もちろんゆっきーやさっちゃんも。
おやかた様?
おやかた様はどうやろう。
結構ノリノリやったけど。
「(…、)」
「やぁ、やっぱりあかん?」
でもそろそろほんまに止めた方がええと思うん。
誰かが止めやんと止まらんと思うん。
やからやぁ。
こーちゃんお願い。
あの下へ連れてって。
「こーちゃん…」
「(………、)」
じぃ、ってこーちゃんを見つめて少し、ちょっと難しい顔してもうてたこーちゃんから力が抜けて。
ぎゅうって一回強く抱きしめられて。
「こーちゃん?」
「(…)」
「う?行ってくれるん?」
「(こくん)」
「!!」
こーちゃんからのお許し出ました!
下まで連れてってくれるねんて。
さすがこーちゃん!
優しいこーちゃん!
さすが俺のおよめさん!!
ぬ?
忘れてた?
こーちゃんって実は俺のおよめさんやねんで。
もう氏政じぃちゃんにもご挨拶は済んでますー。
両家の公認なん。
「(とんとん)」
「ぬ?」
「(しー)」
「やぁ、秘密?」
これ秘密やっけ。
あ、そういえば政宗様らにはまだ言うてないよね。
「(こくこく)」
ぬー。
こーちゃんが内緒ってゆーからここは二人の秘密って事で!
やぁ、じぃちゃんは知ってるから三人かなぁ?
ではでは三人の秘密って事で!!
「さぁ、こーちゃんれっつごー!」
こーちゃんの首にぎゅっと掴まったらすぐに体がふわっと浮いた。
そのままこーちゃんはぽっかり空いた床の穴にひょっこり入ってやぁ。
じっとしてて下さいねってゆうこーちゃんに頷きながら首元からそおっと洞窟覗いてみたん。
やって気になるやん。
お御堂の底がどうなってるんか。
やからそおっとね、覗いたん。
どんな真っ暗なところかと思いきや。
「…………ぬ?」
え、まぐま?
何、まぐま。
なんでマグマ…!!
「まじで。」
ほら、ようあるやん。
火山の噴火とかでどろどろお山から出てるやつ。
真っ赤の。
今にも火を噴きそうな。
それが何やごっぽごっぽ。
たまにざっぱーんって波打ったりしてね。
「…えー…」
真ん中にあるささやかな地面は政宗様やこじゅさん、ゆっきーにさっちゃんおやかた様が立ってたら狭すぎる気ぃするんやけどどうこーちゃんあれ。
落ちたら終わりな雰囲気がぷんぷんするんやけど、どうこーちゃんあれ。
「(…、)」
「うん?」
「(ほ う っ て か え り ま す か ?)」
「いやいやいやいや。」
シビア。
こーちゃん結構シビア。
あかんよこーちゃん目をそむけたら。
ここはほら、やっぱり本気でいかないと。
「って事でこーちゃん降りるよー。」
はい、するっとね。
じわじわと暑くなってくるのはやっぱりマグマやからやろうか。
笑えやん。
下からやぁ。
「いい加減に引いたらどうだ真田幸村ぁぁぁぁ!」とか。
「何おぉぉぉ!この真田幸村、引く気など毛頭ござらぁぁぁん!!」とか。
「……」
「流石に私の緒も切れますぞ信玄公ぉぉぉぉ!!」とか。
「甘いわ小僧がぁぁぁぁ!!」とか。
「………、」
「ちょっと大将重い!!」とか。
聞こえてくるのも笑えやん。
ほんま何してるん。
特に最後のさっちゃんの台詞が気になる。
重いって何がやろう。
なぁ、こーちゃんどう思う。
こーちゃん見上げたら指をすって伸ばして。
「ぬ?」
なぁに。
なぁにこーちゃん。
あそこに何かある?
きょろ、ってこーちゃんが指さしてる方見たらおやかた様が。
おやかた様がやぁ、さっちゃんが持ってる斧の上に。
「……ぬ?」
斧の上に。
「ぬーん…」
あれ斧だけでも重いと思うん。
更にその上におやかた様が乗ったら尋常やないと思うん。
やってさっちゃん足ぷるぷるしてるもん。
あかんで。
あれ絶対あかんで…!
「こーちゃんいそげいそげ!」
はよう行かんとさっちゃんが潰れてしまう。
あそこの真ん中辺りに華麗に登場して、ささっと皆を止めてしまおう!
お願いこーちゃん!
こーちゃんの髪の毛をちょいちょいってしたらこーちゃんはトントン岩場を飛んで。
最後に一回長―く飛んで。
「(しゅた)」
「ぬ?」
「うむ?」
おお。
真樹緒とその忍ではないか。
「ちょ!何か増えたんじゃないの重いんだけど!!」
こーちゃんがおやかた様の肩に。
ぬう。
まるでカラスのカー君が俺の肩にとまるみたいにおやかた様の肩に着地しました。
……
………
まじで!!
こーちゃんそれはちょっと。
それはちょっと。
「はっはっはっ!見事よ!」
忍とは斯様に器用なものか。
「おやかた様もまじで!」
そんな普通に鳥がとまったみたいな涼しい顔せんとって!
ちょいとこーちゃん。
これは本当に下のさっちゃんが限界よ!
はようどいたげて!
「(ぷい)」
「こーちゃぁぁぁん!」
お話きいてんかー!!
ぽかぽかこーちゃんの胸たたいてたら下からやぁ。
「shit!真樹緒!てめぇ何こんなとこまで来てやがる!」
危ねぇだろうが!
「誰のせいやと思うてるんー!!!」
「Ah?」
もー!!
こじゅさんとか政宗様が騒いでるからやんかー!!
怒るよ。
俺、ほんまにもう怒るよー!!
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次でラストです…!
長かったお稽古が終わりまする。
そしてやっと鬼庭さんがお目見えでございます。
三章ゆきますようふふ。
その前に企画で甘いお話たくさん書かせていただきますがね!
こう重たい話の前(そんな重い事も無く、結局ギャグですが)は甘いのをたくさん書きたくなりますです。
今回キネマ主はおよめんさん云々言っていますが、実は甲斐組にはばれてるのですよね(笑)
だから佐助さんと小太郎さんの仲も悪いという。
旦那はまた違うポジションです。
そしてお館様の肩にとまった小太郎さんですが、小太郎さんなら出来ると思うんだ。
ほら、あんな羽とか持ってますし。
うまいこととまったという事にしておいてくださいませ。
それでは!
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