「ほら、真樹緒あそこ。」
大将がお待ちだよ。
「…………ぬ?」
さっちゃんがばびゅんと高速で走ってついたところはリング。
これからプロレスでも始まるんかってぐらい本格的なリングが目の前に現れて、あれここ見かけは普通のお御堂やったはずやけどなんてちょっと遠い目をしてしまいました。
真樹緒ですよこんにちは!
「あー!おやかたさまやー!」
「おお真樹緒!」
よう来た。
おやかた様はな、さっちゃんがゆうた通りひょっとこのお面つけてたん。
赤いもさもさとでっかい角、ほんでひょっとこのお面。
やぁ、何にも怖い事ないねんけどちょっとなまはげみたいやなーと思ったんはないしょー。
「おやかた様―!」
「むっ!」
「とおっ!」
「あ、こら真樹緒!」
さっちゃんの腕の中からおかた様へ向かってぴょん!
さぁおやかた様!
その素敵な腕で俺を受け止めて!
俺、おやかた様に飛びつきたかったん実は!
ちょっと俺の夢かなえてんかー!
重たかったらかんにんな。
ほら甲斐のご飯おいしいからいっつも食べ過ぎてしまうん。
きっと俺ここに来た頃よりも肥えたはず!
「なんの!」
「ぬー!」
おやかた様のところへ飛んだらおやかた様はおっきな斧持ってる手と逆の方の手で受け止めてくれました!
片手やで!
さすが!!
「なぁなぁ、おやかた様。」
「うむ?」
「お面ちょっとずらしてもええ?」
「構わんが。」
どうした。
首を傾げたひょっとこなおやかた様がちょっと可愛らしいん。
やぁやぁ、ちょっとね。
ほら俺とおやかた様昨日ぶりやんか?
やからちゃんとご挨拶しとこうと思って。
おやかた様のお面をずらしてご対面。
「おやかた様、」
「うむ。」
「へへー…」
おやかた様のおでこと俺のおでこをこっつんこ。
笑いながら頭をゆるゆる撫でてくれるおやかた様の手ぇはめさめさ大きいんやで。
頭ぐらぐらしてまうん。
「こんにちは。」
こんにちはおやかた様。
昨日ぶり!
おはようにはもう遅いし、やっぱりこんにちはやんなぁ。
ぬふふー。
おやかた様こんにちは。
お元気そうでなによりー。
宴会の時はほらあんまりお話できへんかったから!
今ちょっとくっつきたいなーなんてね。
「そうかそうか。」
はっはっはっ!
まこと愛いものよ!
豪快に笑いながらおやかた様は俺の頭をやっぱりぐりぐり。
でも全然痛くないん。
ぐりぐりは気持ちいいんやで!
やからもうちょっとお願いしますー。
少し強めても大丈夫よ。
でも耳の後ろはこちょばいからかんにんしてや。
「どれ、」
ぐしぐし
ぐしぐし
「ぬー。」
とってもお上手ね!!
俺が目ぇ瞑りながらおやかた様の手に頭預けてたらおやかた様が「して真樹緒、」って。
「うい?」
「その仮面は。」
いかがした、って俺の小天孤仮面のお面を見ながらおやかた様が何やら楽しそうに。
やぁやぁこれなー。
さっちゃんに貰ったん。
そう言えばおやかた様にはゆうてへんかったね。
俺今小天孤仮面やねん!
ちっちゃい天孤仮面やねんで。
どお?
似合う?
おやかた様にすり、って寄ったらおやかた様もほっぺたすりすりしてくれました!
「よう似合うておる」ってすりすりやで!
おやかた様に褒めてもらっちゃったー。
「大将いいなー。」
さっちゃん妬けちゃう。
お隣でほっぺたつついてくるさっちゃんは唇とんがらせてちょう可愛いんやけど、今はおやかた様といちゃいちゃしてるからあかんの。
ごめんねー。
さっちゃんは後でいちゃいちゃしようなー。
「(…)」
シュッ!
「不意打ちは関心しないなぁ。」
カキン!
「ぬ?」
おやかた様にだっこされたまんまさっちゃんの頭をよしよししてたら、何かキラっとしたものがさっちゃんに向かっていきました。
でもさっちゃんもキラっとしてものでそれを弾いてやぁ。
こーちゃんが投げたっぽいキラっとしたやつがリングの金網みたいなんに当たってばちって変な音出して焼け焦げました。
……
………
「……ぬ?」
ええまじで。
こーちゃんの投げたキラっとしたやつの正体がでっかいまちばりやったのも結構な驚きやけど、そのまちばりを真っ黒焦げにしてしまったリングの金網にもびっくりです。
何。
あれ何。
ばちっていうたで。
火花みたいなんが散ってばちっていうたで。
ただの金網ちがうよ!!
はっはっはっ!っておやかた様笑ってるけど、笑えやんよ。
「……おやかた様…」
「うむ?」
「ここ何するとこ?」
「む。」
何じゃ佐助。
言うておらなんだか。
「あ、そう言えば。」
詳しく説明はしなかったですねぇ。
「…さっちゃん…」
「ごめん、ごめん。」
修業道場だって言わなかったっけ?
さっちゃんが頭をかきながらゆうてくるけど、そんなん初耳です!
上の方はただの道場やったのに、下がこんなデンジャラスな修業道場だなんて!
そもそもリングがある時点でおかしいやん。
そのリングがバチバチ火花散ったらもっとおかしいやん…!
なにするんここで。
修行ってゆうてるけど。
「何、ちぃと灸を据えてやろうと思ってのう。」
「ぬ?お灸?」
「ちょっと朝から旦那達が騒いでさ、」
言っていいですか?っておやかた様に確認した後さっちゃんが困った様に笑った。
独眼竜が大将の所へ挨拶に来たんだよ。
そろそろ奥州へ帰るってさ。
まぁ国主が長い間城を空ける訳にはいかないし、独眼竜や右目の旦那の怪我だってもう治っているんだから頃合といえば頃合なんだよ。
「でもさぁ、」
「うん?」
折角盟を組んだんだから真樹緒は置いていってもらおうかなーって言ったとたん独眼竜が暴れだしてね。
「………ぬ?」
独眼竜が暴れだしたら旦那もじっとしてられないじゃない?
そりゃ初めはおとなしかったんだけど、段々二人とも武器持ち出してさぁ。
「大将の庭をそれは見事に破壊してくれちゃったんだよ。」
で、大将が暴れるなら道場へ行け!って二人を放り投げた訳。
試練を乗り越えて見せよ、ってうまいこと乗せられてんだよあの二人。
「冗談も通じないだなんてもうほんっと、おばかさんだよねー。」
「やぁ、さっちゃん。」
笑ってる場合やないよ。
お庭ぐちゃぐちゃにしたんは聞いてたけど、試練って何よう。
ここでおやかた様と勝負でもするんやろうか。
リング火花散ってたけど!
まちばり真っ黒けになってたけど!
「今は火男仮面ぞ、真樹緒。」
「おやかた様もそんなノリノリでー。」
やだわ。
誰も止める人がいないなんてやだわ。
ここは甲斐のお母さんの出番じゃないのさっちゃん!
何とか止めれやんの。
俺、ちょっと危険を感じるんやけどこれ、ってさっちゃんとおやかた様見たんやけどやあ。
「案ずるな真樹緒!」
幸村や伊達のは生粋の武将ぞ。
此れしきの試練、乗り越えずどうする。
「やぁやぁ、俺おやかた様の事も心配よ。」
おやかた様は力持ちでイケメンやけど、実はお歳もお歳やろう?
「しかもこれで終わりじゃないからね。」
この下にもう一つあるんだよ。
溶岩が流れてるお部屋がさ。
「……そんなんお部屋ってゆえへんよ。」
実はさっちゃんもノリノリやからどうにもこうにも止まりません!
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おやかた様とでした。
私おやかた様大好きです実は。
多分キネマ主から見たおやかた様は理想のお父さんなのです。
自分のお父さんはひょろっとしていて親父!というタイプではないので憧れていたらよいです。
実は熱血なところも大好きなのです。
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