「さっちゃんどうしたんー?」


じぃ、っと見上げてくる真樹緒は頬を赤く染めてへらへらと笑いながら何が楽しいのか右や左に揺れている。


まったく。
本当にこの子は。


「さっちゃーん?」
「はいはい、何ですかー。」


酒を飲むのが初めてだという真樹緒が酔ってしまって。
これ以上飲ませまいとその酒を片付けに行って戻ってくれば何故か独眼竜と旦那が庭で自分たちの武器を持ち出し暴れていた。


ちょっと二人とも何やってんの。
庭石とか植木とか壁とか色々破壊されてるんだけどどういうつもり。


思わず口元が歪んだのは仕方が無いと思わない。
宴をやってたんじゃないの。
お酒飲んでたんだよね。
独眼竜に至っては大将と話をしてたんじゃなかったっけ。
何で庭から爆音が聞こえてこなきゃならない訳。


「さっちゃーぁんー。」
「何、聞こえてるよー。」


でも問題はそこじゃないよ。
いや、庭の収拾は本人達にしてもらうけどさ。


「ぬー、いたいんー。」
「ちゃんと拭かなきゃ駄目。」
「にゅー。」


ゆらゆら揺れる真樹緒の頭を支えてその小さい唇を着物の袖で擦る。
真樹緒の可愛い眉毛がぎゅうと寄っても気にしない。
この口で真樹緒は一体何をしたのかなー?
さっちゃんに言ってごらん。



「んー?ちゅーしたん。」


ゆっきーに。


へら、って笑う真樹緒はそりゃぁ可愛いよ。
頬が赤く染まっていつもよりもより舌ったらずなところもいいね。
さっちゃん、さっちゃん、ってくっつきにくるのだって大歓迎だ。


でもね。
聞き捨てならないじゃない。


「さっちゃーん?」


ちゅーってあれだよ。
真樹緒が言ってるちゅーって口付けの事なんだよ。


分かる?
口付け。
接吻とも言うよね。


それをよりにもよってあの旦那にやったって言うんだよ。


真樹緒が。
旦那に。



「おーい、さっちゃーん。」


竜の旦那が刀持ち出しても仕様が無いよね。
破廉恥だ破廉恥だ言う割にはちゃっかりそのちゅーとやらをしてもらったって言うじゃない。
頬やら、鼻やら、額やらに。
え、額に行くまでに破廉恥叫べたよね?


「ぬー。」


まったく。
何度真樹緒の唇拭いたって気が済まない。


「さっちゃんもちゅーしよー。」


はいはい。
分かった分かった。
分かったから唇も一回閉じて。


「さっちゃん、ちゅー。」
「はいはい、ちゅーね、って」
「んー、ちゅーう。」
っ真樹緒!?


気がつけば真樹緒の顔はすぐ目の前。


俺の首に。
俺の膝に。
俺の腕の中に。
そして俺の眉間に真樹緒が。


真樹緒が。


「まゆ毛のしわしわにちゅー。」
「え、ちょ…!」
「可愛いさっちゃんにちゅー。」
いやいやいやいや!!


可愛いのは真樹緒でしょ…!!
俺はいけめんじゃなかったの…!
俺の眉間に唇を当ててくる真樹緒を押しのける。


だって何かやわっこいし!
あったかいし!
真樹緒酔ってるくせにいい匂いするし!


まずい。
これは色々まずい。
ちょっと真樹緒離れて!


「いやー。」


もっとちゅーするんー。
さっちゃんとちゅうー。


「こら、真樹緒!」
「いややしー。」


ぎゅー。
さっちゃんとぎゅー。
ほっぺたにちゅーするもんー。


真樹緒を離そうと小さな体を更に押しやるけれど、この体のどこのそんな力があるのかというぐらい俺にくっついて離れない。


いや、嬉しいけど。
何か柔らかくて気持ちいけど。
これはやっぱりまずい。


「さっちゃんー。」


ちゅー。
さっちゃんのほっぺたいただきー。


俺の頭が大騒ぎになっている時、不意をつかれて頬にも柔らかい唇が。


っ…!


落ち着け俺。
相手は酔っ払いだ。
ここで舞い上がってる場合じゃない。


落ち着け。


「…真樹緒、」


いい。
ちょっと聞きなさい。
こんな事簡単にやっちゃ駄目なんだよ。
男は狼なんだよ。
分かってるの。


「あー、さっちゃんのおみみー。」
っい!?


って言い聞かせたそばから。
真樹緒が耳を。


かみかみー。


俺の耳を。


「やわやわー。」
「……」


……
………


あー…もう。
もう、何か面倒臭い。
いいよね。
俺様結構耐えたよね。


頑張ったよね。


「真樹緒。」
「ぬー?」
「俺様とちゅーする?」
「するー。」


さっちゃんとちゅーする。


へへーって笑う真樹緒はやっぱり可愛い。
まだまだ赤い頬っぺたも可愛い。


……
………


うん。
もうそれでいいじゃない。



「ほら、真樹緒おいで。」


ちゅー。


「ちゅー。」


真樹緒がしたいって言うちゅーをしてあげる。
唇が腫れるまで舐めて、その舌全部絡め取ってあげる。
苦しいって言っても放してあげない。
息が詰まるぐらいのちゅーをしてあげる。


だからおいで。


「さっちゃんー。」
「いい子だね。」


真樹緒の額と自分のそれをこつんと合わせてにこにこと笑ってる小さな顔を撫でる。
温かい体を抱いて。
さぁ、その可愛らしい唇を頂こうか、っていうところだったんだけどさぁ。


ドスドスドスッ!!!


「ほんっと、野暮だよねあんた!!」
「ぬ?」
「(いらっ)」
「あー!こーちゃんやー!!」


はいはい。
真樹緒。
危ないから下がってなさいね。
真樹緒のこーちゃん、結構本気よ。


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かみったいかみったいリカル●ントです(突然何だ)

ちゅー魔さっちゃん編でした!
さっちゃんは常識あるお母さんなので、キネマ主が破廉恥な事したらとりあえず止めます(笑)
でも結局キネマ主の強引さには勝てません。
だって相手は酔っ払い!!
性質が悪いのです。

次回はこじゅさん。
あいつら本当に何やってんだ、と小太郎さんと佐助さんの戦いを呆れながら見ていたらキネマ主と目が合ってターゲットにされます。

まずい。
こっちに来る。

そう思ったときにはもう遅い(笑)
こじゅさんにはちゅーマークを残してやろうと企んでいます。
それでは!

  

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