男の人が苦手だ。うちは母子家庭ということもあって、男の人との接点が少なかった。男の人が苦手だった。なんとなく、得体の知れない生き物という認識だった。

中学三年生になって同じクラスになった成宮くんは、私のそんな気持ちなど知る由もなく、ピョンと私の中に飛び込んできた。

成宮くんはお姉さんが二人もいるから女の人に慣れてて、だから私とも自然に接してきたんだとあとから何となくそう思った。

キラキラした瞳が、綺麗だと思った。

高校は別々になった。野球をするために強豪校へ行くんだという話は、なんとなく耳に入っていた。

「苗字さん、高校どこ行くの?」

ある日の放課後、図書館で勉強しようと思い立って向かっている途中、たまたま遭遇した成宮くんにこう訊かれた。

「セイドウ高校ってところ、行こうとしてるの。専門的なね、学科があって。親戚もいるから」
「え、せいどうって、青(あお)に道(みち)で青道?」
「え、成宮くん知ってるんだね」
「うん、まぁ……」

不思議だった。驚いて複雑な顔をしていたから。何かあるのか、理由は訊かなかった。訊けなかった。

私は無事青道高校へ進学して、そして御幸くんと付き合うことになった。ひょんなことから互いに片親しかいないということが分かって、なんとなく仲間意識というか、同情の気持ちが大きかったのかもしれない。

御幸くんの影響で野球の話を聞いたり意識するようになって、成宮くんに行き着くのに時間はかからなかった。青道と稲白実業の試合。見に来なければよかったと思った。

男の子にしては小柄だったのに、いや、今も小柄なんだろうけど、あの頃と比べると身体は大きくなっていたし、顔つきもなんだか大人になっていた。「男の人」になっていた。

「なんでここにいるの?」
「えっと、」

試合終了後、球場から外へ出た時声をかけられた。

「一也と付き合ってんの?」
「えっ」

男の人、苦手なんじゃなかったのかよ。

約一年ぶりに再会した成宮くんは、そんな顔をしていた。

「もしかして、俺が克服させちゃった?男の人」
「……」


錆びついた碧


青道は負けてしまった。成宮くん、勝ったんだよ?なんで御幸くんと付き合ってるの知ってるの?本人から聞いたの?私が男の人苦手なの、気付いてたの?気付いてて、でも話しかけてきたんだね。私、なにか悪いことした?なんでそんなに、悲しそうな顔してるの?


20200118


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