柔らかな殺意の続きです。



俺は、俺は気付いていた。自分の顔や体格が先天的に恵まれているということに。向けられる羨望や嫉妬の眼差しに。中学ではそこまででもなかったけれど、高校に入ると途端に周りは「異性」というものを露骨に気にして、「彼氏彼女」という存在に憧れを抱くようになっていた。

表立って俺に好意を向けてくる女の子が急増した。俺はモテていた。告白されて、付き合い始めて、そして俺が振られる。女は勝手な生き物だ。でも、俺は絶えず「彼女」という存在を側に置いていた。

俺が「彼女」という単語を出すだけで、名前の眼はいとも簡単に光を失う。くすんだビー玉みたいになる。そして、名前が傷付くのを見るたびに俺の心は驚くほど満たされていた。

「俺さ、彼女、出来た」

ある日突然そう言ってきたのは岩ちゃんだった。

「え?嘘?なになに?今日普通の日だよ?エイプリルフー」
「名前と、付き合ってる」

え、ちょっと、俺まだ最後まで言ってないよ?え、今、なんて…?

「……名前って、」
「俺は、本気だ」

お前とは違って。

まるでそう言いたげな含みのあるトーンだった。


二度目の世界は美しかった


俺は、俺は気付いていた。名前はずっと俺のことが好きで、そして岩ちゃんは名前のことが好きなんだって。だって、分かるよ?俺はいつだって周りの目を意識して生きてきたんだ。いつものように一緒にいれば、気付かないはず、ないだろう?俺は怖かった。このバランスを崩してしまわないように、俺はいつだって、俺だって名前のことが、

20151129


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