苗字サンは、俺と付き合ってるっつー意識が低いんじゃないかと責めたくなる瞬間が結構ある。元々危なっかしい感じで、それは「守ってやんねぇとな」みたいな父性本能?をくすぐる要素だったけど。恋人という関係になってからはそうはいかなくなってきた。正直、不安要素でしかない。

そんな悶々としている俺を尻目に、酒のせいもあってやたらふわふわニコニコしているあいつと、俺は付き合ってんだぞと今この瞬間、声を大にして言ってやりたい。

俺と苗字さんは俗に言う「社内恋愛」真っ最中で、そのことは仕事に差し支える云々の理由で誰にも言っていないし、「二人だけの秘密」みたいなそーゆう…あーやば、もう無理。

「すんません、ちょっと」

苗字さんの隣に座っていた先輩を押し退けて、無理矢理割り込む。周りはそんな俺に驚いた様子だが、そんなの構っちゃいられない。

「な、飲み過ぎ」
「え、え……?」

ほんのりと紅く染まった頬に指先を這わせると、周りは勿論、苗字さんも狼狽え始めた。微かに濡れている瞳は、今二人きりじゃないよ?と訴えかけてくるけど、気にしない。

「苗字さん、もう少し俺と付き合ってるって自覚、持ってくださいヨ」

一瞬の沈黙ののち、事態は一気に騒然とし始める。

「は…?え、何お前ら付き合ってんの?!」
「そうですよ」

しれっと答える俺は、本当、自分でもいい性格してんなと思う。

「苗字さんマジなの??」
「…そう、です」
「わー!マジなの?!俺ショックなんだけど!いつから?いつからなんだよー!」
「え、と……」

ハイハイこれ以上は訊かないでくださいねー。そうこの場を無理矢理丸め込もうとした俺より先に、彼女はこう答えた。

「それは、ナイショ………」
「……………」

暴露した俺に怒ったり、もっと慌てふためいたりするかと思ったのに。なに、その恥ずかしそうにさ、え、そういうのが男からしたら堪んないって感じんの、分かんねぇのかな?この人。


許しはしない

20150903
黒尾って私の中でいつも同級生っていうイメージが強くて、今回初めて後輩ちゃんで。独占欲強そう。きゅん。


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