久々に早く帰れて、ご飯とお風呂も済ませてさてベッドに横になろうとしたところだった。ピンポーン…とチャイムが鳴って、思わず身体をビクつかせてしまった。
「……………」
誰だろう、こんな時間に…怖い、怖い、ここは居留守を使おう。こんな時、一人暮らしなのが途端に心細くなる。
…静かになった?
そう思った途端、再びチャイムが鳴った。私は気配を消して、ドアスコープを覗いて見ることにした。音を立てないように、でも、どうしよう、変な人が立っていたりしたら−−−
「……かまち…?」
ドアの向こう側にいたのは、私の交際相手だった。慌てて私はチェーンと鍵を開ける。
「ふぇっ?!っちょ……っ!!」
ドアを開けるなり、腕を掴まれて抱きすくめられて、私は思わず声を上げてしまう。シンと静かな空間に、私の声が妙に木霊して恥ずかしい。彼は何も言わない。ただ、耳にかかる吐息が妙にくすぐったい。
何か、あったんだろうか。
冷静になってきた頭で考える。仕事帰りにそのままここへ来たんだろう。ズボンが作業着だし。
「………、わりぃ…」
ゆるゆると力を緩められる。
「…えっと、中、入る………?」
「あー……おー…」
とりあえず玄関まで上がって、でもそこから動く気配が全くなくて、私は少し不安になる。
「なんか、あった……?」
「……んー………」
無理に、聞かない方がいいのは分かってる。けどこんな事初めてで、正直戸惑っている。
「……今日、泊まる?」
「…………おう…」
彼は車の整備士だ。カレンダー通りの休みをもらえている私とは違って、不規則な勤務形態だから、なかなか都合が合わなくて、だから彼のこの一言はとっても嬉しかった、けど、
「…疲れてるなら、無理しないで……?」
「…疲れてるから、来たんだよ……」
シリウスに降伏せよ
「…顔、まっか」
さらりと頬を撫でられて私はようやく自分が今どんな状態なのか理解して、私は次の瞬間声を張り上げた。
「〜〜〜〜〜〜っ!!!うっさいっ!!!帰れっっ!!!」
「おーおーそんなに俺に会えて嬉しいか〜可愛いとこあんだな〜」
「うぐぬーーーっ!!!!」
20150602
title by 亡霊