影山飛雄

影山くんは多分、気付いていない。これ、ピアスだから私はつけられないってことに。いやつけられないことはない。少し、時間がかかるけど。

「それ、苗字っぽいと思って」
「そんな…そう?」
「おう」

彼は嘘がつけない。いい意味でも、悪い意味でも。彼は真っ直ぐすぎて、眩しくて、とても心臓に悪い。

「休みの日とかにつけるね。もったいないから」
「そうか」

つけてみろと言われる前に、さり気なく回避する。どうしよう、いつつけられるかな。いつ彼にお披露目出来るかな。私もこんなことでわくわくするなんて、かわいいところあったんだな。

影山くんは、どんな様子でこれを買ったんだろう。堂々としてたのかな。私っぽいと思って手に取ってくれたなんて、そんなの嬉しすぎる。

「影山くんには、かわいすぎるね」

剥き出しで無防備な耳に、そっと袋に入れたまま当てがってみる。

「そりゃ、な」

耳、かわいいな。そう思って耳朶に触れてみた。ふにふにする。影山くんも、私の耳朶に触れてきた。同じように、ふにふにしてきた。

「…くすぐったいよ」
「それはこっちのセリフだ」


不器用に甘やかしてね

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