05 >> 国見英
気付いたら、好きだった。しっかり自覚したのは、中学二年の頃。同じクラスだったが特に喋ることもなかった。中学三年の時は違うクラスになり、彼女がどの高校へ進学するなんて知る由もなかった。
だからこの四月、同じ学校の敷地内で彼女の姿を見つけた時、柄にもなく嬉しいと感じた。隣にいた金田一に頬の緩みがバレないよう、必死で平然を装った。
とりあえず一学期に適当に委員会に所属していれば、あとよりは楽だろう。俺は面倒ごとが少なそうな美化委員に立候補し、見事その座を射止めた。
放課後、委員会に参加することとなった。部活でコーチにドヤされる時間も減るし、なかなか悪くないなと思いながら会場へと向かうと、苗字がいた。しかも、あらかじめ決められた席は彼女の隣だった。
椅子を引くと、彼女がこちらを見た。あ、という顔をして、軽く会釈してきたのでこちらもそれとなく返す。たったそれだけのことなのに、俺の心臓は珍しく妙に脈打っていた。
五月になり委員会活動もそこそこあり、プリントのやりとりをしたり、彼女との接点が増えていった。そしてある時、こう切り出された。
「国見くん、高校でもバレー部なの?」
高校でも。中学の頃、バレー部だったのを知っててくれていたのか。
「ここ、バレー部強いって聞いたよ。凄いね!」
「そんな、別に…」
「今度、見に行ってもいい?」
「え……」
俺は一瞬狼狽えてしまった。まさかそんなこと言われるなんて、思っていなかったから。勘違いするな、彼女はただ、強豪と言われている青城バレー部がどんなものなのか、見たがっているだけだ。別に、俺を目当てに来るんじゃない。
「…ちょうど今週末、練習試合あるから、来たら?」
俺は、自分のこの発言を後悔することになる。試合が始まり、彼女の目は俺以外のある人に釘付けになっていた。別に、俺を目当てに来るんじゃない。そう言い聞かせたはずなのに。サーブを打つ時ボールを持つ手が、少しだけ震えた。
この世界の
綺麗なものだけを
見ていられたら
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